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教育ビッグデータへの期待
~最新研究動向にみる可能性と課題~
松居辰則(matsui-t@waseda.jp)
早稲田大学人間科学学術院
『教育ビッグデータが導く新時代 ~学習行動の分析・活用で広がる未来~』
自己紹介
 松居辰則(まつい たつのり)
 早稲田大学 人間科学学術院 人間情報科学科 教授
 1988年 早稲田大学理工学部数学科卒業
 1993年 早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻博士後期課程単位取得中退
博士(理学)
 早稲田大学理工学部(1992年~1995年),東京学芸大学(1995年~1997年),
電気通信大学大学院情報システム学研究科(1997年~2004年)
 研究分野【教育工学,人工知能,人間情報学・感性情報学】
 教育評価の数理的手法,学習データ分析,テストデータ分析,順序データの構
造分析手法
 知的教育・学習支援システム,適応学習のための制御手法
 Affective Computing for Learning/Education(学習履歴データ,行動データ,生
体計測データからの学習者の心的状態の推定手法)
 感性情報科学,スキル分析,Human-Computer/Agent/Robot Interaction,感情
に関する脳機能モデリング など
 所属学会
 人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,教育システム情報学会,日
本感性工学会,テスト学会,IEEE,ACM 等
 人工知能学会(学習科学と工学研究会主査,評議員 等)
 電子情報通信学会(情報システムソサイエティ誌編集委員長 技術会議幹事 等)
 教育システム情報学会(理事,学会誌編集委員会副委員長 等)
 ICCE(International Conference on Computers in Education) Program Committee
Member 等
本日の内容
 Learning Analytics(LA)とEducational Data Mining
(EDM)
 LAの研究動向
 LAの何が新しいのか?
 LAの何が難しいのか?
 LAを促進するための課題
Learning Analytics(LA)とは?
 LAK(International Conference on Learning Analytics and
Knowledge)での定義
“Learning analytics is the measurement, collection, analysis
and reporting of data about learners and their contexts, for
purposes of understanding and optimizing learning and the
environments in which it occurs.”
 Educational Data Mining(EDM)との相違点
 様々な議論...
 Data Mining技術の教育分野の応用
 技術的志向が強い
 そもそもコンセプトが異なる
 ・・・
 LAとEDMはその目的・理論・技術において共通部分が多い
→ 明確に区別する必要はない...
LAに関する研究動向
 国際会議
 EDM(Educational Data Mining)2008-
 LAK(Learning Analytics and Knowledge)2011-
 ICCE(Computers in Education)
 歴史は古いが2014からLAセッションがスタート
 KDD Cup 2015(Knowledge Discovery and Data Mining Cup)
 2015年の課題が「MOOCの受講者の離脱者確率を予測する」であった.
 その他
 国内学会
 人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,教育工学会,教育システム
情報学会 等
 ここ数年研究発表が増えてきている.
 その他
 ISO・IEC JTC1/SC36/WG8
 学習分析学会
 LAデータ項目の規定(文科省,IMS Caliper,EDUPUB 等)
LAに関する研究動向(続)
 学習履歴データの利用
学習状態の記述(可視化),学習状態の判別・予測,知織状態の同定と学習支援,メタ認
知スキル獲得の促進 等
 粒度の粗いデータ(High Level Interactionリソース)の利用
 LMS(Learning Management System)による取得データの利用
→ 圧倒的にこのタイプの研究が多い.
 粒度の細かいデータ(Low Level Interactionリソース)の利用
 学習記録(映像,音声)の解析
 マウス,キーボード,デジタルペン等の入力デバイスからの入力情報の解析
 電子教科書のページ閲覧履歴からの解析
 生体計測データの利用
学習時の心的状態の推定・判別と学習支援,学習状態の記述(可視化),学習状態の判
別・予測,知織状態の同定と学習支援,メタ認知スキル獲得の促進 等
 特殊な計測機器を利用しない
 Webカメラ(PCに標準装備)による映像記録(表情や動き,音声等)の解析
 マウスやキーボード等の入力情報(位置,速度,加速度,打圧,打鍵間隔等)の解析
 特殊な計測機器を利用
 EMR(Eye Mark Recorder),脳波,NIRS(近赤外分光分析法(Near-Infrared
Spectroscopy),発汗,心拍,皮膚コンダクタンス,皮膚血流 などの利用
→ このタイプの研究も多い.
