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Masaru IKEDA's Articles to the Sankei Shimbun (2006-2007)

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My Articles contributed to the Sankei Shimbun newspaper (2006-2007)

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  • 1. 産経エキスプレス 2007/11/1創刊号 掲載 「ITエキスパート通信」 ユビキタス ブロードバンドでなくとも、携帯電話のサービスエリアは、曲がりなりにもインターネットにつながるので、地球上でインターネットに接続できないのは、飛行機の上くらい かと思っていたら、昨年、コネクション・バイ・ボーイング(以下、CBBと略す)という、飛行機上インターネット・サービスが登場した。筆者の会社では顧客のサーバ運用な ども請け負っているので、海外への移動など長時間ネットにつながらない環境に身に置くことは、一定の危険をはらんでいる。CBBは長距離フライトの救世主だと喜ん だのも束の間、サービス主体のボーイング社は、業績の低迷を理由に、CBBのサービス中止を表明してしまった。需要は明らかにあるはずで、類似サービスが他社か ら再開されることを願ってやまない。 米国でヤフーが設立された頃、「ザ・インターネット」という映画が話題になった。主人公に扮したサンドラ・ブロックはビーチに寝そべってノートPCを操作しつつ、隣のパ ラソルの男性とこんな会話を交わす。 「なんて嘆かわしいの。世界で一番のビーチに来ているというのに、私たちの考えていることは、ただ一つ。このビーチで、どうやってモデムをつなげるかということ。」 この映画が封切られた95年当時、ビーチからインターネットに容易に接続できる方法はなかったが、あれから11年。砂浜でPCを開くサンドラを嘲笑っていた筆者も、 トイレとシャワーとベッドの中を除けば、移動しながらも一日中PCを立ち上げ、ネットにつないでいるという有様である。 ユビキタスの極意は、会社に行かなくても仕事ができて、家に帰らなくても休養がとれることだと信じている。特に都会の一人暮らしにとっては、帰宅するのは、睡眠と 入浴と着替え、それに携帯電話やPC、PDAの充電のためくらいだったりするものだ。電源を使わせてくれる飲食店が増え、PCの電力性能もすこぶる向上しているが、 それでも出先でバッテリ切れの憂き目にあい、充電のために帰社や帰宅を余儀なくされた経験は、読者諸氏の記憶にもあるだろう。 過日ニューヨークに行った時、深夜に何箇所かの喫茶店に入ったのだが、行く先々でPCを広げて黙々と仕事しているオフィスワーカーが多いのに驚かされた。一部の 店に限ったことではないと思うのだが、盗電で現行犯逮捕される日本と違って、店が客に電源を使わせることに寛容のようだ。かくして、眠らない街では、眠らないユビキ タスな喫茶店で、日本との時差を気にしないオフィス環境が珈琲代+αで手に入る。 東京の眠らない街・六本木では、解放された電源コンセントは深夜、出勤前のキャバクラ嬢のヘアカーラーやドライヤーに占有されていることがよくある。イタリアほど 電気代の高い日本ではないが、10アンペア近い電力を恒常的に使われたのでは、コンセントを解放したファーストフード店もたまったものではない。ユビキタスな環境の 構築には、社会のモラルも必要だ。世界一安いブロードバンド環境を手にした日本では、次は社会への啓蒙とモラル向上、これこそモバイル電源確保の容易化、ひいて は、世界一ユビキタスな環境の実現への道だろう。 1 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 2. OSとオフィスソフトの無料化 産経エキスプレス 2006/12/8 掲載 「ITエキスパート通信」 ITで起業しようとする人は、今日も増えつづけている。