日本でのCLIL の進展 [Japan CLIL Development] 2013 volume 1

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本冊子は、日本でのCLIL の発展を期して、2012 年12月に上智大学で行わ
れたCLIL 懇談会に出席した人を中心に、CLIL の実践をまとめたものである。
この懇談会をもとに、『英語教育6月号』(2013)(大修館書店)に特集を組んだ。
しかし、紙面の都合もあり、CLIL の実態を詳細に記述することはできなかった。
ここにはそこには書かれていない内容を盛り込んである。
日本でCLIL が少しずつ注目されるにつれて、「CLIL とは何か?」という声が
さらに聞かれるようになってきている。そのような質問は発祥の地であるヨー
ロッパでもいまだにあり、CLIL に対して懐疑的な見方もある。理論的な枠組み
は多少明確ではないが、事実CLIL はヨーロッパではすっかり定着したと言って
よいだろう。実態は様々であるが、CLIL の一つ魅力はその点にある。日本では、
これまで同様の指導法、指導形態は取られてきた。バイリンガル教育、イマー
ジョン教育、内容重視の指導などがそうである。ヨーロッパでCLIL を展開して
いる指導者によれば、そのような指導もCLIL の一部となる。では、「CLIL とは
何か?」とさらに尋ねられるのである。
本冊子は、そのような状況に対して事例を示すことで回答したいと意図した。
理論をこねくり回しても実践のない教育は意味がない。また、実践だけであっ
っても柱のない教育はやはり不十分である。現時点でのCLIL 教育(CLIL
pedagogy)を理解してもらい、また、課題を示すことで、今後の日本における
CLIL の発展を期待したい。CLIL は、ヨーロッパでも起きているように言語学
習と科目学習に新しい視点を与え、学習を活性化する要素があり、これまでの
コミュニケーションを意識した言語学習の観点を大きく変える可能性がある。
また、科目の学習に対しても言語や思考とどう関連させるかという観点を示し
ている。教室という「学び」というコミュニティに対する考え方も変えつつあ
る。その意味から、CLIL は内容と言語を統合する指導法(methodology)の可能
性を追求している。本冊子はその一つの重要な資料となると考える。
なお、ここに示した各学校現場の事例は2012 年度実施の内容となっているの
で、所属も当時のままにしてあることをことわっておく。

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日本でのCLIL の進展 [Japan CLIL Development] 2013 volume 1

  1. 1. 日本での CLIL の進展 — 2013 (第1版) 監修 松本茂 池田真 笹島茂 著者 松本茂 笹島茂 山崎勝 鈴木誠 佐藤ひな子 三上正弘 永末温子 関田信生 山野有紀 (長沼君主) 池田真
  2. 2. 1 はじめに 本冊子は、日本での CLIL の発展を期して、2012 年12月に上智大学で行わ れた CLIL 懇談会に出席した人を中心に、CLIL の実践をまとめたものである。 この懇談会をもとに、『英語教育6月号』(2013)(大修館書店)に特集を組んだ。 しかし、紙面の都合もあり、CLIL の実態を詳細に記述することはできなかった。 ここにはそこには書かれていない内容を盛り込んである。 日本で CLIL が少しずつ注目されるにつれて、「CLIL とは何か?」という声が さらに聞かれるようになってきている。そのような質問は発祥の地であるヨー ロッパでもいまだにあり、CLIL に対して懐疑的な見方もある。理論的な枠組み は多少明確ではないが、事実 CLIL はヨーロッパではすっかり定着したと言って よいだろう。実態は様々であるが、CLIL の一つ魅力はその点にある。日本では、 これまで同様の指導法、指導形態は取られてきた。バイリンガル教育、イマー ジョン教育、内容重視の指導などがそうである。ヨーロッパで CLIL を展開して いる指導者によれば、そのような指導も CLIL の一部となる。では、「CLIL とは 何か?」とさらに尋ねられるのである。 本冊子は、そのような状況に対して事例を示すことで回答したいと意図した。 理論をこねくり回しても実践のない教育は意味がない。また、実践だけであっ っても柱のない教育はやはり不十分である。現時点での CLIL 教育(CLIL pedagogy)を理解してもらい、また、課題を示すことで、今後の日本における CLIL の発展を期待したい。CLIL は、ヨーロッパでも起きているように言語学 習と科目学習に新しい視点を与え、学習を活性化する要素があり、これまでの コミュニケーションを意識した言語学習の観点を大きく変える可能性がある。 また、科目の学習に対しても言語や思考とどう関連させるかという観点を示し ている。教室という「学び」というコミュニティに対する考え方も変えつつあ る。その意味から、CLIL は内容と言語を統合する指導法(methodology)の可能 性を追求している。本冊子はその一つの重要な資料となると考える。 なお、ここに示した各学校現場の事例は 2012 年度実施の内容となっているの で、所属も当時のままにしてあることをことわっておく。 2014 年5月 著者一同
  3. 3. 2 目 次 はじめに 1 1 日本における CLIL の現状と課題 松本茂 2 CLIL の実践と授業研究 笹島茂 3 授業実践にもとづく CLIL 3.1 和光国際高校外国語科での CLIL 実践の可能性 山崎勝 3.2 川越女子高校での教科間連携と CLIL 鈴木誠 佐藤ひな子 3.3 CLIL による SSH 科学英語指導 −CLIL 指導実践報告 2010 年∼2013 年− 三上正弘 3.4 SH 実践における教科型と Post-SELHi 実践における CLIL 開発 −CLIL 的授業と Can-Do 評価の結合 永末温子 3.5 CBL 型から CLIL 型の英語授業へ 関田信生 3.6 小学校外国語活動と CLIL 山野有紀 4 長沼君主 (準備中) 5 CLIL について考える懇談会 池田真
  4. 4. 3 1. 日本におけるCLILの現状と課題 松本茂(立教大学) 1 1.1 言語と内容の融合へ 2006 年に始まった文部科学省の言語力育成協力者会議が 2007 年に「言語力 の育成方策」 2 を打ち出し、その考えに則って作成された「学習指導要領」に基 づいた授業が現在、全国の小中高校で行われている。その学習指導要領の大き な特徴の一つは、すべての科目において言語力やコミュニケーション力を育成 するという方針を掲げていることである。 「言葉は学力向上に欠かせないもの」と捉え、言語力を重視することで、表 現力や思考力の重要性を現場に浸透させるというねらいがある。例えば、『学習 指導要領解説 保健体育編 体育編』3 では、「体育では、体を動かすことが、情 緒面や知的な発達を促し、集団的活動や身体表現などを通じてコミュニケーシ ョン能力を育成することや、筋道を立てて練習や作戦を考え、改善の方法など を互いに話し合う活動などを通じて論理的思考力を育むことにも資するもので ある」と「コミュニケーション能力」に関して記述されている。つまり、母語 での活動とはいえ、日本の初等中等教育ではすでに CLIL との親和性高い発想で の教育改革が動き出しているということである。 1.2 英語を英語で学ぶ 現行版の『高等学校学習指導要領』 4 の「外国語」においては、「授業は英語で 行うことを基本とする」とされ、2013 年度より 1 年次から段階的に実施され ている。さらに、2013 年 12 月 13 日に下村大臣が発表した「グローバル化に 1 連絡先:smatsumoto@rikkyo.ac.jp 2 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/036/shiryo /07081717/004.htm(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日) 3 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/ afieldfile/2011/01/19/1282000_7.pdf#search='学習指導要領+保健体育編'(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日) 4 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/kou/ kou.pdf#search='高等学校学習指導要領'
  5. 5. 4 対応した英語教育改革実施計画」 5 では、中学校においても「授業は英語で行う ことを基本とする」とされている。 高校だけでなく、中学においても「英語を英語で学ぶ授業」へ変えていく方向 性が示され、指導体制の整備も同時に提案されている。「指導する授業」ではな く、「学ぶ授業」と私が書いたのは、想定している主語が「生徒たち」だからで ある。「授業は英語で行うことを基本とする」ということは使用言語を英語に変 えることにとどまらず、「生徒が英語を使う授業」を推進することを意味してい る。言い換えれば、生徒たちが主体的に学ぶ授業の設計が求められている。こ れまでに多く見られた教師主体の授業を英語で展開することを求めているわけ ではない。つまり、teaching から learning への発想の転換であり、この考え は CLIL の 2 つ目の L (Learning)との親和性が高い。教師の役割のうち、生徒 の学びをリードし、サポートすることが重視されるということだ。 1.3 英語学習の高度化 前述の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」 6 では、高校の英語 に対しては「広い話題について抽象的な内容を理解できる、英語話者とある程 度流暢にやりとりができる能力を養うこと」「授業を英語で行うとともに、言語 活動を高度化(発表、討論、交渉等)すること」を要求している。「広い話題」 「抽象的な内容」について理解できたうえで、「発表、討論、交渉」を行うとな れば、当然のことながら、英語と内容の統合(融合)が求められる。 そして、2014 年度よりスーパーグローバルハイスクール(SGH)事業 7 が始 まり、56 校が指定された。「グローバル社会課題」について「プロジェクト型 学習」をすることになっている。指定された学校の多くは、海外へのフィール ドトリップや海外の高校生・大学生との学術的な交流を計画しており、この事 業における授業研究でも英語と内容の統合(融合)が試されるはずである。 また、SGH 事業よりも先に始まっているスーパーサイエンスハイスクール (SSH)事業 8 においては、英語との融合が重要視されるようになり、海外の高 校生との研究発表会や海外の大学教員へのプレゼンや論文提出といった課題を 5 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/12/__icsFiles/afieldfile/2013/12/17/ 1342458_01_1.pdf#search='グローバル化に対応した英語教育'(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日) 6 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/12/1342458.htm(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日) 7 http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/sgh/index.htm(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日) 8 http://ssh.jst.go.jp(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日)
