ブラック企業対策プロジェクト 見分け方ガイド

232,822 views
235,849 views

Published on

そんな疑問に答え、 就職活動に必要な知識を伝授します。
ブラック企業の見分け方 ~大学生向けガイド~

ブラック企業に就職するのが怖いけど、 どうやって見分ければいいの?

上西充子・今野晴貴・常見陽平

0 Comments
26 Likes
Statistics
Notes
  • Be the first to comment

No Downloads
Views
Total views
232,822
On SlideShare
0
From Embeds
0
Number of Embeds
86,025
Actions
Shares
0
Downloads
283
Comments
0
Likes
26
Embeds 0
No embeds

No notes for slide

ブラック企業対策プロジェクト 見分け方ガイド

  1. 1. black kigyou taisaku project kyoiku unit   ブラック企業に就職するのが怖いけど、 どうやって見分ければいいの? そんな疑問に答え、 就職活動に必要な知識を伝授します。 ブラック企業の見分け方 ∼大学生向けガイド∼ 上西充子・今野晴貴・常見陽平 ブラック企業対策プロジェクト 2013
  2. 2. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 ブラック企業の見分け方 ∼大学生向けガイド∼ 目次 はじめに:この冊子のねらいと構成  今野晴貴 1. 採用活動・求人広告から見分ける――気をつけておきたいブラック企業の兆候  常見陽平 1.1 概要 1.2 企業の採用活動とは何か? 1.3 採用活動における「黒い嘘」と「白い嘘」に注意する 1.4  「事実の誇張」と「見せ方の工夫」に注意する 1.5 情報は企業の都合で発信されることに注意する 1.6 求人広告とは何か? 1.7 求人広告で気にするべき表現とは 1.8 会社説明会編 1.9 面接編 2. 客観データから見分ける【基本編】――『就職四季報』から、ここまでわかる  上西充子 2.1 概要 2.2 見分けるために客観データを活用しよう 2.3  『就職四季報』って何? 就職ナビとどこが違う? 2.4 新卒者の3年後離職率に注目! 2.5 3年後離職率が無回答の場合はどうする?――従業員数と採用数の比率、平均勤続    年数に注目 2.6 平均残業時間は手がかりになるか? 2.7 設立年にも注目 2.8 人物重視の採用選考プロセス? 2.9 初任給の高さに釣られないで 2.10 売上や利益が伸びていればいいわけではない 2.11 他業種や同業他社との比較を 2.12 データベースから過去との比較を 2.13「総合版」 「女子版」 「中堅・中小企業版」 2.14 そもそも、掲載がなかったら 2
  3. 3. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 3. 客観データから見分ける【発展編】――情報源は、他にもいろいろ  上西充子 3.1 概要 3.2 企業のホームページで沿革や役員構成をチェック 3.3  『会社四季報』にも平均年齢と平均年収の記載 3.4 有価証券報告書から労働組合の有無をチェック 3.5 新聞記事データベースで気になる事実をチェック 3.6 雑誌記事データベースでより詳しい背景や経営者の方針をチェック 3.7 大学の就職部・キャリアセンターは企業や先輩の情報を持っている 3.8 新卒応援ハローワークの活用を 3.9  「若者応援企業」はホワイト企業? 3.10 その企業やその業界で働いている先輩や社員に話を聞こう 3.11 複数の大人に聞こう 4. 求人情報・雇用契約から見分ける――だます意図を見抜こう  今野晴貴 4.1 概要 4.2 求人票や雇用契約書の内容でブラック企業が見分けられる理由 4.3 給与制度から見分ける 4.4 固定残業代・残業手当 4.5 年俸制 4.6 裁量労働制 4.7 年俸制や裁量労働制がブラック企業と無関係の場合 4.8 雇用形態から見分ける 4.9 早期昇進制度・店長登用(管理監督者制度の問題) 4.10 契約までの「説明の仕方」 4.11 我慢せずに、転職する 4.12 入った後にあきらめない 5. 大学関係者の皆様へ  上西充子 5.1. セミナー・授業等でのこの冊子の利用にあたって 5.2. ワークルール教育――状況に立ち向かう力を 3
  4. 4. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 はじめに:この冊子のねらいと構成  今野晴貴  ブラック企業とは、正社員として若者を採用しながら、すぐに辞めさせてしまう企業のこと です。絶対に達成できないノルマや長時間の残業命令などの過重労働を課したり、パワーハラ スメントが横行しているため、働き続けることができないのです。ブラック企業の中には有名 企業や業績好調な企業も珍しくはなく、毎年たくさんの大学生が採用されています。  この冊子では、ブラック企業を「見分ける」ために、大きく三つのことについて説明します。 ・第一に、ブラック企業が疑われる企業の採用活動の特徴です。 ・第二に、企業の客観的なデータからブラック企業を見分ける方法です。 ・第三に、求人票・契約書の内容や、契約までの「説明の仕方」から見分ける方法です。  この冊子をぜひ役立てて、ブラック企業を一人でも多くの若者が避けることができることを 願っています。 4
  5. 5. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  上記チェックリストは、 「ブラック企業の見分け方」の中でも、特に気をつけて確認して貰い たいポイントです。  以下、 「ブラック企業の見分け方∼大学生向けガイド∼」では、より詳細に、確認すべきポイ ントや、情報の調べ方を記しています。 5
  6. 6. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 1. 採用活動から見分ける ―気をつけておきたいブラック企業の兆候― 常見陽平 企業のイメージに踊らされ ないようにしよう! 6
  7. 7. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 1.1 概要  この章のねらいは企業の採用活動からブラック企業を見分けることです。  まず、企業にとって採用活動とはどのようなものなのかということをまとめた上で、その過 程において企業が嘘をついたり、誇張をする可能性があることを指摘します。  さらに、採用広告、会社説明会などに代表される採用広報活動、および書類選考、面接など における選考活動について、ブラック企業によくある兆候をご紹介します。  なお、ここでご紹介するような兆候が、ひとつでもあったらブラック企業だと断定で 一方、 きるものでもありません。 あくまで可能性があるということだと思ってください。 ブラック企業の採用活動は実に巧妙で、ここであげたような兆候がまったくなかったとしても、 入ってみたらブラック企業だったということもあり得ます。  こんなことを書くと、この章の存在意義自体が疑われそうですが、とはいえ、この章には意 味があると思っています。企業の採用活動において、これから紹介するような兆候がないか、 その意図は何かを考えることによって、ブラック企業に入ってしまうリスクは軽減できると考 えています。  企業の採用活動を読み解くヒントとして、役立ててください。 1.2 企業の採用活動とは何か?  企業の採用活動からブラック企業を見分けることがこの章のねらいですが、その前提として、 そもそも「企業の採用活動とは何か?」について考えてみたいと思います。  企業にとっての採用活動とは、人材を獲得する活動です。その組織にとってふさわしい新 入社員を獲得する行為です。その企業において仕事ができそうな人、組織風土に合っている人、 成長しそうな人を探し出し、採用します。企業の三大資源として、ヒト・モノ・カネが上げら れています(最近では、これに情報をくわえて四大資源と言うこともあります) 。その中でも、 人材に対する関心は高いと言われています。  就活をする学生の皆さんは「内定が欲しい」と思うことでしょう。そして、内定がとれず就 職出来ないなどの「内定がとれない」リスクや、入社してから想像していたのと違っていた、 実はブラック企業だったなどの「現実とのギャップ」というリスクを感じていることでしょう。  でも、同じように企業も「学生を獲得できない(応募が少ない、欲しいと思った学生に逃げ られた) 」 「採用した学生が、 想像していたほど能力がなかった (合わなかった、 成長意欲がなかっ た) 」などのことをリスクだと感じているわけです。  特に、学生の皆さんにとっては意外かもしれませんが、 「人材を獲得できない」というリ スクに企業は直面しているのです。 7