法改正で会社の最低資本金の必要が無くなり、ネットにつながるPCと根性さえあれば誰だって起業できる、と 言えれば歯切れがよいのだが、そうは問屋が卸さない。とりわけ、ITベンチャーにとっては、OSやオフィス・ソフト等の出費が起業時の財務を圧迫する。購入後も毎年 のようにライセンス料を求められるから、ベンチャーのみならず、大手システム会社にとっても頭が痛い問題だ。 Windows Vista の日本発売が年明け1月に決まり、パソコン雑誌では、この新OSを取り上げた記事が増えている。仕事柄、評価の必要があるので、Vista のベータ 版を試用してみたが、日常的に使うOSをバージョンアップする動機にはならなさそうだ。筆者が持ち歩くノートには、依然XPを導入しておらず、Windows2000を使い続 けているが、特に不便を感じない。「初物に不具合は付き物」なので、必要に迫られない限り、わざわざリスクを冒すこともないだろう。 来春、中国のITベンチャーが、Microsoft Office のそっくりソフトをリリースする。キングソフト・オフィスという名前で、Microsoft Word、Excel、PowerPoint に相当するソ フトがセットで5千円弱で手に入る。これまで、同様のソフトとして、オープンソースの OpenOffice.Org や、それをサンマイクロシステムズ社が製品化した StarSuite など が一定の市場評価を得ているが、互換性があるとはいうものの、Microsoft Office で作られた文書を読み込むと、レイアウトが崩れるなどの難点が残っていた。キング ソフト・オフィスは、中国人ならではの徹底的な模倣努力の賜物か、操作性や細部の作りが元祖とほぼ遜色無い。キングソフト社によれば、マイクロソフト社の特許にも 抵触していないとのことなので、企業の標準オフィスソフトとしても十分検討に値する。(キングソフト社のHPから、ベータ版のダウンロードが可能) SaaS(サーズ、Software as a Service)という選択肢も考えられる。SaaSは、ソフトを購入せず、必要なときに必要なものだけ、インターネット経由でサービスを受けると いうのものだ。企業ではセキュリティ強化やコスト削減の追求から、ソフトやデータを極力PCに入れない、シンクライアント化がより一層進むと思うが、PCにソフトを入 れないから、高速なインターネット環境で SaaS を使うようになるのは自然な流れである。オフィスソフトでは、Google Docs & Spreadsheet(D&S)はその代表格だ。アド ワーズ広告に収入を頼っている Google が、D&S を無料で提供しているということは、いずれ、D&S を何らかの有料SaaS と連携させて、新たな収入源となる企業向け のサービスを提供する布石と見てよいだろう。 ソフトウェアは、それを開発した技術者の成果だから、対価を払うのは至極当然のことだが、システムを作る仕事をしていると、ユーザ数やCPUの数で、結構な金額 になってしまったライセンス料を見て、唖然とする機会が少なくない。オープンソースがすべての解ではないが、せめて、OSやオフィスソフトのような、すべてのビジネ スの基盤になる製品は、容易な値段で入手できるべきで、その方が社会の繁栄に寄与すると思う。 2 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 3. ソフトも自作 アジア流 産経エキスプレス 2007/1/26 掲載 「ITエキスパート通信」 年に何度か、ODA(政府開発援助)の一環で、ITの講師を務めさせていただくことがある。東南アジアや極東 アジアから奨学生を東京に招き、数週間のカリキュラムを受講してもらうのだ。各国から数人ずつ優秀者を選 抜し、東京で会得した知識やスキルを、それぞれの母国で横展開してもらおうというのが事業の主眼である。 生徒とは授業の合間に、よもやま話を交わすのだが、各国各様のIT事情が垣間見られて面白い。 ■検閲なんのその 中国国内でグーグル検索しようとすると、一部のキーワードが中国政府の意向でフィルタリングされること は有名な話だが、このような事例は何も中国に限ったことではない。