  6. 6. 5 設定している学校も増えて来た。そこで使用される言語は英語であり、内容と 英語の統合が試みられている。 1.4 内容基盤型指導法(Content-based Instruction) 大学の英語教育カリキュラムにおいて、かなり前から内容基盤型指導法 (Content-based Instruction: CBI)に則った指導がなされてきた。例えば、 小生も勤務していた神田外語大学外国語学部では、創設当初から、担当教員が 選択した内容について英語で学ぶ CBI の授業を展開してきた。英語力の向上が 主たる目的の科目であり、科目名も「英語総合講座 III」となっている 9 。 CBI によって英語力を向上させるために、その授業を履修する前までに一定レ ベルの英語力に達していること、内容を理解し発言するための十分なサポート (英語面を含む)があること、取り扱われる内容に学生が興味を持っているこ と、などが重要である。最後の点について言えば、神田外語大学の場合、授業 で取り上げる内容を事前に発表し、学生は興味ある内容の講座を選択できるよ うになっている。 1.5 CBI と CLIL の違い CBI の究極の目的は言語習得であり、CBI が「指導法」と位置づけられてい るため、外国語教育関係者の研究上の関心は CBI の言語習得に及ぼす影響に置 かれることが多い。 そのいっぽうで、CLIL は、言語と内容が不可分のように、言語の学習と内容 の学習は不可分であるという考えのもとに立脚した「カリキュラム体系」であ る。言語の学習のほうにより重点を置いた科目から始め、徐々に内容の重みが 増した科目があり、最終的には内容の学習のほうにより重点が置かれた科目を 履修する、といった一連の流れが用意されていることが理想である。 立教大学経営学部国際経営学科のカリキュラム(図1)はまさしくそういった カリキュラム体系になっている。入学した学生は、1 年次には全学共通カリキュ ラムの英語の授業を1年間週 3 コマ(英語ディスカッション、英語プレゼンテ ーション、英語ライティング 1 コマずつ)履修しつつ、夏には 3 週間海外で学 9 http://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/subject/department/english/(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日)
  7. 7. 6 ぶ Overseas EAP(ビジネスプロジェクトを英語で体験するとともに、そのた めに必要な英語を学ぶ)を体験し、秋学期には国際経営学科の EAP 1 を週 1 コ マ履修する。2 年次の春学期には週 3 コマ英語の授業(ビジネスの内容につい ての Content-based Instruction)を履修し、秋学期には経営学を専門とする 教員が、100%英語で指導する専門科目である International Business(週 2 コマ)と英語教育を専門とする教員が指導する ESP(International Business のテキストを使用し、週 2 コマ)を履修する。3 年次以降は、100%英語で展 開される経営学の授業を受ける。 図1 立教大学経営学部国際経営学科のカリキュラム Oversea EAP(1年次)や Business Project(3・4 年次)をはじめ、いく つかの授業では連携企業から課題を提示してもらい、学生が主体的に調査・研 究し、企業側に対してビジネス提案を英語で行う活動を展開している(科目よ っては交換留学生との恊働学習もある)。このように、CLIL の 4C(内容、言語、 思考、協学) 10 のうち、内容と言語だけでなく、思考や協学も重視している。こ のようなカリキュラムで学ぶことで、4 年次 12 月時点までの 4 年弱の間に TOEIC のスコアは入学時と比較して平均で 200 点ほど向上しており、英語力も 伸びている。 10 4C については渡辺良典・池田真・和泉伸一(2011)『CLIL(内容援護統合型学習)上智大学外国語教 育の新たなる挑戦 第1巻原理と方法』(上智大学出版)の 4〜9 ページを参照。
  8. 8. 7 1.6 CLIL 成功への課題 日本のように、英語が第二言語ではなく外国語であって、日常生活であまり使 われていない状況で成功させるには、CLIL を「内容の理解と当該言語の力の伸 長も同時に目指すカリキュラム体系」として捉えて展開すべきである。そうし ないと、内容の学習も言語の学習もどちらも中途半端という結果に陥る可能性 が大きい。CLIL は基本的には一教員の思いつきで行うべきものではなく、しっ かりとした体系的基盤が必要であり、関係する教員が共通の理解を持ち、ゴー ルを共有したうえで取り組むべきものであろう。 立教大学全学共通カリキュラムにおいては、以前から「総合教育科目」に交換 留学生と英語力の高い一般学生を履修者として想定し、英語で行う一般教育科 目群がある。これらを CLIL 科目と呼んでいいのかとなると微妙である。日本語 では授業内容を理解できない学生がもともとのターゲットであり、英語で授業 を行う理由は内容の理解である。さらに、日本人学生がよりよく理解できるよ うに配慮した言語面でのサポートがない教育体系である。その1科目を日本人 学生が履修し、結果として英語力も向上したといった場合でも、CLIL と呼ぶの は避けたい。このような線引きをすることが、CLIL と CBI の違いを明確化し、 今後の研究の課題を明確化し、教育施策などにも良い影響を与えると考える。 上智大学では 2014 年度入学生から一般教育の英語科目の必修単位数を減ら したうえで、「春学期の Academic Communication 1 では、講義ノートの取 り方、ディスカッションやプレゼンテーションの技法、小論文の書き方、効果 的な情報収集の方法など、アカデミックな英語運用力を高めます。秋学期の Academic Communication 2 では、そのスキルを基に CLIL(クリル=内容言 語統合型学習)を実践し、さまざまな学術分野の内容について学びながら、語 学力を向上させ、批判的思考力を鍛え、協働力を磨き、国際的視野を広げます」 11 とのことだ。前年度までの学生と比べ、英語力にどのような違いが生じるのか、 内容面の理解はどのように評価するのかなど、2014 年度の学習成果の検証が待 たれる 12 。 立教大学経営学部国際経営学科の場合、内容面の比重が重くなる 2 年次後期 において、TOEIC の点数の伸びが一時的に鈍化する。これは内容面の理解に時 11 http://www.sophia-cler.jp(アクセス日: 2014 年 4 月 30 日) 12 上智大学における CLIL プロジェクトについては、笹島茂(編著)(2011)『CLIL 新しい発想の授業 – 理科や歴史を外国語で教える–』(三修社)113〜128 ページを参照。
  9. 9. 8 間がかかり、英語の学習という側面が弱くなるので、当然の結果だと受け止め ている。その後、経営学を英語で学ぶことに慣れるにつれ、TOEIC の点数が再 度上向きになる。いずれにしても、内容と言語の両方ともにバランスよく習得 できるようになるためには、カリキュラムの体系化が不可欠である。 また、教員の力量レベルも高くないと、CLIL は成功しない。経営学部での CLIL であればビジネス関係のことにある程度精通していないと EAP や ESP の授業 で使う教材を開発できないし、効果的な指導もできない。SSH の高校で理科と 英語の統合化を図り、理科に関する内容の CLIL 関連科目を英語で教えるとなる と、その担当者が英語教員であれば少なくとも高校生が学ぶ化学、生物、物理 の基礎知識に精通していなければならない。 さらに、専門科目を担当する教員に CLIL に対しての理解が欠けていると、こ れまた問題が発生する。「私は英語教員ではない」という変なプライドを持って いたり、外国語である英語で学生・生徒が専門分野を学ぶことの大変さを理解 していなかったりすると、英語力が比較的低く過重な負担がかかっている学生 を排除したがる傾向がある。このような問題を解消するためにも、CLIL をテー マにした FD ワークショップ等が必要であり、そのためのノウハウの蓄積も重要 な課題だ。
  10. 10. 9 2. CLIL の実践と授業研究 笹島茂(埼玉医科大学) 2.1 はじめに 2012 年 12 月上智大学にて「CLIL についての懇談会」を実施して以来、2013 年に入り CLIL の関心がより現実を帯びてきたように感じる。実際、私自身 CLIL にかかわることが多くなった。 私の研究の主領域は英語教育であり、主に英語教師の研究である。私はこれ を「言語教師認知(language teacher cognition)」(Borg, 2003)とし、大学英 語教育学会(JACET)で研究会を主宰し、その活動も活発になっており、上智 大学では「言語教師認知論」という授業も実施している。授業は、言語を教え ることや学ぶことに関する私たちが抱いているビリーフ(信念)や思い込みを 批判的に考えることを基盤として、様々な話題に及ぶ。その授業の中でも CLIL のことは話題によく取り上げられる。それだけ関心が高いということの現れで あろう。 CLIL は研究としても興味深い領域が多々ある。特に、教室活動の談話分析 (discourse analysis)は最も活発である。また、SLA の知見をもとにした言語 習得の問題でも新たな視点を投げかけている。これまでの言語習得や言語学習 研究があまり関心を持たなかった学習内容に焦点を当て、複雑な学びのメカニ ズムを言語的なアプローチからだけではなく、学ぶ内容や思考と併せて考える ようになってきた。そこが CLIL の一つの醍醐味でもある。ぜひ多くの方が CLIL に関心を持っていただき、これらの領域の研究が進むことを望む。 しかし、私の CLIL に対する主たる興味は、実践にある。ヨーロッパで外国語 教員研修などの調査をしているときに CLIL に出会った。CLIL に関する研究よ りも CLIL の実際の授業に関心を持った。発端は、2005 年に調査で英国を訪れ た頃からである。当時、ロンドンにあった CILT (the National Centre for Languages)を訪れ、話を伺い、資料を調べている際に、CLIL について知った。 どちらかと言えば、当初、LSP (Languages for Specific Purposes)と考えて いた。職業や分野に関連した言語教育と考え、ヨーロッパ市民や学生の移動を