  8. 8. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 ◆学生の就活も、企業の採用活動も、リスクを抱えている 学生側のリスク 企業側のリスク 内定がとれない(就職先がない) 人材がとれない 入社してみたら 採用してみたら 想像していた仕事内容と違った 想像していた能力、タイプと違った  中堅・中小企業、不人気業界の企業などは、そもそも応募してくる学生が少ないのです。さ らに、意外かもしれませんが、人気企業、有名企業においても「欲しい」と思った学生からの 応募が十分あるとは限りません。さらに、 「この学生なら合格だ」と思った学生は、他社からの 内定を持っており、取り合いになるのです。  このように、採用活動において、企業は「採れない」というリスクを抱えていることを覚え ておいてください。 1.3 採用活動における「黒い嘘」と「白い嘘」に注意 する  ここまで読んで、 なんとなく気づいた方もいることでしょう。 そう、 なかなか人が採れずに困っ ている企業の中には、悪いことを考える企業もいるのです。採用活動において嘘をついてしま う企業が存在します。  この嘘は大きく 2 種類あります。一つは、 「黒い嘘」です。事実とまったく異なるウソで す。例えば、明らかに負荷のかかる仕事を「疲れずにラクラクできる仕事です」と伝えるよう なものです。 信じられないかもしれませんが、 このレベルでウソをついている企業は存在します。  もう一つ、特に学生が気づかない嘘があります。それは「白い嘘」です。これは、 「不都合 な事実を伝えない」というものです。例えば、必ず土日出勤がある、全国に転勤する可能性 がある、毎日のように深夜残業があるなど、就職する前に聞いていたら、その企業を志望した くなくなるような事実を伝えないわけです。  先ほどご紹介した「黒い嘘」のように事実をねつ造しているわけではありませんが、大切な ことを隠しているわけです。 ◆黒い嘘と白い嘘 例: 「明らかに負荷のかかる仕事」の場合 特徴 表現の例 黒い嘘 事実とまったく異なる嘘。 疲れずにラクラクできる仕事です 白い嘘 不都合な事実を伝えない。 (そもそも言及しない)    「黒い嘘」 「白い嘘」ともに注意すべきであることは言うまでもないですが、特に学生の皆 さんには、後者の「白い嘘」というものがそもそも存在しているという事実に気づいて頂きた いです。採用活動においては、企業はなんとか学生を獲得するために嘘をつくこともあり得る のです。 8
  9. 9. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 1.4  「事実の誇張」と「見せ方の工夫」に注意する   「嘘」同様に、採用活動で行われるのが、 「事実の誇張」や「見せ方の工夫」です。それ ぞれご説明します。  まず、 「事実の誇張」です。文字通り、小さなことを大きく伝える行為です。ベンチャー企 業においてよく行われるのが、社長の経歴の誇張です。一部、詐称まで存在します。有名企 業に在籍した経験などを劇的に演出するなどの手法がとられます。例えば、 「⃝⃝社在籍中に トップ営業マンとして表彰された」などの表記を社長のプロフィールなどで見かけることがあ るでしょう。実際には、 たった 1 回の出来事だったり、 少し頑張れば獲得できるポジションだっ たりということがあります。  社長のプロフィールに限らず、企業のプロフィール情報や取り組みについて、誇張す ることがあり得ます。例えば、企業プロフィールの取引先一覧は誇張しやすいポイン トです。たとえ少額でも、少し前のことでも、取引があった企業はこちらに掲載されるという わけです。  もうひとつは、 「見せ方の工夫」です。例えば、忙しいことを公言している企業は存在しま す。これらの企業は「人の役に立っている実感があるので、夜遅くなってしまっても充実感が あります」などと学生に伝えます。忙しいことを公言する姿勢は、企業の実態を伝えるという 意味では評価できるかもしれませんが、充実感があるかどうかは、個人により違うのは明らか です。忙しいという事実も、このように見せ方を変えれば学生からも納得してもらえるともい えます。ただ、ここにも学生が騙される危険があるといえるでしょう。  このように、 「嘘」とは言い切れないものの、 「事実の誇張」や「見せ方の工夫」なども存在 していることに、気づいておきましょう。 1.5 情報は企業の都合で発信されることに注意する  ここまでのまとめをします。企業の採用活動というのは、まさに人材を獲得するために行わ れるものです。企業には公正な活動を期待したいのですが、人材を獲得したいが故に、嘘をつ いてしまったり、誇張したり、見せ方を変えたりする可能性があります。  そして、就職ナビなどの求人広告、企業が開く会社説明会、エントリーシートや面 接などの選考は、すべて企業の都合でつくられます。企業にとって不都合な情報はほ ぼ発信されません。  この前提をまず押さえておきましょう。 1.6 求人広告とは何か?   「求人広告」とは、文字通り、求人情報が掲載された広告です。就活をする学生にとって身 近なのは、リクナビ、マイナビに代表される就職ナビでしょう。これらに掲載されている企業 情報、採用情報などが「求人広告」です。 9
  10. 10. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  就職ナビの場合、統一のフォーマットで広告が作られております。これにより、比較検討が できることが特徴となっています。もっとも、 「統一のフォーマット」と言いつつも、掲載料金 を上げることによって、スペースが大きくなったり、特集ページが追加されたり、登場する先 輩の数が増えたりします。  ここで気づいた方もいるかと思いますが、実はリクナビ、マイナビなどの就職ナビに対 して企業は広告料を払っています。就活を始めたばかりの学生は、これが広告媒体であると いうことを知らなかったという人もいることでしょう。リクナビに関していうと、基本企画と いうシンプルなプランでも参画するには、100 万円前後の掲載料がかかります。お金を払っ て掲載しているが故に、企業にとって不利な情報は載りにくいのです。  リクナビ、マイナビなど大手の就職ナビには、各社の社内に審査を担当する部署があり、こ こが掲載する企業や内容のチェックを行っています。過去に広告料を何度も滞納した企業、求 職者からのクレームが媒体に何度もきている企業などは掲載されません。また、 媒体の上で使っ てはいけない表現を利用している企業には表現の訂正を求めます。読者からのクレームを受け 付けるホットラインも用意されています。  とはいえ、ただ、これらのチェックがありつつも、間違った情報が載ることはないとは言え ません。広告制作の際には営業担当者や、制作担当者が企業に訪問をし、取材しているものの、 彼らに対して企業が嘘をついている可能性はあります。  また、採用決定後にすぐ働くことになる中途採用やアルバイト・パートとくらべて、新卒の 正社員の場合は、内定してから働き始めるまでに期間があきます。その分、掲載内容との違い に気づくまでタイムラグがあり、クレームが入りづらいことが考えられます。こういったトラ ブルは求職者からのクレームがない限り、発覚しづらいのです。求人広告自体はまったく間違 いがないものの、各社が行う会社説明会や選考に問題があった場合も、就職情報会社は問題に 踏み込みにくいです。  求人広告はこのように、企業が採用活動を成功させるために、お金を払って掲載していると いう前提を押さえておきたいです。   リクナビ・マイナビの情報 は、必ずしも「学生のため」の 情報ではない! 10
  11. 11. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 1.7 求人広告で気にするべき表現とは  では、具体的に求人広告で気にするべき表現について考えてみましょう。注意すべき点をま とめてみました。なお、ここで指摘する表現は求人広告に限らず、会社説明会や選考などでも 注意してみてください。 ■根拠なく「感動」 「成長」 「夢」という言葉が並んだら注意  業務内容との関連もなく、どうして顧客や従業員が感動できるのか、どうして成長できるの か、どうして夢を描くことができるのか根拠もなく、この手の言葉を訴求する企業があります。  実際の詳しい仕事内容を話すと、学生が応募をやめてしまいそうなため、あえて業 務内容をぼかし、 「感動」 「成長」や「夢」という聞こえのよい言葉を連呼するのです。 ◆表現の例 ・圧倒的に成長できる環境で働いてみよう! ・この挑戦の先に感動がある! ・夢に向かって挑戦できる環境で仕事をしないか! 夢や感動 なんかより、 生活や命が 大切よね。 ■業務内容を具体的に説明しない企業に注意  もともと、業務内容というものは新卒の学生にとってはわかりにくいものです。働いたこと がないわけですから、イメージしにくいのは当然ではあります。  とはいえ、何をしている企業なのか、入社したら具体的にどんな仕事を任されるのかなどが あまりにも不明確な企業は、要注意です。意図的に不明確にしていることがあります。 ■ 「若手でも活躍できる」企業に注意する   「若手の活躍」も、 「成長」 「夢」と同様に、学生に響く表現です。ただ、この場合、 「なぜ活 躍できるのか」という理由を気にするべきです。  特に若くして店長やマネジャーなどに昇進・昇格できる企業もあるものの、研修な どのサポートが充実していないまま登用するために、疲弊するだけという企業も存在 します。  さらに、若手時代の後はどうなるのかも考えておきたいところです。若手を使うだけ使って、 使い潰す企業である可能性があります。 ◆表現の例 ・25歳でマネジャーに。若手に仕事を任せる企業です! ・年功序列を廃止。若手でも年収 1,000 万円が可能! 11