LAの何が新しいのか?(続)
 その目的は?
 昔から何も変わっていない.
 ただ,それを実現することができなかった...
 学習過程の記録方法が限定的であった(記録シート,映像,振
り返り・内省 など).
 学習結果の分析が中心で,学習過程の分析は困難であった.
 ICTの進展により学習や教育に関する膨大なデータが様々な
形態や粒度で取得・蓄積できるようになった.
 学習過程に関するデータの取得が可能となった.
 従来では困難であった学習評価や学習支援への可能性が高まっ
てきた.
LAの何が新しいのか?(続2)
 その理論や技術,ツールは? 特に,分析のための理論や
技術,ツールは?
 LA(特に,分析)に必要な理論や技術
 機械学習アルゴリズム
 相関ルール抽出,決定木,ニューラルネットワーク,深層学習,SVM
(Support Vector Machine),ブースティング,近傍学習,ランダム・
フォレスト・・・
 統計的手法
 相関分析,回帰分析,クラスター分析,因子分析,主成分分析,判別分
析,正準相関分析・・・
 モデリング手法(分析視点も含む)
 一般線形モデリング,MCMC・・・
 LA(特に,分析)に必要なツール
 統計解析パッケージ(SPSS,Rなど)
 計算機パワー
 Google, Amazon,MicroSoft等の機械学習クラウドサービス
LAのために創出された理論や技術,ツールはない!?
LAの何が新しいのか?(続3)
 分析結果の解釈は?
 今も昔も人間が行うしかない.
 LAの学習フィードバックは?
 学習者の理解状態を推定し何らかの学習支援を行う.
 適応学習(課題提示,説明提示,復習課題提示等)
 可視化された情報を共有
これは「人工知能の教育応用」の研究分野で理論・技術・実践に関する
膨大な知見が蓄積されている(多分,これを超えることは不可能!).
したがって,LAにおいて新しいことは「粒度の細かなデータが大量に取
得できるようなった」ことだけである.
しかし,その扱い方によっては,今までできなかった学習評価,学習支
援,学習環境デザインの実現の可能性が期待できる.
LAの何が難しいのか?
 学習環境デザイン段階
 「とにかくデータを取得すればよい」という考えは危険.
 学習の対象,目的に合わせた評価視点でのデータ取得を設計する必要がある.
 データ取得段階
 特殊な計測機器を装着した状態での学習環境は真の学習環境ではない.
 データ抽出段階
 データ分析段階
 時系列データの分析手法は未整備.
 離散データの分析は計算量増加を伴う.
 分析結果のほとんどはゴミ(自明,無意味,あり得ない).その中から意味の
ある結果を見出すこと(マイニング)ができるかどうかが重要.
 可視化の方法も「誰に何のために可視化するのか」によって検討する必要があ
る.
 データ解釈段階
 解釈を与えるのは人間(計算機には(多分)不可能).
 学習に関するデータは「計算機による分析結果」と「解釈(実現象としての意
味)」との乖離が極めて大きい.
 学習フィードバック段階
 データとその解釈の意味づけがなされていない(分析のブラックボックス化)
と学習・教育の文脈として意味をなさない.
LAを促進するための課題
 理論・技術の更なる展開
 計測機器の小型・軽量化,計測精度の向上
 学習文脈,教育文脈に強いデータ解析,機械学習アルゴリズムの開発
 サービス視点での学習デザイン,設計手法の検討
 LAに関る人材の育成
 “Laer”の育成
 教育・学習の従事者との連携
 知見の共有(コミュニティ形成,データクラウド)
 分析対象者の個人差の扱い
 生体計測データは大規模サンプルでの収集は非現実的
 分析者ノウハウの共有の必要性
 データの扱い(関連法の整備への期待)
 個人情報の扱い
 暗号化されたままでのデータ解析,機械学習技術の開発
 最近,開発されたとのニュースも...