  11. 11. 10 促進する意味で、政策の一環として実施されていると考えた。その後、フィン ランド、イタリア、スペイン、ドイツ、オーストリア、オランダなどで英語教 師と教員研修の調査を、学校に実際に訪れ、教師と話し、授業を見ることを通 して実施する中で、CLIL の授業を見た。 しかし、実際に見てみると、やはり英語で科目を教えているという枠組みで あり、「何が CLIL なのか?」という素朴な疑問がわいた。私の CLIL の研究は こうして始まったのである。その点を踏まえて、本稿を CLIL の実践と授業研究 という観点から考えてみたい。 2.2 CLIL の実践 Marsh (2002)が John Trim の次の言葉を引用している。 Function and form, action and knowledge are mutually dependent. Action without knowledge is blind, vacuous. Knowledge without action is sterile. Finding the correct balance is the key to successful learning and teaching. CLIL は英語の Content and Language Integrated Learning の略である。私 はこれを「科目内容とことばを統合した学習」と訳した。現在の訳語は「内容 言 語 統 合 型 学 習 」 が 定 着 し た よ う で あ る が 、 フ ラ ン ス 語 で は EMILE (Enseignement d une Matière par l Intégration d une Langue Etrangère) とされている。それぞれの言語では微妙にニュアンスが異なるかもしれないが、 Trim が述べるとおり、「機能と形態、行動と知識は互いに依存する」ものであ る。科目内容と言語がどのように統合されるかにはおそらく相当の議論があり、 研究が必要である。しかし、実践は学問のようにすっきりとはいかない。複雑 である。私は、CLIL の魅力はその複雑さにあると考えているので、なおさら興 味を持つのである。 そうは言っても、CLIL の指導法にも原理があり、方法論がある。現在紹介さ れている CLIL の指導法は、ヨーロッパの CLIL 推進者の知見から生まれつつあ るものであり、言語学習的に言えば、CLT (Communicative Language Teaching)に端を発し、ヴィゴツキーの社会構成主義の考えを取り入れて、認知
  12. 12. 11 学習理論や協同学習理論を参照しながら、バイリンガルやイマーション環境を 補完するようなかたちで教育環境において実施されるようになった。CLIL が推 進される背景には、もちろん EU の政策がある。CEFR が構築した言語の学習、 教授、評価の参照枠組に、科目内容の学習、さらには思考という教育アプロー チに統合したのである。 CLIL を実践するには、ヨーロッパの実践をただ追随するのではなく、また、 ある指導法や指導技術をまねて授業を展開するだけでは、おそらくうまくいか ないだろう。教育理念や実践そのものを考え直す必要性がある。言い方を換え れば、言語教師が言語理論や言語教育理論だけで言語学習を考えるだけでは限 界が見えてきたのである。「言語は道具である」とすれば反発が起こり、「言語 に対する意識が重要だ。母語の日本語でまずきちんと考えられる力を身につけ るべき」とすれば、いままでと変わらない状況が続く。逆に、「英語は必要だ」 として小学校からネイティブスピーカーに教わり、ゲームや歌などの活動で、 コミュニケーション重視で英語学習を続ければ、はたして英語が効果的に使え る人材になりえるだろうか。もう少し広く異なる観点で言語を考えてみる必要 がある。その意味から、教育そのものを CLIL という指導法をきっかけに考え直 す必要がある。つまり、CLIL 実践を考えることが大切なのである。 2.3 授業研究 CLIL 指導や教材に関するリソースはここ数年で相当に充実してきている。 CLIL に関する研究も広がり、AILA や IATEFL などの学会、毎年ヨーロッパで 開催されている CLIL 学会などで、研究や実践に関する CLIL の研究者、教師、 教師教育者などの交流の場が設定され、また、ECML (European Centre for Modern Languages)を中心に CLIL に関するプロジェクトが進行し、成果を出 している。 CLIL は、ある定型の指導方法や手順(method)ではなく、原理に基づいた様々 な指導方法や手順を総合した指導法あるいは指導方法論(methodology)である。 別の言い方をすれば、学びを広く捉えた教育(pedagogy)とも言える。そのため に実態が明確に理解しにくく、英語という言語を外国語として教える教師にと っては、外国語指導という枠組みから容易に離れられないので、誤解が生じる ことがある。また、科目を教える教師にとっても、教科内容を教える上での言
  13. 13. 12 語使用と別の言語とのバランスが理解しがたく、CLIL が混沌とした状況を作り 出すのではないかと懸念することが往々にしてある。 そのような状況では、やはり実際に学習者がどのように学んでいるのかを見 ることが重要となる。そのために日本の初等中等教育を中心に伝統的に実施さ れてきた授業研究が有効であろうと考えている。本稿では、その授業研究の手 法を CLIL の教員研修に導入し、CLIL の日本でのあり方について考察したい。 2.4 授業研究と Lesson Study 日本で実施されてきた授業研究は明治の頃に遡る。当初は、師範学校を中心と した縦社会で模範授業というかたちで提供された。戦後師範学校は廃止された が模範授業という形式は残り、多くの教師は模範授業を見て、それをまねると いうシステムが定着した。日本の教員養成システムの脆弱さを補う意味でこの 授業研究というシステムは小学校や中学校では機能してきたが、高等学校では 必ずしも効果をあげてきたわけではない。問題は、この授業研究が地域の教師 の中で行事となり、形骸化することが多くなったことにある。要するに、教師 は、明日の授業に使えそうなアイディアや教材などの表面的なことを求める傾 向になり、授業そのものを改善するという省察(reflection)(Schön, 1983) などはあまり行われるなくなったのである。 しかし、日本の中で形骸化した授業研究は、北米を中心に理科や数学教育で 注目され、Lesson Study として広がりを見せた。Lewis (2002: 1)は次のよう に説明している。 Lesson study provides an ongoing method to improve instruction based on careful observation of students and their work. 授業を注意深く見ることで、特に学習者が何を考え行動しているのかを観察す ることによって、教える内容や教え方を議論し、どのような学びが効果的であ るのかを共に考えるという実践的な面を取り入れたのである。これは日本にお いても特に初等教育における授業研究の伝統であった。その良い面を抽出して 授業観察に生かしたのである。仮説検証などの手法に基づく実証的な観点から 授業分析(classroom research)を図ろうとする試みに対して、質的で探索的な
  14. 14. 13 アプローチを取る Lesson Study が注目集めた。この Lesson Study が日本に 逆輸入され、授業の「学び」を授業研究の中で重視する動きが再認識されるよ うになってきている。 2.5 CLIL と Lesson Study Lesson Study は、いくつかの国と地域で広がりを見せている。その背景には、 日本では教員養成や研修で一般的に行われてきた研究授業(research lesson) がほとんど行われていないという実態がある。また、授業観察に関しても観察 の視点が必ずしも日本の教育環境で行われてきたものとは言えない。例えば、 日本では、教師の指導手順を見るのと同様に、生徒の学習活動を見る。また、 教師の指導のねらいが授業展開の中でどのように達成されているかに焦点を当 てることがある。マイクロティーチングがある指導内容や活動に焦点を当て、 その効果性に注目するのに対して、日本の研究授業に関しては、授業全体を多 面的に捉えて、教師自身の省察や観察した人自身の授業の省察にも及び、また、 生徒の学びをも対象にして授業や学習を振り返る。 CLIL は現在開発途上の言語学習と科目内容学習を統合した学習であり、教え ることにおいても学ぶことにおいても、より複雑な要素を含んでいる。そのた めに、多くの教師は多少懐疑的になり、今ひとつすっきりしないのである。こ れまでの教師自身の教えるあるいは学ぶ経験からすれば、例えば、英語と理科 をいっしょに学ぶということは二重の負荷であると考えるのは当然であろう。 しかし、実際にそれが可能な事例がいくつもある。「日本語と英語は言語的に遠 いので、ヨーロッパのようにはいかない」「早い段階で英語を学ぶのは日本語の 言語発達を阻害し、思考力が発達しない」というような意見も聞く。果たして 本当にそうであろうか。教師が勝手にそう思い込んでいるだけではないだろう か。これらのことに関してはどちらの側に立っても実は明確な証拠はないので ある。 CLIL に関しても、ヨーロッパでもすべてうまく行っているわけではなく、成 功例も失敗例もある。その要因は様々であり、複雑である。Coyle(2008)が主 張するように CLIL は文脈によって変化し、状況によって多様な展開があり得る。 同様のカリキュラム、指導手順、教材などを利用することで、同じような画一 的な授業が成立するとは考えないほうがよい。その多様さに対応する大切な点
  15. 15. 14 は事例の積み重ねであり、多様な知識と技能の共有であろう。その意味で Lesson Study を実施することが有効であると考えている。 Lesson Study の目的は、授業を計画し、実施し、反省するという授業実践 プロセスを、学習者の学びに焦点を当て授業を観察し、いくつかの異なる視点 から学ぶことや教えることを協同で省察し、個々の教師の教えることに対する 哲学、思い込み、思考プロセス、意思決定などの内的要因と、学習者が学ぶ目 的、目標、動機、学習者の特性や背景、学習者を取り巻く文化、教室環境など の外的要因を、総合的に考察し、授業をより効果的に実践し、学習者の学びの 質をより高めることにあると考える。CLIL の教員研修には、まさにその点が求 められているので、次に具体的にどのように CLIL 教員研修に Lesson Study を取り入れるかを検討したい。 2.6 CLIL 実践的教員研修への提案 笹島(2012)は、実践的外国語(英語)教員(PLT: Practical Language Teacher) 研修カリキュラムとして、PLT を、「学習者の求める外国語ニーズを基盤として、 学習者のために明確な目標を設定して、学習計画を作成し、学習の場面、活動、 教材などを選択し、学習の機会を与え、支援し、診断し、評価できる教員であ る」と定義して、次の4つの要件を提言している。 1. CEFR(Common European Framework of Reference for Languages) (ヨーロッパ言語共通参照枠)における CRL (Common Reference Levels)(共通参照レベル)の5技能と6レベル、あるいは、それから派生 して作成されている RLD (Reference Level Descriptor)(参照レベルデ ィスクリプター)を理解していること 2. CEFR を教育に具体的に取り入れる方法としての ELP(ヨーロッパ言語ポ ートフォリオ)の考え方を理解し、学習者の自律 (learner autonomy)を 奨励すること 3. CLIL (Content and Language Integrated Learning)(科目内容とことば を統合した学習)の理念を理解し、状況に応じて対応できること 4. LSP の理念を理解し、状況に応じて分野に特化した言語教育を提供できる こと