欧米の多くのサイトへのアクセスが、IS P(インターネット接続回線事業者)の段階でブロックされる▽メール1通を打つのさえ警察官による立ち会い が必要▽ISPで検閲をパスしないと、メールが相手に届かない-という国は、少なからずある。 しかし、生徒たちの多くは母国の閉鎖的なネット事情には決して悲観的でなく、むしろ、自由なネット環境を ベトナム・ホーチミン市にある、クアンチュン・ソフトウエア・パーク。 持っている日本人よりも国際的で行動的だったりする。 欧米のIT産業が進出するほか、ITに特化した大学もある (写真提供・同市在住の大学講師、Kevin Miller Jr.氏) ■ないものは「作る」 発展途上国では、ソフトウエアの知的所有権やライセンスという考え方が定着、浸透していない側面はあるが、半面、彼らはオープンソース・コミュニティーでのギブ& テイクの段取りはよく心得ている。どこから見つけてきたかと思えるような、便利なツールを駆使して即座にシステムを作り上げる者もいれば、Linux(リナックス)のカー ネルを自国語向けにローカライズして、コミュニティーにアップロードしている者もいる。 ソフトウエアが市場に飽和していて、お金で時間を買う論理で市販パッケージ導入が日常的な日本と、決して経済的に余裕があるわけではなく、自国向けソフトが充実 していないため、ないものは自分たちで作るという発想の彼ら。「モノ作りの雄」だったはずのわが国は、こういうところから他のアジア諸国に差を付けられていくのだろう な、と考えてみたりする。 ■“優秀”な社会主義国 十分なサンプルがあるわけではないが、筆者がカリキュラムを担当した範囲では、修了後に好成績を残すのは社会主義国の生徒になることが多い。具体的に国名を 挙げるならベトナム、ミャンマー、モンゴルだ。 きまって、これらの国々の生徒が優秀な成果を残すのはなぜか。共通するのは、基本的に真摯(しんし)であり謙虚であり実直である点だ。別に日本的な尺度で成績を 測っているわけではないのだが、そういう人が表彰状をもらって母国に凱旋(がいせん)してゆく。 ここ数年、好んでしばしばホーチミンに行くが、プライベートな機会とはいえ仕事柄、地元IT企業を見学してみることにしている。ホーチミンには3つのソフトウエア・パー ク(IT企業団地)があり、訪れる度に活況を呈している。特に目立つのは、市中心部のシェラトンやハイアットなどのホテルで、米国系有名ベンダーがひっきりなしにセミ ナーを開いていることだ。 OSやDB製品の好敵手の増加によって、欧米や日本では目減りしつつある売り上げを、東・南アジアで補填(ほてん)しようとしている、それとも、オープンソースへの 潮流を途上国を皮切りに食い止めようとしている、と考えてしまうのは、少しうがった見方だろうか。 3 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 4. 電子マネー もっと身近に 産経エキスプレス 2007/3/9 掲載 「ITエキスパート通信」 この春は、電子マネーが百花繚乱だ。既にサービスを開始している、NTTドコモのiD、JR東日本のSuica(JR西 日本ではICOCA)、ソニー陣営のEdy、関西民鉄系のPiTaPa、JCB陣営のQUIC Pay、三菱UFJ陣営のVisa Touch/Smartplusに加えて、民鉄やバス系のPASMO、セブンイレブン系のnanaco が参入する予定だ。 ■煩わしさ解消 シンクタンクなどの調査では、電子マネーの利用経験者は全人口の20-30%程度と言うから、日常的に使っ ている人はせいぜい10人に1人程度だろう。筆者も当初、現金に勝るものはないだろうと、電子マネーの利用に は懐疑的だったが、ある電子マネーの開発に携わったのをきっかけに、日常的に電子マネーを利用するように なった。理屈ではなく、いかに日常生活に溶け込むきっかけを作るかが、電子マネーの将来を占う。 チェーン店で買い物すると、まず例外なくポイントカードを作らされる。大して現金が入っているわけでもないのに、 財布が太るのは、たいていの場合、領収書の束と、このポイントカードの仕業である。