  12. 12. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 ■不自然な大量採用に注意する  現状の人数に対して、明らかに多い採用を行っている場合は要注意です。事業拡大のためな ど明確な理由があればいいのですが、人の出入りが激しいからということも。目安として、従 業員数の 1 割を超える採用を行っている場合は、多いといえるでしょう。  並行して中途採用で若手層を大量に募集している企業なども要注意です。企業のことを調べ る際には新卒の求人広告だけでなく、リクナビ NEXT、DODA など中途の求人広告も見てお くといいでしょう。  もう一つ、意識したいことがあります。この大量採用はもちろん、事業拡大、成長のためと いう健全な理由という場合もあるわけですが、そのような企業はマネジメントが混乱しがちで す。急成長のため、組織にまとまりがないということもあります。もちろん、それを楽しもう という気概で入社する学生も中にはいます。  このように、大量採用もブラック企業のシグナルになり得ること、あるいは入社後の混乱が あり得ることを覚えておきましょう。 ■給料が明らかに高い(安い)企業に注意する  大卒の初任給は、業界、職種、地域などにもよりますが、基本給で 17 万円∼20 万円くらい が相場です。高い業界と言えば、外資系の金融機関やコンサルティング会社、マスコミの一部 などは若いうちから明らかに高いです。  これ以外の業界で、例えば基本給 27 万円など、明らかに給料が高い場合は、その分、労働 条件も過酷ということがあり得ます。  新卒で給料の高さを打ち出す企業は、明らかに利益率が高い業界以外は、やや仕事も過酷で はないのかと疑ってみることも意識しましょう。  なお、明らかに高く見える企業でも、よく読むとみなし残業(あらかじめ一定の残業代が含 まれている)になっており、その額を合わせて表示しているケースがあります。あるいは、成 果に応じて上がる部分の割合が大きく、必ずその金額をもらえるとは限らないこともあります。 これも注意しておきたい点です。  逆に、大卒の給料が不当に安い場合も注意が必要でしょう。同業他社、同規模の企業などと 比較して、明らかに高い場合、安い場合に注意してみましょう。 1.8 会社説明会編  会社説明会において、注意すべき点は次のような点です。 ■無名企業なのに、会場が高級ホテルなど、明らかに豪華な場合は 注意する 12
  13. 13. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  明らかに知らない企業が、高級ホテルなど、高級感が漂う会場でセミナーを実施している場 合。これは、学生からの信頼を勝ち得るために、やや背伸びしてそうしています。もちろん、 オフィスの広さなどの関係で、外部の会場を借りざるを得ない場合もありますが。  このように、企業規模の割に背伸びをしている企業にはそういう意図があるものだと思って ください。 ■社長しか出てこないに注意する  採用に力を入れているベンチャー企業では、社長が自ら企業説明を行ったりします。それだ け採用に力を入れている企業とも言えます。  ただ、逆に社長以外の売り物がない場合も。社長以外の社員に会わせると、人材の層が薄い ことがわかってしまうので、あえて会わせないのです。  会社説明会に限らずですが、社長しか売り物がない企業は要注意です。 1.9 面接編  選考において、注意すべき点は次のようなポイントです。 ■選考プロセスで、過度に労働条件について説得される   「世の中、普通はこうだから」などと言われ、明らかに過酷な労働条件について、それが普 通であるかのように説得する企業があります。特に残業時間について過度に説得が行われる企 業については注意が必要です。  採用活動においては、たしかにこのように、入社後の早期離職などを減らすために、現実を 伝える取り組みはありますが、過度に行われる場合は要注意です。 ■すぐに内定がでる  あっという間に内定を出す企業にも注意したいところです。逃げられることに対する焦りな どから、少ない選考プロセスで内定を出すのです。  たしかに、 中小企業では社長面接だけで終わる企業も存在はします。ただ、 回程度の選考で、 1 何を評価したのかも分からないような企業は要注意です。 ハイ、キミ採用! そ、そんなあっさり? 13
  14. 14. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 ■内定後のフォローがない  内定後、連絡がない、他の同期と会わせないなど、フォローが全くない企業には要注意です。 企業の現実を見せると、内定を辞退してしまうことを恐れているからです。  以上のような点で企業の採用活動をチェックしてみましょう。ここで出た例に限らず、おか しいなと思ったら、なぜ企業はそのように表現するのか、本当はどうなのかを疑ってみて、客 観的な情報源を探しつつ、考えてみましょう。 whistle ! ます。 ご退場願い 業は ブラック企 14
  15. 15. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 2. 客観データから見分ける 【基本編】 ―『就職四季報』から、ここまでわかる― 上西充子 ネ ッ ト の 情 報 に 踊 ら さ れ ず、 客観的なデータからブラック 企業を見分けよう! 15
  16. 16. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット 2.1 概要 『就職四季報』のココを見よう! 1. 面倒でも、数値を見よう! どう読む?  入社後の実際の働き方に関する客観データから、ブラック企 業を見分けよう 説明 2.2/2.3 ◆ 「3年後離職率」が高い企業は要注意! ・ ただし、業種によって大きな差 1つの企業だけでなく、同業他社や、他業種の離職率と比較を ・ 新卒者の3年後離職率 ・ ・ 2. 大卒者の3年後離職率の平均は 30%前後 3年後離職率が無回答の場合は「従業員数と毎年の採用実 2.4 績数の比率」や「平均勤続年数」に注目を ◆ 従業員数の割に採用実績数が多すぎる場合は、要注意! 3. 従業員数と毎年の採用実 績数の比率 ・ そんなにたくさん新卒を入れて、育成できるの? ・ 2.5 たくさん辞めることを見越して、多めに採用しているのかも・・ ◆ 平均勤続年数が短い企業は要注意! 4. 平均勤続年数 5. 平均残業時間が短くて ・ 平均残業時間が短くても安心しないで・・ も・・・ ・ 「有休消化年平均」も見ておこう 6. 設立年 ◆ 設立年が新しい場合は、どんな創業者かチェック! 2.7 7. 採用選考プロセス ◆ 採用選考プロセスがあまりに簡素な場合は要注意! 2.8 8. 初任給の高さに釣られな  (ただし、設立後の年数もあわせて確認) いで 9. 売上や利益が伸びていて ったりする場合も  も・・・ 10. 他業種や同業他社との比 較を 11. データベースから過去との 比較を 12. 「女子版」や「中堅・中小企 業版」も 初任給が高くてもボーナスが少なかったり、あまり昇給しなか 残業代を正当に支払わない長時間労働によって売上や利益 が伸びている場合も・・・ 2.5 2.6 2.9 2.10  業種によって労働条件は全然違う・・・  関心のある業種の労働条件の「おおよその見当」を ・ 都合が悪くなって無回答になったのかも・・・ 2.12  女性の働きやすさは「女子版」をチェック! 2.13 16 2.11
  17. 17. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット 2.2 見分けるために客観データを活用しよう  この章(第2章)と次の章(第3章)では、客観データからブラック企業を見分ける方法を 説明します。   「就職ナビにはいいことしか書いてないなら、どうやって見分けたらいいの?」――そこで 頼りになるのが、3年後離職率などの客観データです。   「わが社は何より社員を大切にしています」など、言葉だけであれば、実態はどのようにも ごまかすことが可能ですが、新卒で入社した正社員のうち3年以内に離職したのは何%か(3 年後離職率)といった数字は、 、 ニセの数値を記すことはできません。数値を示すか、 示さないか、 です。ごまかしはききません。  数値の意味を読み解くこと、そしてもし、数値が情報開示されないなら、情報開示されなかっ たということの意味を読み解くこと、その力があれば、イメージに振り回されずに済みます。   「情報に振り回されずに、説明会に参加したり、働いている先輩の話を聞いたりして、自分 で判断することが重要だよ」といったアドバイスをよく聞きますが、自分で判断するためにも、 情報に振り回されるのではなく、 「情報を読む力」が大切なのです。 2.3  『就職四季報』って何? 就職ナビとどこが違う? ■ 『就職四季報』とは  ブラック企業を見分けるための基本ツールとしてご紹介するのは、 『就職四季報』です。 『就 職四季報』とは、 東洋経済新報社が毎年1回、 月頃に発行している書籍で、 11 「総合版」 「女子版」 「中堅・中小企業版」の3冊があります。それぞれ、3年後離職率や過去3年 間の採用実績数など、共通項目が個別企業ごとに記載されています。   「総合版」は採用数の多い大企業を中心に掲載し、 「女子版」は同様の企業について、育児休 職期間と取得者数や女性の既婚率など、女性の働きやすさを知るための指標が豊富です。   「中堅・中小企業版」は、中堅・中小企業の中で、業績面で 比較的安定した有力企業や、今後大きな成長が期待される成 長企業を取り上げています。以下では「総合版」を例に説明 していきます。  この『就職四季報』に掲載されている情報は、ネット上に は無料公開されていません。書籍を購入する必要があります。 一方で、多くの学生が利用する「リクナビ」 「マイナビ」 「日 経就職ナビ」などの就職ナビでは、各企業の採用情報や企業 情報をパソコンから自由に無料で閲覧することができます。 ▲2015 年版 就職四季報 総合版 17