 取得データの所有権の問題
 偶発的に(偶然に)抽出された結果の扱い
 温故知新
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 人と技術のよき共生...

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  • 2. 自己紹介  松居辰則(まつい たつのり)  早稲田大学 人間科学学術院 人間情報科学科 教授  1988年 早稲田大学理工学部数学科卒業  1993年 早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻博士後期課程単位取得中退 博士(理学)  早稲田大学理工学部(1992年~1995年),東京学芸大学(1995年~1997年), 電気通信大学大学院情報システム学研究科(1997年~2004年)  研究分野【教育工学,人工知能,人間情報学・感性情報学】  教育評価の数理的手法,学習データ分析,テストデータ分析,順序データの構 造分析手法  知的教育・学習支援システム,適応学習のための制御手法  Affective Computing for Learning/Education(学習履歴データ,行動データ,生 体計測データからの学習者の心的状態の推定手法)  感性情報科学,スキル分析,Human-Computer/Agent/Robot Interaction,感情 に関する脳機能モデリング など  所属学会  人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,教育システム情報学会,日 本感性工学会,テスト学会,IEEE,ACM 等  人工知能学会(学習科学と工学研究会主査,評議員 等)  電子情報通信学会(情報システムソサイエティ誌編集委員長 技術会議幹事 等)  教育システム情報学会(理事,学会誌編集委員会副委員長 等)  ICCE(International Conference on Computers in Education) Program Committee Member 等
  • 3. 本日の内容  Learning Analytics(LA)とEducational Data Mining (EDM)  LAの研究動向  LAの何が新しいのか?  LAの何が難しいのか?  LAを促進するための課題
  • 4. Learning Analytics(LA)とは?  LAK(International Conference on Learning Analytics and Knowledge)での定義 “Learning analytics is the measurement, collection, analysis and reporting of data about learners and their contexts, for purposes of understanding and optimizing learning and the environments in which it occurs.”  Educational Data Mining(EDM)との相違点  様々な議論...  Data Mining技術の教育分野の応用  技術的志向が強い  そもそもコンセプトが異なる  ・・・  LAとEDMはその目的・理論・技術において共通部分が多い → 明確に区別する必要はない...
  • 5. LAに関する研究動向  国際会議  EDM(Educational Data Mining)2008-  LAK(Learning Analytics and Knowledge)2011-  ICCE(Computers in Education)  歴史は古いが2014からLAセッションがスタート  KDD Cup 2015(Knowledge Discovery and Data Mining Cup)  2015年の課題が「MOOCの受講者の離脱者確率を予測する」であった.  その他  国内学会  人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,教育工学会,教育システム 情報学会 等  ここ数年研究発表が増えてきている.  その他  ISO・IEC JTC1/SC36/WG8  学習分析学会  LAデータ項目の規定(文科省,IMS Caliper,EDUPUB 等)
  • 6. LAに関する研究動向(続)  学習履歴データの利用 学習状態の記述(可視化),学習状態の判別・予測,知織状態の同定と学習支援,メタ認 知スキル獲得の促進 等  粒度の粗いデータ(High Level Interactionリソース)の利用  LMS(Learning Management System)による取得データの利用 → 圧倒的にこのタイプの研究が多い.  粒度の細かいデータ(Low Level Interactionリソース)の利用  学習記録(映像,音声)の解析  マウス,キーボード,デジタルペン等の入力デバイスからの入力情報の解析  電子教科書のページ閲覧履歴からの解析  生体計測データの利用 学習時の心的状態の推定・判別と学習支援,学習状態の記述(可視化),学習状態の判 別・予測,知織状態の同定と学習支援,メタ認知スキル獲得の促進 等  特殊な計測機器を利用しない  Webカメラ(PCに標準装備)による映像記録(表情や動き,音声等)の解析  マウスやキーボード等の入力情報(位置,速度,加速度,打圧,打鍵間隔等)の解析  特殊な計測機器を利用  EMR(Eye Mark Recorder),脳波,NIRS(近赤外分光分析法(Near-Infrared Spectroscopy),発汗,心拍,皮膚コンダクタンス,皮膚血流 などの利用 → このタイプの研究も多い.