特にカード類は、ほとんどプ ラスチック製なので、かさばることがこの上ないのだが、家電量販店やコンビニエンスストアなどが出しているカー ドの多くは、携帯電話にインストールすることができるようになっている。 読み取り端末に携帯電話をかざすだけで 商品を電子マネーで払えば、同時に連携しているポイントカードにもポイントがたまり、これならため忘れの心配もない。 簡単に決済ができる「おサイフケータイ」 ■携帯にひとまとめ 財布に複数のクレジットカードを忍ばせるように、1台のケータイに複数の電子マネーを入れておくのは、ごく自然な使い方である。コンビニエンスストアなどでは、複 数の電子マネーに対応していて、今春以降、店によっては、1つのレジで最大6種類の電子マネーが使えるようになるはずだ。 現金ならば黙って札や硬貨を出すだけで支払いが済むのに、電子マネーの場合は、その都度「iDで」とか「Edyで」などと、どの電子マネーを使うかを店員に伝える 必要がある。「Edy」なら2音節だが、「QUIC Pay」に至っては5音節もある。レジで実際に声を出してみるとわかるが、これが意外と煩わしい。呼称を工夫することも できるだろうが、ユーザが自分の利用パターンをあらかじめケータイに設定できるようになると便利だろう。 ポイントの還元率やキャンペーンをふまえて、コンビニA店では1番の電子マネー、ファストフードB店では2番の電子マネー、といった具合に。これなら、店員が電子 マネーの種類を誤って選ぶ可能性もグンと低くなる。 ■幼児教育が必要? やや過剰反応かもしれないが、電子マネーを子供に持たせるには、まだインフラの整備と親の配慮が必要だろう。種類にもよるが、一部の電子マネーでは、保有に あたって特に年齢面などの条件が設けられていない。 現金に準ずる位置づけからは、これは元来の電子マネーの要件にかなっているのだが、一方、電子マネーは、Eコマースや無人販売など非対面型の買い物と非常 に親和性が高いため、人の目が介在しないところで、親が意図しない用途に使われる可能性は否めない。相応の対策が必要であるとともに、21世紀の幼稚園や保 育所では、幼児に正しい電子マネーの使い方を教える必要も出てくるだろう。 4 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 5. ネット経由「こちら現場です」 産経エキスプレス 2007/4/20 掲載 「ITエキスパート通信」 10年ほど前、ニッポン放送のプロデューサー氏と初めて会ったのは、寄稿していた雑誌の打ち合わせで築 地の某新聞社を訪れたときのことだ。インターネットの接続速度は、ISDNの64kbpsでも速いといわれたこ ろだったが、文字と静止画だけの無機質なホームページにうんざりしていた筆者は、氏から「インターネット上 にラジオ局を作る」という話を聞いて「放送局らしいシステムを構築できますよ」と売り込んだ。 ■10年前は「ありえない」 今でこそ、ネットで公開されている動画や音声はWindows Media、Quick Time、Flashなど多彩だが、 当時は、音声のみ扱えるReal Audioがほぼ唯一の方法。音質もさほどよくない環境で、どのようなコンテン ツを扱うかが企画会議の議題となった。ネット上とて、放送局である以上は何よりもライヴ性が肝要ということ で、中継車がなくてもアンカーマンとディレクター、それにPHSさえそろえば、街中どこからでもインターネット やラジオに画像と音声を生で送出できるしくみを作った。 放送局の技術陣には「コマ落ちした動画やゆがんだ音声を、ネット上ならまだしも電波に載せるなんてあり えない」という機運さえあった時代。今どき朝のワイドショー番組をザッピングしてみると、事件現場からiモー ド映像で生中継するのは日常茶飯事になっている。機動力とライヴ性を優先し、素材はベストエフォートでO Kという、インターネット的考えが放送業界にもようやく浸透してきたようだ。 