  18. 18. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット ■ 『就職四季報』と就職ナビの違い   「就職ナビの方が手軽で便利!」―― そう感じる方も多いかもしれません。けれども、 『就職 四季報』には、 就職ナビの各企業の採用情報欄には書かれていない項目がたくさんあります(表 1) 。 表1: 就職四季報と 代表的な就職ナビの違い 就職四季報 就職ナビ 働き方にかかわる 男女・文理別採用実績数 初任給額 客観データ 採用実績校 所定の勤務時間 勤務地 休日休暇(週休2日制など) 配属部署 福利厚生制度 3年後離職率 採用予定人数 平均勤続年数 採用実績校など 35 歳賃金 ボーナス年額 月平均残業時間 有休消化年平均 育児休職期間と取得者数(※) 女性の役職者数(※) 女性の既婚率(※)など (※は女子版) 企業イメージが湧くか 記者評価など、記述は限定的 企業や社員の写真 社員の一日 など、イメージ情報が豊富 費用負担 書籍購入者が負担 求人情報掲載企業が負担 情報の性質 企業への調査結果を掲載 求人のための広告情報  たとえば初任給が何万円であるか、休みは週休2日制か否かなど、入社にあたっての非常に 基本な情報は、 就職ナビで確認することができます。一方で、 男女別の採用実績数、 配属部署(入 社した者が営業などそれぞれの部署に何人ずつ配属されたか) 、従業員の平均勤続年数、35 歳 賃金など、 入社後の実際の働き方にかかわる客観データは、 就職四季報』にはあっても、 『 就職ナビにはほとんど見ることができません。  逆に、就職ナビには写真が多く掲載されており、実際にその企業で働く社員がエピソードつ きで登場することもあります。そのため、企業イメージがわきやすいかもしれません。ですが、 登場する社員は、見栄えの良い社員・見せたい社員だけが選ばれている可能性が高いと考える のが自然でしょう。   『就職四季報』には働き方にかかわる客観的なデータが豊富、就職ナビにはイメージ情報が豊 富。この違いは、 「誰がお金を払っているか」 「誰のためのサイトか」を考えると理解できます。 18
  19. 19. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット ■情報提供はタダではできない   『就職四季報』の情報は、お金を出さないと入手できません。書籍は自分で購入するか、大学 図書館などが購入する必要があります。大学によっては図書館のデータベースで閲覧できる場 合もありますが、そのデータベースも図書館の予算で購入されています。お金を払うのは、そ の情報を必要としている学生、もしくはその学生の支援者、です。  一方、就職ナビは学生がタダで自由に見ることができますが、もちろんそれらのサイトをタ ダで作ることは不可能です。では誰が費用を負担しているのでしょう? その就職ナビに企業情 報を掲載する企業が、就職ナビの運営会社に費用を支払うことによって、ページを作り、掲載 してもらっているのです。  ではなぜ求人を出す企業は就職ナビの費用を負担するのでしょう? 学生のため? それもあ るでしょうが、基本的には、自社に必要な新入社員を集めるため、です。  このように、誰が費用を負担しているかの違いが、働き方にかかわる客観データの豊富さの 違いになって表れていると考えられます。   『就職四季報』の3年後離職率、採用実績数、35 歳賃金などの客観データは、書籍の発行主 体である東洋経済新報社が各企業に調査票を送り、それに各企業が回答する形で収集されてい ます。同じ項目を各企業に共通で尋ねているため、各企業の客観的な比較が可能です。  一方、就職ナビの情報は、就職ナビの運営会社と求人を行う企業との間のやり取りを通して、 「何を見せるか」 「どう見せるか」が決められていきます。その内容の大半は、自社の魅力を PR して応募を促す、求人のための「広告情報」だととらえておいた方がよいでしょう。 2.4 新卒者の3年後離職率に注目!  さて、 『就職四季報』と就職ナビの違いを理解したうえで、いよいよ『就職四季報』の情報を 検討していきましょう。   「ブラック企業」を見分けたいと思う場合、 まず見るべきは新卒入社者の「3年後離職率」 です。なぜ3年後離職率に注目するのか。それは若者の「使い捨て」が離職率という数値 に表れてくるからです。 ■3年後離職率で2つの企業を比べてみる  以下では「白戸工業(株)(表2)と「 」 (株)喪黒商事」 (表3)という2つの架空企業の情 報を例にとって、見るべきポイントを具体的に説明していきます。   『就職四季報』では、新卒入社者(正社員。現業者を除く。現業者とは工場ラインに就く現 場技能職など)が、入社3年以内に何%離職したかが、右上に「3年後離職率」として大 きく表示されています(表2、表3) 。 19
  20. 20. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 表2: 『就職四季報』総合版サンプル1:白戸工業(株) (架空企業) 出所:東洋経済新報社『就職四季報』編集部提供  白戸工業の場合、3年後離職率は「17.6→0%」と表示されています。このうち大きく表示 されている「0%」は、最新の3年後離職率の値であり、3年前に入社した新卒社員が、3年 後に1人も辞めていないことを表しています。 「17.6%」は、その前年度時点での3年後離職 率です。最新の値と前年度時点での値の2つが示されることによって、3年後離職率が改善し たか悪化したかの変化がわかります。白戸工業の場合、3年後離職率は前年度に比べて改善し たことがわかります。  一方、喪黒商事の場合、3年後離職率の最新データは 88.5%となっています。つまり、 100 人採用したとしても、3年後に残るのはわずか 10 人ちょっと、という状況です。また、 喪黒商事の3年後離職率は、 「66.7→88.5%」と、前年度に比べて悪化しています。 20
  21. 21. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット 表3: 『就職四季報』総合版サンプル2: (株)喪黒商事(架空企業) 出所:東洋経済新報社『就職四季報』編集部提供  この2つの企業の3年後離職率のデータを比較すると、明らかに定着率は白戸工業の方が高 く、喪黒商事は新入社員が次々と辞めていく職場であることがわかります。   「それにしても3年後離職率が 88.5%というのは極端だ、現実にはありえない」と思うかも しれません。けれども、実際にはそういう企業も存在します。ただし、2.5 に述べるように、 そういう企業は通常であれば、 『就職四季報』に正直に離職率情報を公開することはしません。 都合が悪すぎるからです。ですが、ここではわかりやすい比較のために、2つの架空企業の情 報を、それぞれもっとも高い情報開示度レベル(★5つ)で示しています。 ■どのくらいの離職率だと危ない?  では、一般的には、どのぐらいの離職率であれば「ブラック企業」と言えるのでしょう? 絶対的な水準はありませんが、いろいろと想像してみてください。たとえば 3年後離職率が 50%を超えていれば、入社した者の半数以上が3年後には職場を離れている、という ことです。同期入社者が次々と辞めていき、3年後には半数も残らない、ということです。  ただし、入社人数が少ない場合には、離職率という「割合」の読み方には注意が必要 です。たとえば2人入社して1人が3年以内に離職した場合には、離職者はたった1人なのに 3年後離職率は 50%となってしまいます。離職率を見る際には、 「3年前入社」の人数もあわ 21
  22. 22. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット せて確認してください。 ◆3年後離職率と3年前入社人数は、あわせて確認しよう! 白戸工業(株) (株)喪黒商事  では3年後離職率が 50%を下回っていれば安心なのでしょうか。平均的な3年後離職率は どのくらいなのでしょう?  厚生労働省が公表している大学新卒者の3年後離職率は、年度によって変動がありますが、 図1に示されている通り、だいたい 30%前後です(図1は1年目、2年目、3年目の離職率 が積み上げられて表示されています。平成 23 年と 24 年については、3年目までのデータが ないことにご注意ください) 3年後離職率の平均は 30%ぐらいだということも、各企業 。 の離職率の高さを判断するうえでの目安となるでしょう。 図1:新規大卒就職者の1年目・2年目・3年目離職率 出所:厚生労働省「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」 http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127 ■業種によって離職率には差  ただし、業種によって、離職率は大きく異なっています。それぞれの業種ごとのおよそ の離職率の水準も知っておくとよいでしょう。厚生労働省は 2012 年秋から、ネット上で規模 別・産業別の離職率を公表しています。そのうち産業別の結果は図2の通りです。3年後離職 率を見ると、 「宿泊業、飲食サービス業」51.0%、 「教育、学習支援業」48.9%、 「生活関連サー ビス業、娯楽業」45.4%、 「不動産業、物品賃貸業」39.6%、 「小売業」37.7%、 「医療、福祉」 37.7%などの産業で、離職率が比較的高い傾向が見られます。 22
