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日本語教育にとって必要な遠隔教育
- 8. 教材開発におけるこれまでの取組
『Situational Functional Japanese』
開発背景:科学技術など理工系の研究者(大学院生)を主な対
象とする集中日本語コース用の一般日本語のテキストが必要な
状況。知的レベルの高い彼らが、コース終了後も自分で日本語
力を伸ばしていけるような基礎力を養成することも重視。
小林(2007)からの引用:
筑波大では、Situational Functional Japanese (以下SFJ)以前は『きそ
にほんごかいわ』(1986作成)という文法シラバスの教科書を作成し、簡
易製本して、使用していた。各課の学習目標は「文型」であり、しかも、
ほとんどが敬体「です・ます体」の会話だったため、不自然なものであっ
た。学習者は、教室の外の日本語が異なることに驚き、教科書の日本語は
本物ではないと、見破って、不信感を持ちながら学習していた。これでは、
実際の社会でのコミュニケーション力は付かないというのが、SFJの出発
点にある。
- 9. 教材開発におけるこれまでの取組
『Situational Functional Japanese』
特徴:
1. 複雑さの中で学習する。(実際の表現を隠さない。単純化しない)
2. 自然な日本語のモデル会話がまず先行して作成されている。
3. 会話における社会的人間関係を重視している。
4. モデル会話には第一課から敬体と常体が同時に提示される。
5. 学習者のニーズ調査に基づく場面、機能シラバスである。
6. コミュニケーション能力重視でありながら、文法構造練習もある。
7. 文法はスパイラルに重要項目が複数回取り上げられる。
8. 多様なタスク型の練習を通して4技能の練習と日本文化を学べる。
9. 自習用の文法、会話(言語文化情報も含む)の解説が詳しい。
映像教材開発
- 12. 教材開発におけるこれまでの取組
『わくわく文法リスニング99』 耳で勉強する文
法教材
開発背景
1. 聴解の授業を担当していた著者が、学習者が文法部分に注意を払って
聞いていないことに気付く。
2. 新しい文法を導入して口と耳だけで練習しているときはうまく反応し
ていた学生が、教科書を見て文字を見ながらやると混乱する場合が
あった。
3. 文字ではなく耳に頼って学ぶほうが分かりやすく楽だという学生もい
るかもしれない。→文法にフォーカスして聞きながら単純なタスクを
させることで文法の理解が進めばいいと考えた。
4. 明示的に理屈で説明するのが難しい「んです」など、「んです」の
入っていない文と対比的に聞かせていくと何となく分かってくれるよ
うな気がしますが、どうでしょうか。メタ言語で説明するのではなく
て、自分で暗示的に学べるように工夫したつもりです。 SPOTへ
- 13. 教材開発におけるこれまでの取組
『Basic Kanji Book』
特徴1:主教材に準拠しない独立型の漢字教材
特徴2:漢字に関する知識(字源、表意性、音訓のルール、
部首、音符など)を体系的に教える
特徴3:新聞等アカデミックな場面での使用頻度によって学
習漢字の選定
特徴4:トピックベースの課立てで漢字の運用力(文脈から
の意味推測、漢語の語構成の分析、漢字語の品詞性の理解な
ど)をつける
特徴5:覚えた漢字を必要に応じて記憶の中から取り出して
活用できるような覚え方、整理法を工夫させる
漢字力テスト・漢字診断テストへ
- 15. テスト開発におけるこれまでの取組
J-CAT (Japanese Computerized Adaptive
Test)
非日本語母語話者の日本語能力を測定するテスト
である。インターネット上で動作するコンピュー
タ適応型テストであり、動的に能力が測定され
る。
聴解、語彙、文法、読解の4つのセクション
2005年から山口大学、2010年から筑波大学拠点で
公開・運用
*科学研究費補助金基盤(A)(18202012)「インターネットによる日本語のコンピュータ適応型テストの開発と検証」 (2006-2009年度)ほかによる
- 16. 留学生に対する日本語教育1984
1991
1995 SPOT
1980 1990 2000 2010
1995
J-CAT*
TTBJ
2011
筑波日本語
eラーニング
日本語教育研究1984
テスト
教材
教育研究
これまでとこれから
教育
研究
教材
開発
テス
ト開
発
1989 Basic Kanji Book(BKB)
SFJ
わくわく
日本語・日本事情遠隔教育拠点
(2010~2014)
↓
*J-CATは2005~山口大学(今井新悟)
漢字力テスト・漢字
SPOT
Web SPOT
JACOP DVD Video
- 23. 既存のEラーニング
レベル 対訳 学習内容 主たるコンテ
ンツ
総レッスン
数
利用条件
CMJ 初級 18ヶ国語 基礎日本語
文法,漢字
文字 20レッス
ン
無償,制限
あり
JPANG 初級,中級 12ヶ国語 総合日本語 動画,音声,
文字
初級28,
中級21
無償
NHK ― 15ヶ国語 生活日本語,
ビジネス日本
語
音声,PDF 50レッス
ン
無償
エリン ― 8ヶ国語 文化学習 Flash,動画 25レッス
ン
無償
まるごと A1 英語,スペ
イン語
基礎日本語 Flash,動画 50can-do 無償
MLC 初級 英語訳 サバイバル
日本語
PDF,Flash,
音声
20レッス
ン
有償
日本語独習 初級 英語訳 基礎日本語 文字,動画 16レッス
ン
無償
- 27. 従来型のeラーニング 本拠点のeラーニング
教室学習
• 復習目的
• 課題の提出
・教室学習の延長上に位置づけられる。
特徴
メリット
デメリット
・正規のカリキュラムに組み込みやすい。
・学習進捗を教師が確認できる。
・教室に来られない学習者には対応できない
・教師による管理負担が大きい。
授業補完型 完全自立型
・教師が介在しない, 教室学習を前提にしない。
特徴
メリット
デメリット
・忙しくて教室に来られない学習者への教育
・教師の管理負担が尐ない。
・コンテンツ制作の負担が大きい。
・機械処理による限界(音声認識などの技術的限界)
教材サーバ学習者
メンター
放課後
筑波拠点のeラーニング1
- 31. まとめ
筑波大学の取組紹介
1. 研究と教育を開発に活かす組織と専門スタッフ
2. コミュニケーション力向上のための教材開発:SFJ,BKB,ワクワク,TTBJ,J-CAT
3. 日本語・日本事情遠隔教育拠点によるEラーニングコンテンツ開発と整備,共同利用
4. 筑波日本語eラーニングの紹介:自立学習,双方向学習を支援する
5. これからのEラーニング,これからの日本語教育が目指すべき点:相互学習を支援するユ
ニバーサルサービスとしての日本語教育