IPテレビ電話のしくみを使ったニュース中継の風景 (PhotoCourtesy: Inmarsat Global Limited, London UK) ■イラク進軍を中継 パパ・ブッシュが率いた1991年「砂漠の嵐作戦」の際、CNNのピーター・アーネットが、スーツケースとコウモリ傘(=正確には衛星への電波送出装置で『フライ・ア ウェイ』という)だけを使って戦時下のバグダッドから音声リポートを送った話はあまりに有名だ。 時を経て、息子ブッシュによる2003年のバグダッド陥落のとき、CNNやBBCは「トーキング・ヘッド」というテレビ電話を使った。パパのときと息子のときでは、戦時下 からのライヴ・ニュースに映像が付くか付かないかだけの技術の進歩がある。CNNが戦車と伴走する4WDに「トーキング・ヘッド」を載せて世界に生中継した、バグダッ ド進軍の映像は記憶に鮮明だ。 ■中継車のなくなる日 ちなみに現在のCNNでは、米国外からの現地リポートにIPテレビ電話が使われ、衛星経由かインターネットで中継されていることがしばしばである。画面に「ブロード バンド中継」という字幕が入っていなければIP電話とはわからないくらい、通常のテレビ中継と遜色(そんしょく)ない映像や音声の品質には驚かされる。 中継車を手配しにくい僻地(へきち)からの中継のみならず、東京支局からのリポートもブロードバンド中継だったりする。遅かれ早かれ、世界中の放送局が追随するト レンドだろう。いつの日か、中継車というものさえなくなるときが来るのかもしれない。 最後に、この場を借りて、冒頭紹介したプロデューサー氏に謝意を表したい。西尾安裕氏(現・デジタルハリウッド大学大学院教授)、三谷清氏(故人)との出会いがな かったら、筆者はITの仕事を続けていなかっただろう。「インターネット的」な価値観が会得できたのも、お二人とご一緒した仕事のたまものである。 5 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 6. 携帯の愚を再現?日本のIT業界はガラパゴスか 産経新聞、産経エキスプレス 2007/5/9 同時掲載 新入社員が世に出て1カ月。就職売り手市場ながら、入社3年で3割が辞める時代だ。最近、IT(情報技術)業界では、「なんとなくカッコイイ」という単純な動機で入ってく る若者も増えている。一方で、旧態依然とした“流儀”がまかり通る業界を見て、想像とのギャップに悩む新人も多いという。システム開発に詳しく、「SANKEI EXPRE SS」で「ITエキスパート通信」を連載し、イザ!で専門家ブログ(http://digitalway.iza.ne.jp/)も開設しているスカイウィル取締役の池田将さん(34)に、現状を聞いた。 ■「インド73」「日本9」 日本のIT業界は欧米に比べて、システム開発・運用管理などを海外の事業者に委託するオフショア開発が浸透しにくいように思われるが、そのような中でも、中国など のシステム・インテグレータ(SI-er)と仕事する機会が増えた。現地のSI-erには概ねブリッジSE(システムエンジニア)がおり、日本語も理解してくれるが、テレビ会議 のたび、意思疎通に困っている。言葉、ではなく考え方の違いに。 システム開発では、開発過程の能力成熟度を評価・判定する国際的な評価基準「CMMI」がある。レベル1から5までランク分けされ、技術面よりも、組織としての達成 度・成熟度を示す。米カーネギーメロン大によって開発され、米国政府もソフト調達時に用いる基準だ。レベル1は、属人的な要素が強い段階。たとえスーパーマン技術 者でも、孤軍奮闘を強いられている状態で、当人がいなくなれば業務も滞る。レベル5なら、組織としてノウハウを共有している状態。“統合力”のある最高レベルだ。 発注側から見ると、レベル5なら万一、担当者が病に倒れても、途中でSI-erが倒産しても、同じ要件をもとに他に発注し直せば、支障なく業務を継続できる。 ちなみにレベル5認定の大半が、インドのSI-erで73社ある。日本は9社だ。国としてIT水準の高さを証明するもので、英語圏ゆえ、欧米企業のオフショア開発がイン ドに集中しているのはご承知の通りだ。 ■日本は何で食べていくか? 日本のシステム開発で気になるのが「体質」だ。その一つが官公庁。 一昨年に多発した談合事件を機に、随意契約が見直され、一般競争入札で単年度発注されるケースも増えてはいる。