  23. 23. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット 図2:新規大卒者の産業別離職率(1年目・2年目・3年目) 新規大卒者の産業別離職率(%)(平成22 年3月卒) 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 調査産業計 鉱業、採石業、砂利採取業 建設業 1年目 2年目 3年目 製造業 電気・ガス・熱供給・水道業 情報通信業 運輸業、郵便業 卸売業 小売業 金融・保険業 不動産業、物品賃貸業 学術研究、専門・技術サービス業 宿泊業、飲食サービス業 生活関連サービス業、娯楽業 教育、学習支援業 医療、福祉 複合サービス事業 サービス業(他に分類されないもの) その他 出所:厚生労働省「新規大学卒業就職者の産業別離職状況」より作成 http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html ■男女別の定着率も確認を   『就職四季報』では、男女別に見た【3年後新卒定着率】も示されています。定着率は離職率 の裏返しであり、 入社して残っている者の割合です。 企業によっては女性活用の度合いが異なり、 男性の定着率と女性の定着率が大きく異なる企業もあります。そのため、男女別の定着率も確 認しておいた方がよいでしょう。 ◆男女別の3年後新卒定着率も確認しよう! 白戸工業(株) (株)喪黒商事 23
  24. 24. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット ■離職の背景に労働条件の悪さ  なお、離職率が企業による新卒入社者の「使い捨て」をそのまま表しているわけではありま せん。働かせ方とは関係のない病気や事故による離職などの場合もあるでしょうし、短期間に 凝縮された形で経験を積んだ上での転職や起業が可能な企業もあるでしょう。  けれども、下記の厚生労働省の調査結果(図3)をみると、転職を経験した大卒の若者(∼ 34 歳)が初めて就職した会社を離職した理由(3つまでの複数回答)のトップは「労働時間・ 休日・休暇の条件がよくなかった」 (27.5%)であり、労働条件の悪さが離職と大きく関係 していることがわかります。 図3:大卒の転職者が初めて就職した会社を離職した理由 大卒の転職者が初めて就職し 会社を離職し 理由 た た ( 数回答3 まで (%) 複 つ 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 27.5 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 24.9 仕事が自分に合わない 19.5 会社に将来性がない 賃金の条件がよくなかった 16.4 ノルマや責任が重すぎた 16.3 15.6 人間関係がよくなかった 12.3 自分の技能・能力が活かせられなかった 8.7 結婚、子育てのため 8.0 不安定な雇用状態が嫌だった 6.6 健康上の理由 倒産、整理解雇又は希望退職に応じるため 4.5 雇用期間の満了・雇い留め 4.4 1つの会社に長く勤務する気がなかったため 3.5 家業をつぐ又は手伝うため 3.4 2.8 責任のある仕事を任されたかった 独立して事業を始めるため 介護、看護のため 1.2 0.5 18.5 その他 7.0 不明 出所:厚生労働省「平成 21 年若年者雇用実態調査」 (2010 年 9 月 2 日結果発表)より作成 24
  25. 25. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット ■ 「離職率」が示された場合にはどういう離職率なのか確認を  なお、ここでは「3年後離職率」を見てきました。これは新卒入社の者の3年以内の離職率 を表しています。単に「離職率」と言う場合は、入社1年以内の離職率なのか、入社3年以内 の離職率なのか、あるいは従業員全体の1年以内の離職率なのか、何を指しているかわかりま せん。もし企業や先輩に離職率を尋ねる場合、あるいは企業や先輩が離職率を語った場合には、 それが何の離職率を指しているのか、確認することが必要です。 離職率は大切な「ブラック企業」の指標。 データを適切に読み取って、見極めよう。 2.5 3年後離職率が無回答の場合はどうする? ――従業員数と採用数の比率、平均勤続年数に注目  ブラック企業を見分ける有力な手がかりは3年後離職率ですが、それは公表されているとは 限りません。現状では企業には離職率を開示する義務はなく、離職率が高い企業は離職率の数 値を隠す傾向があります。 ■3年後離職率「NA(無回答) 」の意味    ある企業の【3年後離職率】が『就職四季報』で「NA」となっていれば、それは「無回答」 (No Answer)を意味しています。  3年後離職率が無回答だった場合、大きく3つの可能性があります。第1に「離職率が高す ぎて、公表したくない」と企業が考えている場合、第2に「離職率を公表しなくても優秀な人 がたくさん応募してくるので、公表する必要がない」と企業が考えている場合、第3に「そも そも離職率なんて、 (高かろうが低かろうが)わざわざ開示する必要はない」と企業が考えてい る場合です。 たとえばメガバンクなどは、 離職率に限らず、 各項目の情報開示度がとても低くなっ ています。情報開示に警戒的な姿勢がうかがわれます。  いずれにしろ、 3年後離職率が無回答だった場合、 「情報がないからわからない」と考えずに、 「隠したいほど離職率が高いのかもしれない」と用心して、他の情報をできるだけ多面 的に集めることが大事です。 25
  26. 26. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット  離職率が高いかどうかを別の手がかりから推測する方法は、大きく2つあります。1つ目は、 従業員数と毎年の採用実績数の比率をみること、2つ目は、平均勤続年数に注目するこ とです。 ■従業員数と毎年の採用実績数の比率を見よう  まず1つ目、従業員数と毎年の採用実績数の比率を見ることについて。従業員数と毎年の採 用実績数は、 『就職四季報』の基本情報であるため、ほとんどの企業が情報を公開しています。 従業員数の割に毎年の採用実績数が多すぎる場合は、次々と辞める若手社員を補充するた めに、採用実績数が多めになっていると推測できます。  先に示した白戸工業と喪黒商事の例を使って具体的に考えてみましょう。白戸工業の従業員 数は 1,834 名(現業者含む)で、2012 年度の大卒・修士卒の採用数はあわせて 17 名です。 従業員数の 0.9%にあたる大卒・修士卒の新入社員をホワイトカラーとして採用していること になります。一方、喪黒商事の従業員数は 255 名で、2012 年度の大卒採用数はあわせて 60 名です。従業員数の 23.5%にあたる新入社員を大卒で採用していることになります。 ◆従業員数と毎年の採用実績数の比率を計算しよう! 白戸工業(株) (株)喪黒商事  従業員数の4分の1近い数の大卒新入社員を採用している喪黒商事。 この割合は、 高すぎです。 こんなにたくさん新入社員を迎え入れた場合、新入社員に仕事を教える余裕が先輩社員にある とは考えにくいです。  そのため、喪黒商事では、たくさん辞めることを見越して多めに採用しているのだな、 と推測することができます。このように、たとえ【3年後離職率】が無回答であっても、新入 社員の「使い捨て」がある企業かどうかは、推測可能なのです。 ■平均勤続年数に注目しよう  次に2つ目、平均勤続年数に注目することについて。白戸工業の従業員の平均勤続年数は男 性 21.8 年、 女性 20.8 年、 男女計で 21.8 年です。男性社員も女性社員も長く勤める人が多い、 安定した企業であることがわかります。 26