  16. 16. 15 教員研修の観点からは、各科目の教師が CLIL を取り入れることも考慮すること は当然であるが、言語を専門とする教師がまず CLIL を理解することが大切であ る。理由は、CLIL の成り立ちがそうであるからだ。そこで、実践的外国語教師 にとって CLIL を一つの要件とした。笹島(2012)は、これらの4つの要件に基 づいて、10 のスタンダードを示し、具体的な教員研修カリキュラムを提言して いる。 その提言では、CLIL はスタンダード6(学習段階、科目内容、分野、仕事な どのディスコースコミュニティの理解)で言及されている。つまり、英語教師 であれば、英語教師の知識と経験の中で自然にある枠組ができてしまい、自分 のディスコースコミュニティの中で思考してしまう危険性が高い。その危険性 を回避するためには、実際にそれぞれの分野がどのようになっているかを知る ことである。しかし、それは労力の要ることであり、そう簡単にできることで はない。そこで、教師としては互いに授業を見ることが最も簡便であり、効果 的であり、また、連携を図るということが重要である。 互いに授業を見るという行為は簡単であるが、意外に実施されていないとい う実態がある。理由は、やはり目標が明確ではないからであろう。どのような 目的で授業を観察し、何をポイントにどう見るかということを、明確に設定し ておく必要がある。実施の方法としては様々にあるが、CLIL の教員研修という 点を目的に一つの案を提示する。 Lesson Study 案 ̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶ 目標:英語と世界史を学ぶための効果的な CLIL 授業の開発と実践 研究授業 1:イギリスの産業革命(高校:世界史の授業) 研究授業 2:Why did the industrial revolution happen in Britain?(高校: 英語の授業) 留意点:互いの授業は「産業革命」という題材を扱うことを決めておき、それ ぞれが指導案を考え、授業をする。授業は、授業者以外にも参観し てもらい、ビデオも撮る。 授業観察:授業観察の観点を決めておく。例)英語と世界史を統合する課題、 世界史を英語で教える事のメリットとデメリット、英語で世界史を
  17. 17. 16 することのメリットとデメリット、学習者の学びへの配慮、英語と 日本語の提示、教室活動(知識内容と言語)など 授業研究:授業者は授業を振り返り、観察者は気づいた点を質問し、コメント する。指導助言者などの役割は決めず、自由な意見交換を促し、学 習者の学びに焦点を当て、科目内容としての題材と活動、その内容 に必要な英語の語彙や文法、そこで必要な学習スキルを、思考、環 境、コミュニケーションという観点から考察する。 省察と改善:上記の授業研究をもとに、次の内容について改善点を整理し、CLIL 授業の工夫を図る l 英語の題材の選択と言語的サポート l 題材の提示方法の工夫 l 英語による教師の説明と学習者の理解 l 学習活動(タスクの設定と目標) l 学習活動の成果の発表と評価 l 活動の省察と自律学習 教材例 (http://library.thinkquest.org/26026/History/results_of_the_industrial_revo.html) ̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
  18. 18. 17 2.7 CLIL 授業研究の課題 ここで紹介した CLIL 授業研究はごく一例である。授業研究の方法論を画一化 する必要もないので、様々な工夫があってしかるべきであろう。大切なことは、 学習者が科目内容と英語を効果的に学ぶことである。そのためには、これまで の英語教育の知識や経験だけにとらわれていては CLIL の良さを引き出せない。 また、ヨーロッパの CLIL を踏襲するだけではなく、日本という教育環境を考慮 する必要がある。そのためには、カリキュラムや教材開発を進める必要があり、 教員養成と研修が急務である。CLIL の理論的枠組の構築は当然必要であるが、 より実践的で社会文化に根ざしたアプローチが重要であろう。 実践は少しずつ進んでいる。課題は、多くが指摘するとおり、CLIL の多様性 という特徴にある。英語で科目内容を扱っていれば、なんでも CLIL と言えると いう危惧である。私は、それでも学習者が満足していればそれでよいと思って いる。乱暴であるが、CLIL であるか CLIL でないかはあまり問題とは思わない。 大切なことは実践である。教師がどのような意識を持って、外国語(英語)を 使って教えているのか、あるいは、学習者がどのような考えをもって授業に臨 んでいるのか、という点に注目する。CLIL は、目的ではなく、あくまで手段で ある。CLIL のポイントは、内容とことばの学習の統合である。「学び」自体は 総合的な活動であり、学習者の中でどのようにそれが相乗的に起こるのかは明 確に理解されている訳ではない。 CLIL というアプローチの中で、学習者の「学び」がどのような場合にどのよ うなことが起きるのかを探求するには、実践の中で授業研究という日本的な質 的アプローチが適切だと考える。2012 年 12 月に実施した「CLIL に関する懇 談会」の一つの目的はそこにあった。CLIL と銘打ってカリキュラムを実施する かしないかは教師の側の選択である。学習指導要領に準拠する必要のある小学 校、中学校、高等学校で、CLIL カリキュラムを実施することは、おそらく現時 点では困難である。大学では可能であるが、大学でも英語力を求め続けられる 現状では、英検、TOEIC、TOEFL などのテストを目的とした指導は主流になら ざるを得ないし、英語で授業をする、あるいは、ネイティブスピーカーによる 授業などという短絡的な発想しか生まれない。 Lesson Study は、CLIL に限らず、それらを巻き込んだ教員養成(研修)プ
  19. 19. 18 ログラムを提供できると考える。笹島・Pisker・石田・坂本・山野(2012)は、 Collaborative Lesson Study Network (http://lessonstudybihjapan. blogspot.jp)というプロジェクトを、ボスニア・ヘルツェゴビナの教員と協同で 実施している。目的は、日本とボスニア・ヘルツェゴビナの教師がインターネ ットなどを介して授業研究をすることである。異なる環境の教師が英語を媒介 として交流することにより何か新しい学びの発見があるのではないかと意図し てのことである。具体的な試みとして、ウェブを通じて授業のビデオを公開し、 Lesson Study を実施している。公開されている授業は、Sanela Halac 氏と山 野有紀氏によるもので、どちらも Sanela Halac 氏のサラエボの小学校で行われ た。当日は、この二つの授業参観後に参観者により授業研究の会を持った。同 様の目的で、インターネットを通して授業観察し授業研究を実施しようと計画 している。 インターネットなどを利用したオンラインによる Lesson Study には課題も 多いが、様々な科目内容を扱っても、英語という言語を媒介とすれば、かなり 多くの人が参加できる。言語が異なるとやはり内容が分かりづらい。また英語 という科目に限ってしまうと、交流の幅も狭まる。その点で、CLIL は教育内容 や方法においてこれまでとは異なる視点を与える可能性がある。 2.8 おわりに 私は、CLIL の魅力は実践にあると考えている。しかし、実践だけでは発展し ないので、それを支える理論が必要である。現時点では、CLIL は理論的な基盤 が確固としている指導法とは言いがたい。批判もあるし、バイリンガル教育、 イマーション、内容重視の指導法(CBI)などとの棲み分けは明確にはできていな い。その理論化の柱は4つの C (Content, Communication, Cognition, Culture/Community)であるが、これも依然として曖昧であるとの批判は否め ない。しかし、状況(context)に応じてこれら4つの C という原理に基づいて学 びが統合されるという柔軟なコンセプトは、実践を積み重ねることで発展する と考えている。ヨーロッパで注目され成果をあげている CLIL は、私個人として の教師経験から魅力と可能性を感じる。模倣するだけではおそらくうまくいか ないとも感じる。そのためには、CLIL の実践を研究者と教師が互いに共有し、 Lesson Study という場を通じて、外国語(英語)を効果的に学びながら、か
  20. 20. 19 つ、様々な科目内容の知識や思考を身につけるという統合的な学習アプローチ を、言語学習という枠組みだけではなく、多様な分野の学習を取り入れること で、いままでの伝統とは違う教育を展開させる必要性があるだろう。それは、 おそらく今日文部科学省が推進しようとするグローバル人材の育成につながる だろう。 引用文献 Borg, S. (2003). Teacher cognition in language teaching: A review of research on what language teachers think, know, believe, and do. Language Teaching, 36 (2). pp. 81-109. Marsh, D. (2002). CLIL/EMILE ‒ The European Dimension: Actions, Trends and Foresight Potential. Bruxelles: The European Union. Schön, D. (1983). The reflective practitioner. New York: Basic Books. Lewis, D. (2002). Lesson Study: A Handbook for Teacher-Led Improvement of Instruction. Philadelphia: Research for Better Schools. 笹島茂. (2012). はじめに. JACET 言語教師認知研究会研究集録 2012. Language Teacher Cognition Research Bulletin 2012. i ‒ ix. (2013 年 7 月 21 日 ) https://www.box.com/shared/static/sjdt44nma9l67 x5rljxz.pdf. 笹島茂, Lydia Pisker, 石田真子, 坂本篤志, 山野有紀. (2012). Lesson Study in INSET between BiH and Japan ‒ The Japan Foundation Project of Human Resources Development for Implementing International Exchange 2012. (2013 年 7 月 21 日) https://www.box.com/shared/static/ 4wdwlr8k9mvaq8w5qqjx.pdf.