確かに入札で局所的にコストは下がるが、不必 要な部分でもスクラップ・アンド・ビルドするようになってしまい、無駄を省くための施策が、逆に無駄を生み出している。 また、受注業者が変わっても新規参入は少ない。これは、CMMIのような基準が、日本ではあまり考慮されないことが一因だ。 対極にあるのが米国だろう。無から有を産む発想力は、一朝一夕に出来上がるモノではない。また、IT競争力のある国を見ると、軍事技術と二人三脚のイスラエル、 小国ゆえ背水の陣のアイルランド、人海戦術の中国、CMMIレベル5・低コスト・英語圏のインド-など、いずれも特化を極めた国ばかりだ。 このような国々と比べ、日本は国際競争力を持つための“切り札”がない。強いて挙げるとすれば、仕事の緻密(ちみつ)さぐらいだろうか。 いっそのこと、発想を切り替えてはどうか。例えば、業務アプリケーション。経営効率を上げるためのERPと呼ばれるソフトウェア分野がある。日本ならではの緻密な仕 事のやり方を、上手にシステムに落とし込むことができれば、世界的のトップに躍り出られるのではないか。 ずば抜けてこそいないが「平均的な優秀さ」と「仕事の緻密さ」を持つ日本。若いエンジニアは、視点を変えれば、いくらでも国際競争力を高めることができることに気付 いて、マクロな視点で仕事に励んでほしい。ITは、国境を越えやすく淘汰(とうた)されやすいが、得意分野さえ極めれば何も怖くない。 ただ、特化の仕方を間違えれば、日本のIT業界は、携帯電話における「ガラパゴス島進化」と同じく、狭く限られた特殊な環境でしか生きていけない絶滅種となるだろう。 両刃の剣、ではある。(談) 6 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 7. 産経エキスプレス 2007/5/25 掲載 「ITエキスパート通信」 IP至上主義に異議アリ! インターネットに完全さが求められるようになったのは、いつころからのことなのだろう。筆者がエンジニアの仕事を始めたころは、つながっただけでも手を叩(たた)い て喜んだものだ。そもそも大半のユーザーの足回り回線はベストエフォートのままなのに、回線の二重化だの、サーバーのホットスタンバイだの、予算のないお客に限っ て、そんな要件を並べてくる。確かに、シンガポールへ手ぶらで出かけたとき、国際回線の不調で、オーチャード・ロードのATMで現金が出せなかったときは正直あせっ た。昨年末の台湾地震では、香港の証券会社に預けてある中国株が動かせず、煽(あお)りを食ったのも事実だ。でも、この手の障害のワークアラウンド(回避策)と同じ レベルのことを、インターネットに求めるのは本末転倒のような気がしてならない。 ■鉄道システムもフルIP 世はIP(インターネット・プロトコル)至上主義の様相を呈している。専用線であれ、インターネットであれ、回線のサービスレベルに違いこそあれ、所詮(しょせん)そこを 流れるのは、保証のないIPというコネクションレスなプロトコルである。だから、VoIP(インターネット電話)位までは、日常的に違和感なく使えるのだが、「鉄道の制御シ ステムをフルIP化します」とか言われると、IPの効用やQoSを頭では理解していても、線路のポイントがIPパケットで切り替えられる画を想像し、なんとなく不安を覚えて しまうのは、筆者も年をとったからに違いない。(JR武蔵野線の市川大野駅周辺では、鉄道制御システムのフルIP化を試験導入している。) ■あらゆる動画を飲み込む 既存メディアをIPベースに置き換えようという流れが顕著な分野は、動画サービスだろう。YouTube(ユーチューブ)、GyaO、ニコニコ動画などの隆盛で、1次通信事 業者であるISPは、回線設備の増強費用をまかなうために、コンテンツプロバイダ等に応分の費用負担を求める主張をしている。いわゆる、「インターネットただ乗り論」 だ。コンテンツのリッチ化が進んだところで、日本の人口は限られているし、圧縮技術も向上するだろうし、さらに「メトカーフの法則」に沿うなら、前出ISPの主張は極端な 懸念に思える。