  27. 27. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット  一方、喪黒商事の平均勤続年数は男性 1.9 年、女性 1.7 年、男女計で 1.9 年です。男性社員 も女性社員も、平均勤続年数が短すぎですね。入社後数年で辞める人が多いことが、このよ うな平均勤続年数の短さになって表れています。  ただし、平均勤続年数が短い場合は、設立年もあわせて確認することが必要です。たと えば設立から3年しかたっていない企業であれば、全員が働き続けていたとしても平均勤続年 数は3年です。とはいえ喪黒商事の場合は、設立は 2005 年7月となっています。その設立年 からの経過年数と平均勤続年数を比較してみると、やはり喪黒商事の場合は平均勤続年数が短 すぎることが確認できます。 ◆平均勤続年数と設立年を確認しよう! 白戸工業(株) (株)喪黒商事  また、 平均勤続年数を見る場合は、 男性と女性、 それぞれの平均勤続年数を確認してください。 女性が長く勤めることを想定していない企業の場合には、男性と女性の平均勤続年数が大きく 異なるため、男女計の平均勤続年数だけではその企業の実情が見えてきません。 2.6 平均残業時間は手がかりになるか?  ここまで、3年後離職率からブラック企業を見分ける方法について解説してきました。離職 率と共に、残業時間もブラック企業を見分ける重要な指標となるのではないか、と思う方もい らっしゃるでしょう。長時間労働は、ブラック企業の大きな特徴の1つです。  しかしながら、 『就職四季報』には【平均残業時間】しか記載がなく、これはブラック 企業を見分ける十分な指標にはならないと筆者は考えます。  1つ目の理由は、職種や性別、年齢によって残業時間が大きく異なる可能性があるからです。 一般職(比較的補助的な業務を行う職)の女性は毎日短い残業時間で退社する一方で、総合職 (基幹的な業務を行う職)の 20 代、30 代の男性は夜遅くまで残業しているという企業もあり ます。そういう場合、従業員全体の平均残業時間は、若手総合職男性の実態を表しません。  2つめの理由は、実態として長時間労働があっても、それが残業時間としてあらわれない可 能性があるからです。たとえば裁量労働制(※)をとっている場合、実際の労働時間にかかわ らず、支払われる給与は一定であり、残業時間というものが存在しなくなります。 27
  28. 28. ブラック企業対策プロジェクト 教育ユニット  裁量労働制を導入できる職種は限定されており、導入にあたっても一定の手続きが必要なの ですが、そのような手続き抜きに「キミは裁量労働制だから、残業代は出ないよ」と不当なた だ働きを強いられている場合もあります。 (※)業務の遂行手段や時間配分について、労働者本人の裁量にまかせ、労使の合意で定めた労 働時間数を働いたものとみなす制度  白戸工業の月平均残業時間は 18.0 時間。一方、喪黒商事の月平均残業時間は 7.9 時間。 「白 戸工業の方が、喪黒商事よりも残業時間が長いんだ・・・!」と思う人もいるでしょうが、筆 者であれば、 「喪黒商事の 7.9 時間って、労働時間の実態を反映しているのだろうか?」と思い ます。 ◆平均残業時間は手がかりになるか? 白戸工業(株) (株)喪黒商事 注) 『就職四季報 総合版 2015 年版』では、上記のサンプルとは異なり、月平均残 業時間は各社の項目の右上に「残業(月) 」として表示されています。  なお、 【平均残業時間】を見る際には、 【有休消化年平均】の日数(有給休暇を実際にどれ だけ取得したかの平均日数)も見ておきましょう。他社と比較して日数がかなり少ない場合や 「NA」 (無回答)の場合は、休みがとりにくい職場環境であることが推測されます。 ◆ 【有休消化年平均】の日数も他社と比較を 白戸工業(株) (株)喪黒商事 2.7 設立年にも注目  以上、3年後離職率を見る、従業員数と採用数を比較する、平均勤続年数を見る、という3 つの「見分け方」を紹介してきました。他に見ていただきたい点として、企業の設立年があり ます。設立年が新しく、企業としての歴史が浅い場合、労務管理のしくみが整ってい なかったり、 人を育てる文化が定着していなかったり、 創業者の発言力 指導力が強く、 ・ 他の役職者が創業者の意向に逆らえなかったりする場合があります。 28
  29. 29. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  白戸工業の設立年は 1944 年です。白戸工業は戦前からある歴史の長い企業であり、社長は 何人も交替してきたと推測されます。社長が変わっても今も存続している企業です。  一方、 喪黒商事の設立年は 2005 年。 設立時の創業者がそのまま社長の座にとどまっているか、 もしくは会長として実質的に企業を支配している可能性が高いと考えられます。  創業者の力が強いことは、必ずしも問題であるわけではありません。日本を代表する大手有 名企業の中には、創業者が強いリーダーシップを発揮し、その理念が長く受け継がれることに よって、今も事業を成長させ続けている企業も多くあります。しかし他方で、創業者が大変な 努力の末に企業を成長させたという成功体験をもとに、従業員にも同様の働き方を求め、労働 法を無視した労務管理を行っているような企業もあります。  設立年が新しい企業の場合は、 創業者は誰であるのか、 どのように創業した企業であるのか (創 業者が一代で築き上げたのか、別の会社のグループ会社なのか、等) 、創業者はどのような経営 方針をもった人物であるのか、 現在の役員に創業者や創業者と同姓の人物がいるかどうか、 等を、 3.2 の企業のホームページや 3.5 の新聞記事データベース、3.6 の雑誌記事データベースなど を使って調べてみることをお勧めします。  なお、 「同族経営」と呼ばれる企業があります。特定の親族などが代々の社長を務めている、 経営層を支配している、といった企業です。そういう企業を問題のある企業である、と見るの は短絡的です。しっかりとした方針のもとに、安定した経営を長い歴史にわたって続けている 同族経営の企業も多数あります。一方で、特定の親族の力が強すぎて企業としての健全な統制 力が失われていく企業もあります。そのあたりも、多方面の情報を集めて、判断してみてくだ さい。 ブラック企業を見分ける手がかりは、注意し なければ見落としてしまいがちなもの。 企業のイメージに惑わされてはいけない。 29
  30. 30. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 2.8 人物重視の採用選考プロセス?  採用選考プロセスにも目をむけてください。応募書類と短い時間の面接だけで内定を出すな ど、採用選考プロセスがあまりに簡素な場合は注意が必要です。  多くの大手人気企業は、面接だけでなく、Web テストや筆記試験など、応募者の知的な能 力を測る適性検査を実施しています。適性検査の実施は企業にとっては費用がかかりますが、 面接の人数を絞り込む上で、また、一定水準以上の知的な能力をもった学生を採用する上で、 適性検査を不可欠と考えている企業が多いようです。面接も、1回だけでなく、より上位の役 職者(人事部長など)が加わる面接を加え、合計3回程度実施する企業が多いようです。1回 目の面接よりも2回目の面接、また、2回目の面接よりも3回目の面接の方が、よりじっくり と行われ、企業の事業内容や仕事の理解度も問われることが普通です。  一方で、知的な能力を問う適性検査がなく、応募書類と短い面接だけ、という採用プロセス の企業もあります。適性検査でふるい落とさずに「人物重視」で私のことをよく見てくれる、 と思いがちですが、注意が必要です。適性検査を実施せずに応募書類と短い面接だけで採用を 決める企業の中には、採用に時間とお金をかけずに入社させ、入社後の早い段階から高い成果 を要求して、その要求にこたえられる人だけを残し、要求にこたえられない人は早期に辞めさ せていく、という企業もあります。   そういう企業では、採用選考の段階で、あなたの「能力」よりも「やる気」や「熱意」を 重視したり、入社後の厳しい仕事を通して「成長」できることを自社の魅力として PR してい たりすることもあります。自社の業務内容や仕事内容を詳しく説明せずに、また、あなたの 能力を問うプロセスも省略して、 「やる気」 「熱意」 「成長」といったことばかりを抽象 的な形で強調している企業は、要注意と考えた方がよいでしょう。   『就職四季報』には「試験情報」として、筆記試験の有無、面接の回数、選考の倍率なども 記されていますので、参考にしてください。 ◆試験の内容も確認を! 白戸工業(株) (株)喪黒商事 筆記試験なし・人物重視 30
  31. 31. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 2.9 初任給の高さに釣られないで  アルバイトを探す場合、 「時給」は大きな注目ポイントでしょう。では「初任給」は、就職活 動において重要なポイントでしょうか? ■ボーナスの存在を忘れない  白戸工業の大卒初任給は 213,500 円、喪黒商事の大卒初任給は 220,000 円。初任給だけ 見ると、喪黒商事の方が賃金は高そうですが、ボーナスの欄を見ると白戸工業は年 192 万で あるのに対し、喪黒商事は年 23 万 9083 円でしかありません(ただし、いずれも従業員の平 均額) 。月給とボーナスを合わせた年収で見れば、白戸工業の方がずっと高額になるでしょう。  企業によって、ボーナスとしてどの程度の額を支払うかには、大きな差があります。どの程 度の額のボーナスを支払わなければならないか、といった一般的な規定はありません。年収を 考えたときに、初任給だけではわからない「ボーナス」額の違いがあることに注意して ください。 ◆月給だけを見ない。ボーナスの差にも注目 白戸工業(株) (株)喪黒商事 ■賃金は上昇するか、上昇後の賃金の幅は?  また、初任給から年々、順調に賃金が上がっていく企業もあれば、あまり賃金が上が 『就職四季報』には 35 歳賃金の額が示されていますが、その額は業 らない企業もあります。 種によって、また企業によって、大きく異なります。  白戸工業では、35 歳賃金は「348,000(342,000 ∼ 354,000) 」と表示されています。 平均で月額 348, 000 円、 最低額が 342,000 円、 最高額が 354,000 円、 という意味です(時 間外勤務手当などを除く) 。初任給は全員同額の企業が多いですが、勤続年数が長くなるにつれ て、高度な仕事ができる人や高い業績を上げられる人は相対的に高い賃金を得るようになりま す。そのため、入社後の賃金額には次第に幅が出てきます。  一方の喪黒商事を見てみると、35 歳賃金は「500,000(335,000 ∼ 800,000) 」です。 喪黒商事の方が 35 歳賃金は高いように見えますが、前に見たように、喪黒商事は多くの社員 が数年で辞めていく企業です。35 歳まで残っている人が一体どれだけいるだろうか? という 疑問がまずあります。 31