  • 7. LAの何が新しいのか?(続)  その目的は?  昔から何も変わっていない.  ただ,それを実現することができなかった...  学習過程の記録方法が限定的であった(記録シート,映像,振 り返り・内省 など).  学習結果の分析が中心で,学習過程の分析は困難であった.  ICTの進展により学習や教育に関する膨大なデータが様々な 形態や粒度で取得・蓄積できるようになった.  学習過程に関するデータの取得が可能となった.  従来では困難であった学習評価や学習支援への可能性が高まっ てきた.
  • 8. LAの何が新しいのか?(続2)  その理論や技術,ツールは? 特に,分析のための理論や 技術,ツールは?  LA(特に,分析)に必要な理論や技術  機械学習アルゴリズム  相関ルール抽出,決定木,ニューラルネットワーク,深層学習,SVM (Support Vector Machine),ブースティング,近傍学習,ランダム・ フォレスト・・・  統計的手法  相関分析,回帰分析,クラスター分析,因子分析,主成分分析,判別分 析,正準相関分析・・・  モデリング手法(分析視点も含む)  一般線形モデリング,MCMC・・・  LA(特に,分析)に必要なツール  統計解析パッケージ(SPSS,Rなど)  計算機パワー  Google, Amazon,MicroSoft等の機械学習クラウドサービス LAのために創出された理論や技術,ツールはない!?
  • 9. LAの何が新しいのか?(続3)  分析結果の解釈は?  今も昔も人間が行うしかない.  LAの学習フィードバックは?  学習者の理解状態を推定し何らかの学習支援を行う.  適応学習(課題提示,説明提示,復習課題提示等)  可視化された情報を共有 これは「人工知能の教育応用」の研究分野で理論・技術・実践に関する 膨大な知見が蓄積されている(多分,これを超えることは不可能!). したがって,LAにおいて新しいことは「粒度の細かなデータが大量に取 得できるようなった」ことだけである. しかし,その扱い方によっては,今までできなかった学習評価,学習支 援,学習環境デザインの実現の可能性が期待できる.
  • 10. LAの何が難しいのか?  学習環境デザイン段階  「とにかくデータを取得すればよい」という考えは危険.  学習の対象,目的に合わせた評価視点でのデータ取得を設計する必要がある.  データ取得段階  特殊な計測機器を装着した状態での学習環境は真の学習環境ではない.  データ抽出段階  データ分析段階  時系列データの分析手法は未整備.  離散データの分析は計算量増加を伴う.  分析結果のほとんどはゴミ(自明,無意味,あり得ない).その中から意味の ある結果を見出すこと(マイニング)ができるかどうかが重要.  可視化の方法も「誰に何のために可視化するのか」によって検討する必要があ る.  データ解釈段階  解釈を与えるのは人間(計算機には(多分)不可能).  学習に関するデータは「計算機による分析結果」と「解釈(実現象としての意 味)」との乖離が極めて大きい.  学習フィードバック段階  データとその解釈の意味づけがなされていない(分析のブラックボックス化) と学習・教育の文脈として意味をなさない.
  • 11. LAを促進するための課題  理論・技術の更なる展開  計測機器の小型・軽量化,計測精度の向上  学習文脈,教育文脈に強いデータ解析,機械学習アルゴリズムの開発  サービス視点での学習デザイン,設計手法の検討  LAに関る人材の育成  “Laer”の育成  教育・学習の従事者との連携  知見の共有(コミュニティ形成,データクラウド)  分析対象者の個人差の扱い  生体計測データは大規模サンプルでの収集は非現実的  分析者ノウハウの共有の必要性  データの扱い(関連法の整備への期待)  個人情報の扱い  暗号化されたままでのデータ解析,機械学習技術の開発  最近,開発されたとのニュースも...  取得データの所有権の問題  偶発的に(偶然に)抽出された結果の扱い  温故知新  古くから蓄積された教育工学,教育学研究の知見の再認識と利活用