  21. 21. 20 3. 授業実践にもとづく CLIL CLIL の授業実践の事例はまだ多くはない。ここに掲載した内容は、ヨーロッ パ的な CLIL 実践からすると、厳密に言えば、CLIL とは言えないかもしれない。 しかし、CLIL は多様であることが特徴である。CLIL とは言わなくても、CLIL 的であるかもしれない。CLIL であるかどうかはそれほど重要ではなく、学習者 がその学習をどう考えるかが重要であろう。 その意味から、ここでの CLIL 実践は今後の日本における CLIL の方向性を示 すものと期待される。この実践をステップとして、CLIL の輪が広がることを期 待する。
  22. 22. 21 3.1 和光国際高校外国語科での CLIL 実践の可能性 山崎 勝(埼玉県立和光国際高等学校) 3.1.1 はじめに 筆者は、勤務校の外国語科2年生の「異文化理解」の授業において、global issues を扱った CLIL の授業を 2011 年度より開始し、今年度で3年目を迎え た。本稿では、これまでの経験に基づき、日本の高校の英語の授業における CLIL 実践の可能性について論ずる。 3.1.2 「4つの C」を念頭に置いた授業づくり 「4つの C」とは、Content(内容)・Communication(言語)・Cognition (思考)・Community(協学)の4つを指し、CLIL を実践する上で使われるフ レームワークである。このフレームワークを念頭に、どのように授業を設計し ていくことが可能かを以下に検討していく。 (1) Content(内容) Content とは、題材内容のことなので、一番、中心となる教材は、「コミュニ ケーション英語Ⅰ」など、当該科目で採用している教科書の本文であろう。た だし、授業の目的は、「教科書を教える」ことではなく、「教科書で教える」こ となので、CLIL の授業での教材は教科書に限定されるものではない。教師は、 授業の素材の選定にあたっては創造的でありたいものである。教師用指導書に 載っている背景知識的な情報も活用できるであろう。教科書に関連した補助教 材をインターネットや書籍、英字新聞などに求めることもできるだろう。さら に、教材になりうるのは文字テキストばかりではない。写真などの画像や、 YouTube などの映像、グラフ・図表・地図なども利用できる。様々なタイプの 教材により豊かなインプットを与えることが、やがては豊かなアウトプットに つながっていくのである。CLIL の授業が生徒の意欲的な学びにつながっていく のは、Content の魅力に負うところが大きい。
  23. 23. 22 (2) Communication(言語) Communication とは言語面の指導を指すので、CLIL の授業において英語の 指導をどうするかという領域である。CLIL では、中核となる考え方として「4 つの C」のようなフレームワークは示されているが、具体的な指導法や授業の 手順については、特定の教授法が推奨されているわけではない。その意味では CLIL はたいへん柔軟で自由である。しかし、柔軟で自由であるがゆえに、CLIL 初心者にとっては、どのように始めたらよいのかがわかりにくいというのも事 実である。授業者としては自分自身の指導法や授業手順を持たなければ授業を 設計できないのだが、CLIL が教授法を明示していないということは、従来から ある様々な教授法と融合が可能だということである。 筆者の場合には、筆者が長年実践してきた Oral Method との融合を試みた。 CLIL は Content and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習) であるから、ここでの主眼は、授業の素材として用意した豊富な Content と英 語をどう統合させるかということである。これには、Oral Method の授業でよ く行われる Oral Introduction や Story Retelling の指導が有効である。Oral Introduction は、題材の概要について教師と生徒が口頭で interactive なやり 取りをするもので、dialogic な teacher talk である。interaction を重視して いるので、CLIL が提唱する dialogic という方向性と一致する。言語材料の導入 に重点を置いている場合は、Focus on form の実践である。つまり、CLIL で 推奨されているこれらの考え方は、日本の土壌で育った従来の指導法の中でも 長年、実践されてきており、目新しいものではない。 (3) Cognition(思考) 従来の英語の授業で不十分だったのは、この領域ではないかと思う。「内容」 と「言語」の統合までは、広く行われており、具体的な指導法も確立されてい たが、授業のゴールが、Story Retelling や Summary Writing であることが多 かったように思う。Cognition(思考)としては、自分の意見を一言か二言、加 えて述べる程度の実践が多かったのではないだろうか。その意味で、CLIL がそ のフレームワークの中に Cognition(思考)を明示したことは、日本の英語教 育に対しても明確なメッセージとして伝わることと思う。つまり、「内容」「言 語」に加えて、「思考」も統合しなさい、ということである。
  24. 24. 23 (4) Community(協学) 従来の英語の授業ではこの領域も不十分であったと思う。従来、普及してい た教授法の多くは教師主導の一斉指導が中心であったので、生徒同士の活動に ついては、研究の余地が多いと思う。従来からペアワークやグループワークは 実践されていたが、必ずしも成功例ばかりではない。例えば、「内容」と「言語」 が統合されていない状態で、生徒同士の活動を行っても、英語で活動が成立す るのは困難である。また、「思考」という発想を伴わない生徒同士の活動は、一 見、活発に見えても実態は、機械的なドリルやゲームの域を出ないものであっ たかもしれない。その意味で、CLIL がそのフレームワークの中に Community (協学)を明記した意味は大きいと思う。他の3つの C と統合した内容で生徒 同士の活動を行うことを推奨する、というメッセージである。つまり、学習し た「内容」について、「思考」を伴った「話し合い」を「英語」で行いなさい、 ということである。昨今、注目を集めている「協調学習」なども、英語の授業 においては、CLIL の Community(協学)の活動の一つの形態として実践が可 能であろうと筆者は考えている。 (5) 「4つの C」の統合に向けて 他の3つの C と統合された内容で、Community(協学)の領域が英語でで きるようになることが、英語の授業で行う CLIL のゴールであろうと筆者は考え ている。そこに至るための scaffolding(足場)として筆者が現在取り組んでい る方策は次の3つである。 ① 双方向プレゼンテーション(interaction) 質疑を交えた発表を行い、発表者と聴衆の間で何往復かのやり取りを行う。 準備のない、その場での interaction の経験を積ませる。 ② 30秒スピーチ(fluency) 既習の題材について30秒間、話し続ける。interaction を継続するために は、英語が口からたくさん出てくるよう fluency を訓練する。 ③ 言い換え表現(paraphrasing) interaction を継続するためには、自分が運用可能な表現に言い換えて発言 を続けることが必要である。英英辞典の使用を推奨し、ハンドアウトでも 平易な英語で語義を与え、説明の際に活用させる。
  25. 25. 24 3.1.3 CLIL のバリエーション 高校の英語の授業に CLIL を導入する場合、強形 CLIL(Strong CLIL)と弱形 CLIL(Weak CLIL)の2つのバリエーションが考えられる。 (1) 強形 CLIL(Strong CLIL) CLIL では、教科内容の学習と言語の学習の割合を1:1にするのがよいとさ れている。「教科内容」と「言語」を対等に扱う CLIL を強形の CLIL と呼ぶ。 外国語科等の専門科目である「異文化理解」や「時事英語」、その他、学校独自 の設定科目であれば、強形の CLIL が適していると思う。筆者の場合も「異文化 理解」という科目で、内容としては global issues を扱ってきたが、教材の配列 は、個々の global issues が並んでいるので、「言語」の学習と共に、「内容」の 学習が対等な目的となっている。「教科内容を英語で学ぶ」ことが目的となるの で、「教科内容」は「言語材料」を学ぶための単なる手段ではない。高校2年生 以上で、すでに1年次に「総合英語科目」を履修しており、生徒の英語力が平 均して英検2級程度以上であれば、「内容」と「言語」の学習を同時並行させる ことは可能であり、生徒の学習をより促進させるために有効な方法である。 (2) 弱形 CLIL(Weak CLIL) 一方、「英語Ⅰ」や「コミュニケーション英語Ⅰ」で CLIL を導入する場合は どうであろうか。これらの科目の目的は英語の基礎に生徒を習熟させることで ある。教科書の題材にも内容が豊かで魅力的なものが多数取り上げられている。 global issues の授業で扱うような「環境問題」や「人権問題」は、検定教科書 にも登場する。しかし、検定教科書を使った授業の性格は若干異なるものにな る。global issues の授業であれば、global warming を学ぶこと自体が目的の 一部である。しかし「コミュニケーション英語Ⅰ」で global warming が取り 上げられている場合は、事情が異なる。多くの場合、「地球温暖化」を学ぶため にその教科書が採用されたわけではない。題材が環境問題である必然性はなく、 教 師の関心事は、教材の英語の語彙や難易度であり、目的の重点は、新語をたく さん覚えることであったり、長文が読めるようになることだったりする。つま
  26. 26. 25 り、内容と言語の割合は1:1ではなく、重点は言語の方にあり、題材は言語 を学ぶための手段である。このような、言語に重点がある科目に CLIL 的な要素 を加味する授業を弱形の CLIL と呼ぶ。「コミュニケーション英語Ⅰ」のような 科目で CLIL を導入する場合は、弱形の CLIL が現実的である。 3.1.4 CLIL 的な授業のすすめ 日本の高校の英語の授業の現状では、強形の CLIL を導入できるのは、少数の 科目に限られるので、多くの授業で実践の可能性があるのは弱形の CLIL である。 現在の授業に CLIL 的な要素を加味して、CLIL 的な授業に変えていくことは可 能であろう。具体的には、冒頭で述べた「4つの C」を念頭に置いて、その統 合を意識して授業の構成を見直してみることができる。年間指導計画を立てる 際に、「題材」シラバス、「言語材料」シラバスに加えて、Cognition と Community についても、どのレッスンでどんなことを行うのかを計画しておくことはでき るだろう。時間の制約もあるので、レッスンによって扱う内容の軽重をつける 必要もあろう。以下に具体的に見ていく。 (1) Content(内容) 教科書の本文に加えて、何らかの興味深い素材をもう1つくらい足してみる。 インターネットから入手した関連した文章でもよいし、画像や図表、YouTube の動画でもよい。 (2) Communication(言語) 学習した題材内容について、生徒の英語の使用が増えることを目指す。授業 の成果として生徒の口から、日本語ではなくて英語が出てくるように活動を組 み立てる。 (3) Cognition(思考) 教科書のタスクや教師用指導書も参考に、題材に応じた思考を要するタスク を用意する。 (4) Community(協学) どのような形態の協同学習を経て、どんな発表を行わせるのかを、題材に応 じて計画する。 「4つの C」が有機的に結びついて授業が構成されていくようになれば、「英
  27. 27. 26 語」の授業としても、大きく質的に向上することになるだろう。CLIL 的な授業 にはそのような可能性があると筆者は信じている。
  28. 28. 27 3.2 川越女子高校での教科間連携と CLIL 鈴木誠(埼玉県立南陵高等学校) 佐藤ひな子(埼玉県立川越女子高等学校) 3.2.1 川越女子高校の SSH と教科間連携 本校(筆者(鈴木)前任校)のスーパーサイエンススクール(SSH)事業は 導入から8年になる。その柱の1つが教科間連携である。下図は本校の SSH 事 業の取り組みをイメージしたものである。 研究開発の概念図
  29. 29. 28 本校 SSH に教科間連携におけるねらいは、教科の枠を超えて、関連性に気づ かせ、一見異なる分野や科目観をつなげ、結果として、生徒自身が統合的に学 ぼうとする力を育成することにある。そのため、理科科目に限らず全教科にわ たって包括的に連携を展開しようとしている。実践例は実に多様で、2012 年だ けでのべ 130 の連携授業が行われた。 2012 年の教科間連携のリスト(一部抜粋) 教 科 科 目 学 年 時期 連 携 相 手 テーマ 内容 実施者 芸 術 書 道 1 9 ∼ 12 月 音 楽 書道授業時 の音楽によ る 集 中 向 上。 授業時に音楽のクラシックから現代の音 楽まで、金井先生に集中できそうな音楽 を選んでいただき、授業中に流す。その 都度アンケートを実施し、生徒に回答さ せる。 略 家 庭 家 庭 基 礎 1 7 ∼ 9月 情 報 栄養と食品 1 日の食事を栄養計算ソフトを使って分 析し、望ましい食生活について考える。 略 保 健 体 育 保 健 1 4 ∼ 5 月 生 物 精神の健康 (心身の相 関とストレ ス) 欲求不満やストレスが生じたときに分泌 されるホルモンや、それを解消しようと 心がける時に分泌させる脳内ホルモンに ついて詳しく学ぶ。 略 公 民 公 民 1 数 学 金融のしく み 金融に関する説明には数学での知識が不 可欠である。中心となる数列は2年次に 学習する内容だが、1年生にもわかるい ような資料を数学科で作成し、理解の補 助とするする。 略 理 科 地 学 2 5 . 6月 英 語 火星のテラ フォーミン グ、探査に ついて 2年Rの授業に出向いて、Rの授業中に 火星に関するプレゼンテーションを行う 略 理 科 SS 生 科 位 置 1 9 月 英 語 ジェーン・ グドール博 士のチンパ ンジー研究 担当教員集団で打ち合わせをし、チンパ ンジー研究者としてのジェーン・グドー ルもしくは彼女が進めた類人猿研究に関 し、SS生命科学Ⅰの授業内に関連授業 を行う。 略
  30. 30. 29 3.2.2 教科間連携における CLIL の可能性 教科間連携(上表)のうち、外国語の授業と他教科とを組み合わせた授業で あれば、CLIL の理念と通ずるものがあるのではないだろうかという思いから、 英語と他教科を組み合わせた授業(CLIL 型授業)を模索してみた。まずは、実 際に行った CLIL 型授業の紹介である。(以下の例を参照) 教科間連携授業(CLIL 型授業)例(「CLIL 新しい授業の発想」(三修社)第 4 章より抜粋) *日時:平成21年6月2日(火) 第1時限(8:45∼9:35) *指導クラス:普通科1学年3組 *対象生徒:女子41名 *トピック:細胞(Surface area and volume)・拡散(Diffusion) 多細胞生物の細胞の大きさと機能について、アメーバと像の細胞の表面積と 体積とを比較しながら理解する。さらに diffusion(拡散)の機能についても 知る。 補助教材として「Senior Biology and 1 Student Workbook 2008」 (BIOZONE 出版)より p.123-124 の Surface area and volume を生徒の実 情に合わせ、一部かえて活用しました。 (参考資料)生徒は4月より「生物Ⅰ」の教科書を学びはじめています。本教 材は、生物の基本単位である細胞が、生物個体の大きさにかかわらず、数μm ∼数十μm と小さいのはなぜかについて、細胞の代謝を支える細胞内外の物質 輸送と関連づけて説明しています。相似形の立方体で比較すると、大きくなれ ばなるほど単位体積あたりの表面積が小さくなり、栄養分等の輸送が困難にな っていくことが、どの生物の細胞もある程度の小サイズである理由としてあげ られます。彼女たちは4月に細胞について学び、観察実験を通じて動植物の細 胞を観察しています。生物が細胞という共通のユニットから成ることは理解し ており、また「細胞膜の構造」と「細胞膜をまたいだ物質の輸送」は学習済み でした。しかし、光合成や呼吸といった細胞レベルでの代謝は「生物Ⅱ」に含 まれるため、「生物が生きるためのエネルギーや物質を生産、または分解する ために細胞の中、または細胞膜をまたいで物質が移動する必要があること」を