でも、インターネットで動画が流れ始めたころは、あれほどマルチキャストという言葉が叫ばれたのに、ブロードバンドの普及が速すぎて、通常の1対1通 信の掛け算の世界で動画サービスが展開されている今日、「ただ乗り論」はそういった状況に対する警鐘と考えるべきかもしれない。 ■月500円さえ徴収困難 コンテンツプロバイダも大変である。個人的な推計だが、YouTubeで回線コストに月1億円はかかっている。ニコニコ動画で、おそらく1000万円以上。ひろゆき氏によ れば、ニコニコ動画会員の100万人のうち、10人に1人が月額500円の有料会員にスイッチすればサービスが継続できると言うから、月に5000万円の売り上げとし て、確かに回線費用が売上高の2割でおさまれば、ビジネス的にブレークイーヴンという気もするが、皮算用通り事が進むかどうか見ものである。 GyaOがやっているCMの挿入は、旧来の地上波民放テレビ局の広告収入モデルを踏襲しているに過ぎない。ニコニコ動画のユーザーから会費をもらう方法も、NHK の受信料未納者が数十万人に上るのに、サブカル的なコンテンツ・コミュニティーに月500円払うかどうかは疑わしい。インターネットが新しいメディアなら、インターネッ トならではの新しい使い方と、新しいお金の取り方が、そろそろ考え出されてもいい時節である。 ◇ ■メトカーフの法則 通信網の価値は利用者数の2乗に比例し、通信網の価格は利用者数に比例する、とした考え方。パロアルト研究所でイーサネットを発明したロ バート・メトカーフが提唱した。メトカーフは、後に3COMも創業している。 7 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.
  • 8. 池田 将 プロフィール 株式会社 スカイウィル 取締役 関西大学工学部在籍時 (1990年代前半~)に、プログラマ/テクニカルライターとしてIT業界に携わる。 インターネット専門誌数誌に連載。アジア(シンガポール、韓国、香港、中国など)やシリコンバレーの、大学や企業取 材を通じて、ネットワーク、ITのマーケット、技術への知識を深める。 (取材先: National University of Singapore, 香 港科技大学、台湾資訊工業会、スタンフォード大学、PointCast Inc.、Earthlink Inc.など) 1996年:パソコン向けソリューションを提供する会社を設立 東京インターネット(現、ソフトバンク)のサーバ構築業務を受託し、顧客先に webサーバを構築・保守。東京都庁・三 菱総合研究所制作の「東京遷都論」ホームページを構築。秋葉原のパソコンショップ等と提携し、パソコン販売後の 訪問セットアップ・サービスを提供。 1999年:システム開発の効率化メソッド、BPR(ビジネスプロセス再構築)を専門的にコンサルティングする会社を設立。 コンサルティング先:大手不動産企業、大手人材派遣等 2002年:スカイウィル設立時にビジネスに参画。スカイウィル拡大の為に取締役に就任 <Skywillでの主なプロジェクト実績> 官公庁向け、グループウェアの選定に関わるコンサルテーション。 システムインテグレータ向け、全国拠点ネットワークの通信コストダウンに関するコンサルティングとVPN構築。 官公庁の犯罪対策部隊、大手通信会社の幹部、海外からの研修生向けにネットワーク・セキュリティに関する講義。 大手携帯電話会社向け、電子マネーのネット決済対応開発のインターフェース設計。 <前職からのキャリア> ISP向けポータルサイト(100ドメイン対応)の仕様策定、スケジュール策定、構築、開発統括。 郵政省向け、郵便システムの電子キオスク化に関する研究会において、方策検討。 <連載> 産経新聞社 Sankei Express ITエキスパート通信 (毎月最終金曜日) 産経デジタル iza!(イザ) β版 専門家ブログ 「Digital Way of Living」 http://digitalway.iza.ne.jp 8 Copyright ©2007 Masaru IKEDA All rights reserved.

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