  32. 32. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  また、喪黒商事の 35 歳賃金は、最低額が 335,000 円、最高額が 800,000 円と、35 歳 賃金の幅が非常に大きくなっています。一部の例外的な社員が 80 万円という高額の賃金 を得ているせいで、平均額が 50 万円になっている、と見るのが妥当でしょう。最低額同士で 35 歳賃金の額を比較してみると、白戸工業は 342,000 円、喪黒商事は 335,000 円であり、 白戸工業の方が高い賃金水準となっています。 ◆35 歳賃金の額と幅に注目 白戸工業(株) (株)喪黒商事 ■平均年収を見るときには平均年齢も確認を  なお、各企業情報の右上欄には【平均年収】が大きく記載されていますが、平均年収は中高 年層の社員が多い企業であるか、若手社員が多い企業であるかによって大きく異なります。平 均年収を見る場合は、平均年収の横に記載されてある平均年齢もあわせて確認してください。 ◆平均年収を見るときは平均年齢も確認を 白戸工業(株) (株)喪黒商事 2.10 売上や利益が伸びていればいいわけではない  企業の売上や利益が大幅に減少し続けていると、その企業はいつまで存続できるのか、入社 後にその企業で働き続けられるのか、不安になります。  一方で、順調に売上や利益を伸ばしている企業は、株主として見た場合には優良企業ですが、 従業員として見た場合には必ずしも優良企業とは限りません。  2.6 の平均残業時間の項で見たように、いくら働いても「裁量労働制」だからと残業代を支 払わずに、長時間労働を強いるような企業もあります。また、残業代は支払うが一定時間分し か支払わない、という違法な企業もあります。残業代は一定時間分しか支払わないという違法 企業で働く場合、長時間のただ働きをすればするほど、従業員は「もらい損」となりますが、 従業員が長時間働くことによって企業の売上は伸びます。また、ただ働きの分の人件費を企業 は払わずに済むので、利益も伸びていきます。 32
  33. 33.  そのように、残業代を正当に支払わない長時間労働によって売上や利益を伸ばしてい る企業もあるのです。 2.11 他業種や同業他社との比較を  ここまでが、 『就職四季報』を活用したブラック企業の「見分け方」の手がかりの説明です。 ある企業がブラック企業かそうでないかを判定するはっきりとした基準は結局示してくれな かった――と思われるかもしれません。 確かに基準を示すことは容易ではありません。 けれども、 「見る目」を養うことは可能です。  ここまでの説明を手がかりに、皆さんにぜひやってみていただきたいのは、 『就職四季報』 の本を実際に手にとって、さまざまな企業を比較してみることです。 この冊子では白戸工業と喪黒商事という架空の2つの企業を比較してきました。同じように、 自分の興味のある企業について、他社と比較してみてください。  その際にまず、自分の興味のある業種と、他の業種を比較し、その業種の賃金水準や 離職率などは、だいたいこのぐらい、という「おおよその見当」がつくようになるの が理想です。自分が行きたいと思っている企業は、業種全体として離職率が高めの業種かもし れません。35 歳賃金の水準が低い業種かもしれません。そのことは、同じ業種の他の企業と 比較するだけでは見えてきません。  その上で、 自分の興味のある業種の中で、 興味のある企業同士を比較してみてください。 業種全体としては離職率が高い業種であっても、例外的に離職率が低い企業があるかもしれま せん。その企業は労務管理がしっかりしている企業であるのかもしれませんし、業界の中で強 みとなる技術をもった企業であるのかもしれません。そのあたりを、さまざまな項目を比較す ることを通じて探ってみてください。 2.12 データベースから過去との比較を  さらに、あなたの大学の図書館に「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー」というデー タベースが導入されていれば、そのデータベースを使うことによって、過去にさかのぼって『就 職四季報』の企業データを見ることができます。1 冊の『就職四季報』には採用実績数や売上、 利益などについて、過去3年間のデータしか掲載されていませんが、データベースを使えば、 それ以前のデータも入手して、より詳しい検討ができます。  また、特定の企業の過去のデータを見比べてみると、離職率などある項目のデータが、ある 時期には掲載されていたのに、ある時期からは「NA(無回答) 」となっている場合があります。 そういう場合は、 なぜその項目の回答を拒否するようになったのか、 なにか不都合が生じたのか、 背景を探ってみてはいかがでしょう。  逆に、ある項目がこれまでは「NA(無回答) 」であったのに、情報を公開するようになった 場合もあるかもしれません。そのような変化から、その企業の情報公開へ の姿勢を読み取るこ とも可能でしょう。 33
  34. 34. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 2.13 「総合版」 「女子版」 「中堅・中小企業版」  ここまでは、就職四季報』の「総合版」をもとに説明してきました。女性の場合は「女子版」 『 もぜひ活用してください。また、男性の場合も「女子版」を読むことによって、それぞれの企 業の「働きやすさ」をうかがうことができるかもしれません。女性が結婚・出産後も働き続け ている企業、 女性の役職者が多数いる企業は、 ワーク ライフ バランス(仕事と生活のバランス) ・ ・ に配慮した企業である可能性が高いです。そのような企業は、男性にとっても働きやすい企業 と考えられます。  また、総合版」 「 に収録されている企業は、 紙面の制約から比較的大手の企業に限られています。 それでも、自分が名前を知らない企業がたくさん掲載されていると思いますが、より中堅・中 小企業にも目を向けたいという場合には「中堅・中小企業版」も活用してください。  なお、総合版」と「女子版」に関しては、就職四季報』編集部より『 「 『 『就職四季報』パーフェ クト活用術』という本が 2010 年に出版されています(東洋経済新報社)『就職四季報』の各 。 項目の見方や、注目ポイントなどについて、より詳しい説明は、そちらをご覧ください。また、 企業情報を掲載した『会社四季報』と、就職に必要な情報を掲載した『就職四季報』の見方を あわせて解説した本として、 田宮寛之(東洋経済HRオンライン編集長)『四季報』で勝つ就活』 『 (三修社、2013 年)という本も出版されています。 2.14 そもそも、掲載がなかったら  最後に、 「 『就職四季報』を見てみたけれど、 自分が関心を持っている企業は載っていなかった」 という場合はどうすればよいでしょうか。  掲載がない場合には、2つの可能性があります。  第1に、そもそも調査回答の依頼が、就職四季報編集部からその企業に対して行われていな い可能性があります。就職四季報編集部では、知名度が高い、採用数が多い、上場企業など回 答に協力が期待できる、といった企業に対して、業種の偏りなどを考慮したうえで調査対象を 選定し、回答を依頼しているそうです。 34
  35. 35. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  第2に、 就職四季報編集部が調査票をその企業に届け、 回答を依頼したが、 回答が得られなかっ たという可能性もあります。その場合、 すべての項目が 「NA (無回答)で掲載されるのではなく、 」 そもそもその企業は掲載されなくなります。  誰もが知っているメガバンクが『就職四季報』に載っていない――そういう場合は、その企 業が回答を拒否したと考えることができます。政府の調査ではないため、就職四季報編集部に は回答を義務づける権限はありません。  いずれにしても、 『就職四季報』に掲載がない企業の場合は、第 3 章の「客観データから見 分ける【発展編】 」に示す方法によって、情報を探してみてください。 これで「客観データから見分ける」 【基礎編】は終わり。 次は発展編だ! 35
  36. 36. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 3. 客観データから見分ける 【発展編】 ―情報源は、他にもいろいろ― 上西充子 新聞記事データベースは、 就職活動にも活用を! 36