  31. 31. 30 理解させる必要がありました。 *言語材料 glucose / goldibody / ribosome / nucleus / size cell / red blood cell / surface area / volume / multi cellar organism (creature) / diffusion / 2 times 2 times 2 makes 8 cubic centimeters *学習形態 講義、ペアワーク、ワークシート書き込み *指導手順 1時間(50分)の授業展開は次の通りです。 1) Greeting & Attendance check あいさつ、出席確認 2) Introduction 導入 3) Presentation of today s main topic 本授業のテーマの提示 4) Pair work ペアワーク 5) Explanation & discussion 講義とディスカッション 6) Wrap up まとめ 1) 本題に入る前に、2人の教員による英語でのあいさつ、そして本授業の目的 の説明から始まりました。まず、佐藤が Hello, everyone. と語りかけ、続 けて生物を英語で学ぶ意義について説明しました。次に鈴木が、Hello. I was not good at science at school, but today I will start over biology with you. と話しかけました。生徒は2人の教員の英語でのあいさつに目を輝か せて耳をかたむけていました。 Are you ready? のかけ声に Yes! と手を挙 げて反応しました。 2) 次に、オーラル・イントロダクションとして、扱うトピックについて2人の ダイアーグを生徒達に聞かせました。ここでは、2人の教員による Small Talk を聞かせ、授業で扱う題材を導入しました。既習の「細胞のしくみ」に ついて佐藤が Do you remember what you learned last time? What did you learn? What was the topic? と問いかけると、全員から Cell と答え が返ってきた。鈴木は、 What is cell in Japanese? と聞くと、すかさず
  32. 32. 31 「細胞」と答えが返ってきました。さらに佐藤が We looked at the cell structure- how ribosome, goldibody, and nucleus work inside the body of an animal. How does goldibody work in the cell? How does mitchondorion work in the cell? と問いかけていきました。佐藤が生徒の 様子をうかがっていると、数名が「酸素、グルコース?」と前回習ったこと を日本語で答えました。その発言を拾って佐藤は、次のように説明を加えま した。 Yes. A mitchondorion can make energy to live by using oxygen and glucose. So, mitchondorion is waiting for oxygen and glucose. なお、本授業の前に佐藤より細胞の組織の英語表現についてハンドアウトを あらかじめ配り、言い方を学習していた生徒は glucose や oxygen といった 用語にも反応していました。 3) ここから、本授業で扱うテーマ(細胞の大きさ)の提示になります。鈴木 が O.K. You have learned what the function of cell is. Now today s topic is the size of cell. と本題について切り出しました。そこで Visual Aids である象とアメーバの図を示して、I believe you already know about the size of some kinds of cells. Let me give you an example. How large is red blood cell? と聞いていきます。これは既習済みなので全体で 5 ナノ meters と答えが返ってきました。他にいくつかの細胞の大きさについて、 How large is a mouth cell? How large is an amoeba?と問いかけながら 生徒の答えを引き出していきました。例えば、象の細胞の大きさを聞くとき は次のように展開しました。 4) 佐藤: O.K. what about this? How large is a cell in an elephant? 鈴木: I ll give you five choices. Guess which is correct. Choices are: A. 5 ㎛ B. 50 ㎛ C. 500 ㎛ D. 5 mm E. 5 cm 佐藤:The answer is B. Remember that cell size is very small. Multi cellar organism including us human beings have as small cells as single cellar organisms such as amoeba. 次に佐藤は、キューブ形の細胞モデル(1辺2cm の立方体とそれが8個合わさ
  33. 33. 32 った立方体)を貼りました。2人の small talk が続きます。 佐藤:(2つのキューブ状の細胞をみせて)Now look at this. 鈴木: They look like cubes. 佐藤: Yes, they are. This cube shows a model of cell. 鈴木: O.K. I understand this is just an example of cells of different sizes. This area shows surface area or 表面積 and this whole thing is volume or 堆積. Is that right, Hinako sensei? 佐藤: That s right. Why don t we say the words? 鈴木: O.K. Now, class, repeat after me. Surface area . (生徒が繰り返す) Volume . (生徒が繰り返す) 佐藤: Good. Once again, let s look at the surface area and volume. 5) 次の展開は生徒のペアワークです。細胞の大きさとその意味・役割について 理解させるために下のワークシートの計算式を埋めさせます。ここで計算式 の言い表し方(2 times 2 times 2 makes eight.など)を練習します。表の 記入が終わったら、ペアで答え合わせをさせ、さらに計算式も英語で言い合 うように指示します。その後、鈴木が全体での答え合わせを一斉にさせます。 佐藤は計算式から何が読み取れるかを生徒たちに問いかけます。この場面は 日本語でききます。数名の生徒が「キューブが大きいほど表面積は小さくな る」と答えたところで、生物教員が英語でその発言を英語で言い換えます。 展開の一部を紹介します。 佐藤:How big is each cube? 鈴木: Let s calculate how big each one is. First, let s look at the surface area of this cube. 2cm times 2 cm times 6cm makes 24 ㎠. Repeat Cube size Surface area volume Surface area to volume ration 2cm cube 2 2 6=24 ㎠ 2 2 2=8 ㎤ 24 to 8 = 3:1 3cm cube 4cm cube 5cm cube
  34. 34. 33 after me. (生徒が繰り返す) For the volume of this cube, 2 times 2 times 2 makes 8 ㎤. Repeat. (生徒が繰り返す)…. 佐藤: The volume of both one large cube and eight small cubes is exactly the same. But what about the surface area? Now, let s try to complete the table in your worksheet and compare it with your friends. 6) 次の場面は生物教員による講義が主な流れとなります。再び、像の図とアメ ーバの図を比べながら、多細胞生物は、アメーバのもつ細胞と同じ小さな細 胞を有しており、細胞同士が表面積を介して栄養分を運搬しあっているとい った内容を説明します。ここで初めて diffusion(拡散)という本時のキーワー ドになる専門用語を提示します。さらに全体に diffusion はなぜ細胞にとっ て効果的なのか問いかけます。ここも英語では答えるのが難しいので、日本 語でききます。英語で説明した個所は次の通りです。 佐藤:You have learned from the chart that when the cell is smaller, the surface area is bigger compared to the bigger cells. And if the cell is smaller and the surface is smaller, diffusion will be effective. 7) 最後の場面は、2人の教員の Small Talk で終わります。英語教員が本授業 で学んだことを繰りかえし、生物教員がそれに応え、人体の細胞も 「diffusion(拡散)」によって栄養分が効率よく運搬されるなどうまく機能し ていることを付け加えて終わります。 鈴木:Hinako sensei, I have learned that the size of cell of multi cellar organisms have small in size no matter how large the bodies are. 佐藤: Yes. That s the mystery of cells. Inside our body as well, many kinds of cells function well so that diffusion will work efficiently. 以上が本校で初めて行った CLIL 型の教科間連携授業である。その後、生物科 の佐藤と英語科の他の教員と同様の授業を行った。また、英語科の鈴木は、別
  35. 35. 34 のクラスで他の生物科の教員と「遺伝」について同様の授業を行った。どの授 業も既習事項の復習と発展学習を 50 分かけて行ったわけだが、日本語で行えば 15 分∼20 分で済むものであった。しかし、外国語で進めることの負荷を考え れば当然であろう。このあたりは、CLIL 型授業を考える上での課題であるが、 最後に「他教科からみた CLIL」にまとめた。 3.2.3 次の教科間連携授業に向けて―実践可能な CLIL 型授業展開例 本校の教科間連携の授業では、CLIL 型授業というのは上記で紹介したものだ けである。英語と他教科を組み合わせた授業展開はいくつかあったが、説明や 指示はすべて日本語で行われる形式であった。ほとんどの進め方がゲストティ ーチャーとして連携教科の教師を英語の授業に招き、レッスンで扱った内容に ついて専門的な話を日本語でしてもらうというものであった。例えば英語のレ ッスンで Mars の話を扱った際、地学の教師が火星の特徴についてスライドを 用意し説明してくれた授業があった。 また、英国の Seed bank を扱ったレッスンでは生物科の佐藤が、学校周辺で みられる生物多様性と自然淘汰について画像を示しながら、生徒を起立させ、 簡単なアクティビティを交えてワークショップを行った。この授業展開では一 部、英語科鈴木と簡単な英語でやりとりを進めて行った場面もある。しかし、 打ち合わせの時間が足りず、最初の small talk だけで終わってしまった。振り 返ってみると、この授業には、CLIL 型授業展開ができる可能性を含んでおり、 実践できなかったことが悔やまれた。資料 のようなパワーポイントで作成し た画像には、個人やペアで考える問いを盛りこんだり、立ったり座ったりと生 徒の身体的なリアクションを求めたり、教員の一方的な説明に終らないように 工夫をした。内容に焦点を当てつつ、英語でのやりとりもスムーズにできるよ うに思う。 そこで、この「生物多様性」をテーマにした CLIL 型授業を今後の実践を念頭 において以下の通り、考えてみた。 *目的:英語の授業で扱った Seed Bank についてのトピックをベースに生物多 様性について考える機会を提供する。 *連携教科:生物科
  36. 36. 35 *授業形式:ティームティーチング *使用教材:パワーポイントソフトで作成したスライド(資料) *指導手順: B= Biology teacher E=English teacher (1)Introduction 導入 川越女子高校周辺でみられる生物多様性を考えさせる。<スライド5> B: Now, class. There are many different species in and around this school. Take a moment in a pair to talk about what you see and have seen. E: Has anybody seen this?(スライドの鳥や動物を指しながら)Ms. Sato, what is this bird called? Have you seen it? B: Yes. I have seen all of these birds, animals, reptiles… This is mukudori or starling. This is hiyodori or bulbul. This is crow nesting on fir trees. Some are very rare species that happened to get into this school. I have even seen Japanese rat snakes. I hear from other biology teachers a raccoon dog took to the basement of the lecture hall. (2)Presentation of today s main topic 本授業のテーマの提示 <①スライド6> アメリカの海岸で行った生態系の実験を紹介。捕食者のヒトデとヒトデに食べ られる貝の関係を考えさせ、ヒトデを生態系から取り除いたらどうなるのかを 問う。 B: O.K. Next slide. This is a very interesting experiment conducted on the seashore in the U.S.A. You see many different seashells like hizaragai, kasagai, makigai, and fujitsubo and their predator, starfish. Starfish is their greatest predator that eats most seashells on the rocks. What would happen if we cleared all the starfish on the rocks? E: I guess there would be a peaceful environment for seashells without the predators. Class, what do you think? Discuss in pair. B: Do you think the seashells are all safe and their population would
  37. 37. 36 increase? Raise your hands if you think so. E: Most of you feel the same way as I do. B: The truth is these two kinds hizaragai and kasagai all disappeared. Why is that? After starfish were cleared, fujitsubo and kamenote propagated. The balance of biodiversity that involves starfish collapsed, and resulted in the number of species decreasing. Fujitsubo and kamenote settle down on the rocks without moving like other seashells. On the other hand, Hizaragai and Kasagai, which move from place to place couldn t find their places to settle. This led to their disappearance. Like this example the balance of species is complicated and hard to imagine what would survive and what would disappear when one species increases or decreases. <②スライド7> E: This slide shows how the interaction works between species including us humans. B: Yes. I want you to think about what would happen if you cleared cockroaches from the earth? E: Who don t like cockroaches? (手を挙げさせる) B: As you may imagine, the balance of biodiversity will collapse like the example I showed above. <③スライド8> B: Next, let s think about evolution. Let s stand up. Imagine you are all my daughters. That s too many, though. There are many different people who have unique characters. You have grown up and had a comfortable life so far. But, all of a sudden the environment has shifted to the one where only green peas grow on earth. Among those of you who cannot eat green peas, you won t survive. Sit down. E: Wow. The number has shrunk. It s such a big decrease. B: After a while dinosaurs like T-Rex have appeared. They are all flesh eaters. You have to run and escape. Now, who has little confidence in
  38. 38. 37 running fast? Raise your hands. Sit down. E: Oh, it s a shame. Only five of you have survived. B: Now what do you think if these five girls who have survived give birth to children under this environment? There may be a group of humans who can run fast. They may be new different types. (3)Wrap up まとめ E: I have learned a lot today. I hope you did, too. Now I want you to write about what you learned today. On your notebook, write down what the biodiversity on earth will be like in 100 years. How and to what extent do you think it will be changed? 3.2.4 他教科から見た CLIL 著者のひとり、佐藤は高校理科・生物の教員である。英語科鈴木とともに CLIL 型授業を行った経験から、英語科以外の教員として考えた課題を挙げたい。 課題1 この授業は英語なのか?教科なのか? 英語という科目は、英語を用いる技術を習得する学問であるから、何かしら の英語以外の内容を英語という言語で扱っている。つまり普段から題材を用い て英語力を鍛えていることになる。CLIL で扱う他科目の内容は、既習の場合も、 今後学ぼうとしている内容、の場合もあり得る。 もし、CLIL で「今、日本語で学習中の教科」を英語で学ぶ場合には、これが 教科の学力達成を目指した授業なのか、英語力の向上を目指した授業なのか、 というジレンマが生じる。実際、我々が CLIL で「今まさに学ばせたい生物の内 容」を CLIL 授業に盛り込んだ際には、英語科として学ばせたいことと、教科と して伝えたいもの、理解してほしいもの、が当然異なるため、双方の学びの目 的をどのようなバランスでどの程度盛り込むか、をよく議論する必要が生じて くる。限られた時間の中で、2 人の人間が異なる目的を果たそうとするため、時 間がかかることが予想される)。理科に関連した CLIL 授業を理科の授業内で行 うのか、それとも英語の授業の中で行うか、など選択肢が複数ある分、扱いに かえって悩んでしまう。
  39. 39. 38 また科目の理解、のためには英語で、学ぶ必要はなく、むしろ英語で学ぶこ とで学習が滞る生徒も多くなる。日本語で学ぶ方が理解しやすい生徒は多いの は間違いないため、英語以外の教科にとっては「なぜ、英語で教科を学ぶのか」 について、これまでにはない「英語で他教科を学ぶことの価値が必要となって くる。 これらを統合すると、「専門科目を英語で教えるための時間」が別に設置され ている、もしくは、「専門科目を英語で教えることの生徒にとっての価値」が教 員集団の中に確立していること、が CLIL 授業の前提として必要とされる。 課題2 Team teaching で実施する意義はあるか? Team teaching 式の授業は生徒に大変好意的に受け取られており、教科間連 携の目的に照らし有効な手段であるため、本校でもしばしば実施されてきてい る。しかし、授業1コマ(本校では 65 分である)分の TT の事前の打ち合わせ には時間がかかる。さらに双方異なる視点を持つ英語と他教科の教員同士で打 ち合わせをするとなると、さらに時間がかかることが予想される。 そのため、専門教科の復習(たとえば中学校の内容を高校の英語の時間に CLIL で実施するなど)を、英語の教員のみで実施する、または専門科目の教員が授 業の一部(たとえば 65 分授業のうちの 10 分∼15 分間)に訪れ英語で CLIL 授業に加わる、などの方が現実的であろう。 課題3 他教科の教員の英語力は重要か? もし、他教科の教員が単独で CLIL を実施する場合には当然かなりの英語力が 必要だが現在の教員養成システムでは現実的ではない。(日本教育界での CLIL の価値が定まり、英語力のある他教科教員の養成に力を入れるようになれば、 採用試験もおのずと CLIL に適した形に変わるだろう) TT で CLIL を実施する場合も、65 分では他教科の教員にとっては長いし、実 際にこうした TT を日常的に実施することは不可能に近いことから、1授業の一 部(15 分間程度)を、専門科目の教員が訪問し、授業を展開することを考えて みる。15 分間であれば、これまで学んだ英語を用いて、さほど言語の正確性に はこだわらなければ、英語教員(メインのインストラクター)と授業を展開す ることは技術的には難しいことであるとは思えない。 むしろ課題は、教員の心理的なハードルである。日本人特有の羞恥心や控え
  40. 40. 39 目な性格から、こうした授業を「余計なこと」「英語の教員の前で誤った文法を 用いるわけにはいかない」躊躇する教員は多いであろう。そのため、実際には さほど英語を学ぶ必要性があるとは思うが、他教科教員が英語を用いて生徒に 接する前には、自身の自信を増すための、英語の学習や、専用の講習、研修が 必要であるかもしれない。 資料 スライド1 スライド2
  41. 41. 40 スライド3 スライド4 スライド5
  42. 42. 41 スライド6 スライド7 スライド8
  43. 43. 42 3.3 CLIL による SSH 科学英語指導−CLIL 指導実践報告 2010 年∼2013 年− 三上正弘(千葉県立長生高等学校) 2010 年に「海外で、科学分野で、活躍できる人材の育成」(海外で、個人や グループで、それぞれが行った科学研究を英語で発表し、報告書を書くことが できる高校生)をめざして、SSH指定校の認可を受け、2009年よりAll English による英語指導をはじめていたが、「科学英語」の指導にも挑戦することになっ た。しかし、県立高校として、「旧学習指導要領で定められた英語の科目」に更 に「科学英語」(2時間程度)という学校設定科目を加えるのは無理であり、ま た、どのように「科学英語」を指導するための教材や指導法と指導内容を検討 しなければならなかった。この2つの問題に対応するために「CLIL による科学 英語指導」に挑戦することになった。 3.3.1 学校設定科目「SSC I・II・III」 まず、SSHコース(普通科・理数科の希望者)にSSH「科学英語」を指 導するために、第1学年「OCI」(2単位)と第2・3学年「ライテイング」(2 単位)を学校設定科目「SSC I・II・III」に変更した。 「SSC I・II・III」では、下記のように「OCI」と「ライテイング」をSSHコ ース以外の生徒と同じように学習しながら、CLIL による「科学英語」を学習さ せることにした。2年次は「海外でできる科学研究発表」と「科学研究レポー トの作成」の指導もあるので1単位(1時間)増加することにした。 学年 科目 指 導 内 容 単位(時間) 1年 SSCI CLIL 科学英語 プレゼンテーション実技指導 OCI 2単位 2年 SSCII CLIL 科学英語 科学研究プレゼンテーション実技指導 レポート作成指導 ライテイング 3単位 3年 SSCIII CLIL 科学英語 理系大学入試問題 ライテイング 2単位 実際に学校設定科目「SSCI・II・III」の中で、CLIL による「科学英語」の指導
  44. 44. 43 は12時間、プレゼンテーション実技指導は6時間、レポート作成指導は4時 間であった。しかしこれらの指導にあたっては、授業外の個人指導や個人指導 時間も指導上重要であった。 (1)「CLIL科学英語」指導 CLIL による科学英語の指導では、生物・化学・物理・地学など理科と数学の 既習内容を外国のテキストを使って英語で再学習させることにした。2012 年度、それぞれの学年で実施した「科学英語」指導内容は以下の通りである。 2012 年度 CLIL 科学英語指導 重要項目 (1)CLIL Math English 指導 第 1 学年 2次方程式 数学思考 2時間 第 2 学年 図形 数学英語 2時間 (2)Math English Text 検討および決定 Content and support series Mathematics (Oxford University Press) (3)Science English 指導 第1学年 Chemistry 3.01 Elements, Compounds, and Mixtures 3.02 Solids, Liquids, and Gases General General 1.01 Doing an investigation 1.02 Investigating further 第2学年 Physics 4.13 Balanced and unbalanced force 4.17 Energy 4.18 Energy on the move 4.19 More energy on the move 4.20 Supplying the energy 4.21 How the world gets its energy 第3学年 国 立 ・ 私 立 理系大学 入試問題 視覚と聴覚(信州大学 2007)バイオミメテイクス(釧路公立大 2008)体内の脂肪燃焼(鹿児島大 2008)ネッカーキューブと知覚 (専修大 2010) 潮力発電(金沢工業大 2011) フラバノール (成蹊大 2011)相関関係と因果関係 (電気通信大 2011)睡眠 の役割(三重大 2011)等
  45. 45. 44 (2)「英語による科学研究 Presentation」指導 Speech、Explanation Debate などの Communication 指導のほかに、個 人・グループ Presentation などの実技指導を行った。 (3)「英語科学研究レポート」指導 個人・グループで行った科学研究を、国際科学レポートの形式を学び、英語 で書かせた。
  46. 46. 45 (4)国際科学研究交流 2011 年、Video Conference System (Internet)を利用しての海外交流校(オ ーストラリア Armidale High)と英語で個人・グループで行った科学研究を発 表したり、2011 年から毎年、アジアの現地の高校(台湾 LithanHigh、マレーシ ア APU Smart School)との科学研究発表交流をしたり、大学(台湾 Tankang 大 学、マレーシア APU 大学)で大学で講義を受けたり、大学教授の前で科学研究 発表を行い、指導してもらった。
  47. 47. 46 などの4つであるが、「CLIL 英語指導」がSSH英語指導の基礎となった。科 学や数学の英語にできるだけ触れて、使いながら、身に付けることがこの英語 指導の中心でもある。 3.3.2 SSHコースにおけるCLIL科学英語指導 学校設定科目「SSCI・II・III」の指導の中の「科学英語」の授業は、生徒が中 学や高校時に既習した理科と数学の学習項目を確認しながら、外国の科学や数 学のテキストを使って、英語指導することにした「英語で科学や数学を復習す る」英語学習である。つまり、CLIL(科目内容と言語活動を統合させた学習形 態)指導を導入したのである。 (1)テキスト選定 「科学英語」のテキストを選択する時に、理科、数学、英語の合同の話し合 いで、下記のテキストに決定した。「科学英語」の指導に当たっては、英語科の 教員が理科や数学の教員と話し合って、授業の内容も決定した。 理科 A Concise Course Science to GCSE (Oxford University Press) 数学 Content and Language Support Series Mathematics (Oxford University Press) CLIL 英語指導にあたっては、英語科と他教科との関係づくりが大切だと思う、 科目の指導内容の確認だけでなく、どのように CLIL の授業を展開するか気楽に 話し合う関係づくりがあれば、よりよい CLIL 英語授業になるだろう。 SSH 指定を受ける準備をしている高校や SSH1年目の高校の SSH 関係者ら が、本校の CLIL による「科学英語」指導実践を聞いて驚く理由に、「科学英語 は英語科の仕事ではない。」「科学英語は科学の先生が教えるのが当然だ。」とい う英語科の先生方や「科学英語も英語、英語は英語科の先生が教えるべきだ。」 という理科の先生方がいるということがある。CLIL による指導は教科を越えて、 英語で英語以外の科目を指導するので、教科の枠を越えて、教科間の協力体制
  48. 48. 47 も、もっとも大切な要素の一つではないだろうか。 (2) CLIL 科学英語指導 a. 科学英語 指導案 SSCI Chemistry 3.02 Solids, Liquids, and Gases Solids, Liquids, and Gases について、教師による説明と外国の TEXT の読解による 科学英語と化学を指導した例 Lesson Plan (Super Science Communication I) Teacher Mr.MIKAMI Masahiro Students 1- H (20) Date Sat 10. 27, 2012 Text Science to GCSE 3.05: Atoms and isotopes (OUP) Theme The structure of atoms Protons, Neutrons, Electrons and Isotopes (Chemistry) Learning Objectives The students will be able to: 1) understand the structure of atoms and describe it. 2) explain about mass number, relative atomic mass, and isotopes. 3) answer the questions on isotopes, including Ar, radioactive isotopes, and carbon dating. # FOCUS MAIN ACTIVITIES LANGUAGE HOMEWORK ◎ 1 ・Introducing science vocabulary ・Understanding the structure of atoms and isotopes ・Explaining key points on the topic 1) To describe the structure of an atom. 2) To explain the Features of parts of an atom and the atomic number of the element. 3) To explain the difference between Carbon-12 & Carbon-14. Vocabulary Basic words related to atoms and Isotopes Nucleus, Orbitals, Proton, Neutron Electron, Ar, Charge Expressions Be concentrated in To review the structure of atoms and isotopes. To research “carbon dating” on the Internet.
  49. 49. 48 ・Answering some questions on the theme 4) To answer the questions on atoms and isotopes. Group Work be made up of = consist of be defined as TODAY’S TEACHING PLAN (1/1) PROCEDURE MAIN ACTIVITIES LANGUAGE HOMEWORK 1 READING & EXPLAINING ‘The Structures of atoms and their atomic number’(15 min) 1) To read the text and understand the structures of atoms 2) To describe the structure of a carbon atom and its mass number 3) To complete the picture of an carbon atom Group Work Vocabulary Basic words related to atoms and Isotopes Nucleus, Orbitals, Proton, Neutron Electron, Ar, Charge To check the new science words and Expressions in the text. To review the structure of an atom and isotopes. 2 READING & EXPLAINING ‘Isotopes and Ar’ (20mins) 1) To read the text and get the main points of isotopes and the difference among them 2) To explain the points of isotopes and Ar with notes 3) To answer questions on isotopes of Carbon, Chlorine, and Hydrogen Group Work Expressions be concentrated in be made up of = consist of 3 ANSWERING QUESTIONS (10 min) 1) To answer the questions with Expressions be defined as To research “carbon
  50. 50. 49 regard to the structure of an atom and Isotopes 2) To discuss and check the answers of the questions Group Work dating” on the Internet. Evaluation 1) The students will be able to describe the structure of an atom. 2) The students will be able to explain the atomic number of the element and the difference of isotopes of Chlorine and Hydrogen. 3) The students will be able to answer the questions on atoms and isotopes. b. 科学英語 SSCI Chemistry 3.02 Solids, Liquids, and Gases Worksheet 化学の Solids, Liquids, and Gases についての教師による説明と TEXT の読解 による化学英語を指導したときに作成した Worksheet Super Science Communication I Science English Lesson 2 3.02:Solid, liquids, and gases 1. Listen to the explanations of the followings and take a note (1) Particle theory particle
  51. 51. 50 of matter (2) Solid particle (3) Liquid particle (4) Gas particle 2. Explain the above with notes in English. 3. Read the text and take a note to explain the followings. (1) Diffusion (2) Temperature (3) Changing State 4. Answer the following questions in English (1) Q What is the equation of “Density”? A Density = (2) Q In what are the followings measured? A Mass = Volume = Density = (3) Q What is the density of the following? a. air b. water c. steel mass = 15,600kg volume =2m3 (4) Q If a block of steel has a mass of 18,600kg and a volume of 3m3, its density is c. 数学英語 指導案 SSCI Math Quadratic Equations 中学や高校で既習した2次方程式の復習と数学英語を指導した例 Lesson Plan (Super Science Communication I) Teacher Mr.MIKAMI Masahiro Students 1-H (20) Date Wed 10. 17, 2012
  52. 52. 51 Text Content and Language Support Series “Mathematics”(OUP) Theme Quadratic Equations (Math) Learning Objectives The students will be able to: 1) understand the terms of Quadratic equations. 2) solve the questions of Quadratic equations. 3) explain the process of solving Quadratic equations. isotopes, and carbon dating. # FOCUS MAIN ACTIVITIES LANGUAGE HOMEWORK ◎ 1 ・Introducing Math vocabulary ・Understanding Quadratic equation ・Explaining the main points of Quadratic equation ・Answering some Questions on Quadratic equation 1)To understand the terms of Quadratic equation in English 2)To explain about transforming equations and isolating variables in English 3)To be able to solve some given quadratic equations and present solutions in English Vocabulary Basic words related to quadratic equation Polynomial, Degree, Parabola, Root, Linear/Quadratic/Cubic Variable, Coefficient, Implies, Transform, Isolate, Factoring, Solutions To solve questions involving quadratic equations TODAY’S TEACHING PLAN (1/1) PROCEDURE MAIN ACTIVITIES LANGUAGE HOMEWORK 1 Introduction (15min) 1) To learn the quadratic formula in English using Mathematics vocabulary. 2) To understand Vocabulary Basic words related to the quadratic equation Polynomial, To review the new math terms about quadratic equations.
  53. 53. 52 questions posed about quadratic questions in English. 3) To show how to read and solve problems. Pair Work quadratic, variable, coefficient, degree (linear/cubic), parabola 2 Solving & Explaining (20min) 1) To read the text on the board and explain each part as a class. 2) To explain the main points thoroughly while taking notes. 3) To discuss problem -solving with others in the class. Group Work implies, transform standard form, factoring, root To check for understanding about the explanations presented. 3 Solving Questions (10min) 1) To solve answers to written and spoken questions. 2) To check the answers. Group Work isolate, solutions To practice solving quadratic equations by oral and written means in English Evaluation 1) The students will be able to understand solving quadratic equations in English. 2) The students will be able to solve quadratic equations using different methods of solution. 3) The students will be able to discuss the process of solving quadratic equations in English.

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