  37. 37. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」   『就職四季報』の他にも、ブラック企業を見分けるための手がかりはいろいろあります。以下 では主なものについて、簡単に説明します。 3.1 概要 コレを見よう! どこに注目? ココに相談しよう! なぜ注目? 説明 ・ 1. 企業のホームページ 沿革と役員構成 ・ 創業者の支配力に注意 ・ ニュースリリースや投資家 ・ 不都合な情報も公表 3.2 ・ 『就職四季報』にデータがない 3.3 向け情報(IR) 2. 有価証券報告書 ・ 平均年齢と平均年収 ・ 3. 会社四季報 従業員数、平均年齢、平均 ときに注目 ・ 勤続年数、平均年間給与 ・ 労働組合の有無 『就職四季報』にデータがない ときに注目 ・ 労働組合があれば、団体交渉 3.4 のルートが開ける 4. 新聞記事データベース 5. 雑誌記事データベース 6. 大学の就職部・キャリ アセンター ・ 企業名で検索を ・ 業界や企業名で検索を ・ 業界・企業の分析記事あり ・ 経営者インタビュー ・ 経営者の方針に注目 ・ 職員に個別相談を ・ 問題のある企業を把握している 代不払いなどが出てくることも 可能性あり ・ 7. 新卒応援ハローワーク 裁判の結果や労災認定、残業 ・ ・ ・ 3.6 3.7 就職ナビに載らない優良求人 あり 職員に個別相談を 3.5 問題のある企業を把握している 3.8 可能性あり 8. 「若者応援企業」 9. その企業・その業界で   毎日の残業や有給休暇の 積極的に数値を開示している 企業  取得など労働条件の実態  複数の大人  採用実績、定着状況など 働く先輩 10. 過去3年度分の新卒者の 一般公開されている情報から はわからない実情がわかる 大学のキャリアセンター職   知らない情報も教えてくれるか 3.10 一緒に情報を検討してもらおう 員、ハローワークの相談 3.9 員、ゼミの先生、働いてい る先輩、保護者、等々 37 も 3.11
  38. 38. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 3.2 企業のホームページで沿革や役員構成をチェック  企業のホームページで多くの学生が見るのは 「会社情報」 「採用情報」 と でしょう。 「会社情報」 では 2.7 で説明したように、設立からのその企業の歴史(沿革)や、役員構成に注目し てください。 また、 事業概要もよく見ておくべきでしょう。 消費者として見た企業のイメージと、 消費者としてなじみがある製品やサー 実際の事業概要はかなり異なっている場合があります。 ビスを提供していても、それはその企業の事業のごく一部を占めるにすぎず、別の事業者向け の製品やサービスを提供するビジネスがその企業の主力事業である、ということもしばしばあ ります。消費者として見た企業のイメージで仕事内容を想像していても、実際の仕事は大きく 異なる場合があります。  さらに「ニュースリリース」の欄も見てみましょう。新製品を出した、新しい事業に乗り 出した、といった情報の他に、製品に不具合が生じて回収を行っている、このような事故を起 こした、といった情報が出ていることもあります。ニュースリリースでそのような事実があっ たことを知った場合には、3.5 の新聞記事データベースや 3.6 の雑誌記事データベースなどを 使ってさらに詳しく調べてみましょう。より詳細な事実関係はどうであったのか、なぜそのよ うなことが起こったのか、背景にある問題は何か、などを探ってみるのです。  また、株式を公開している企業の場合は「投資家向け情報(IR) に、企業の経営方針や 」 業績に関する詳しい情報があります。株主にとっては、業績悪化につながる問題は見逃すこと ができない情報であり、企業は株主に対して、そのような情報を隠すことなく誠実に開示する ことが求められています。そのため、企業にとってあまり積極的に公表したくない不都合 な情報は、 「ニュースリリース」よりも「投資家向け情報(IR) 」の方に詳しく載って いることがあります。 3.3  『会社四季報』にも平均年齢と平均年収の記載   『就職四季報』が、就職活動を行う学生のために必要な企業情報をコンパクトにまとめた書 籍であるのに対し、 『会社四季報』は投資家などが企業の経営状態を知るために必要な情報を コンパクトにまとめたものです。企業の役員名などは、就職四季報』 『 には載っていませんが、会 『 社四季報』には載っています。株主は誰(あるいは、どういう企業)であるか、もわかります。 また、大手企業で『就職四季報』に企業情報がない企業であっても、 『会社四季報』に 『会社四季報』には平均年齢と平均年収の欄があるので、 は情報がある場合があります。 そこに注目してみてください。 38
  39. 39. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 3.4 有価証券報告書から労働組合の有無をチェック ■有価証券報告書とは  有価証券報告書とは、株式上場している企業が、定められた項目を定期的に報告するための ものです。金融庁が設けている「EDINET」というサイト(※)の「書類検索」を用いて、誰 でも自由に各企業の有価証券報告書の内容を無料で確認することができます。 ※http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/EKW0EZ0001.html?lgKbn=2&dflg=0&iflg=0 (EDINET の書類検索画面。 提出者/発行者/ファンド」 「 に会社名を入力し、書類種別」 「有 「 では 価証券報告書」をチェックし、 「検索」ボタンを押してみよう) ■ 「従業員の状況」に注目  EDINET を通じて、最新の年度の有価証券報告書を開いてみてください。左側に目次が現れ ます。 「第一部 企業情報」「第1 企業の概況」「5 従業員の状況」が注目点です。 → → まず、 「提出会社の状況」から会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与 『就職四季報』に記載がない場合でも、この『有価証券報告書』の「従業 を確認しましょう。 員の状況」の項目を通じて、働かせ方を推測する上で、最低限必要な情報がわかります。  ただし本社が持株会社であってさまざまな事業はグループ会社が担っているという場合、こ こに表れてくるのはそれぞれの事業を行っているグループ会社の従業員の状況ではなく、本社 の一握りの従業員の状況を表す情報です。そのため、その場合は、それぞれの事業で働く従業 員の実情は、残念ながら把握できません。 ■労働組合の有無に注目  次に同じ「5 従業員の状況」から、 「労働組合の状況」を確認してください。労働組合が 結成されているか否か、が記載されています。 39
  40. 40. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  労働組合とは、労働者が団結して労働条件などについて使用者と交渉するための団体です。 一人ひとりの労働者が労働条件に不満があったり、不当な扱いを受けていたりしても、個人で 使用者と交渉するには限界があります。個人としての労働者の立場は使用者に比べて弱い―― その力関係の不均衡を補うのが労働組合です。労働組合を結成する権利(団結権) 、労働組合を 通じて交渉する権利(団体交渉権) 、労働者が求める労働条件を実現するためにストライキなど の団体行動に出る権利(団体行動権)は、憲法第 28 条によって保障されています。  労働組合があれば労働組合を通じて使用者側と交渉するルートが開けます。労働組合 が団体交渉を申し入れた場合、使用者はそれを拒むことはできません。他方で、一人の個人と しての社員が労働条件に不満をもっても、その不満には耳を貸さないということが使用者には できてしまいます。  労働組合がストライキなどの目立つ活動をおこなっていなくても、労働組合が存在するこ とそのものが、使用者による好き勝手な働かせ方を抑制している、ということは十分 考えられます。しかしながら、新しい産業分野や社歴の浅い企業の場合には、労働組合が存在 しないケースも多く見られます(※) 。 (※)企業に労働組合がない場合、個人単位で加盟できる企業外のユニオンに加盟して団体交渉 を行うという方法があります。  学生の皆さんにとっては労働組合という存在はイメージしにくい、遠い存在かもしれません が、労働組合があるかどうかは、ブラック企業を見分ける上での1つの重要な指標とな ります。  ただし、 労働組合があれば必ずあなたの権利や労働条件が守られる、 とは限りません。それは、 その労働組合にどの程度の力があるか、その労働組合がどのような問題に力を入れているか、 に左右されます。また、しっかりとした方針をもった産業別組合に属している労働組合の場合 には、上部団体である産業別組合の力も借りながら、企業内の労働条件の改善に積極的に取り 組んでいる場合があります。 company union 40
  41. 41. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 3.5 新聞記事データベースで気になる事実をチェック ■匿名掲示板よりもデータベースの活用を  皆さんは大学の講義や図書館ガイダンスの中で大学図書の新聞記事データベースや雑誌記事 データベースの使い方を学んだことはあるでしょうか。これらのデータベースは、レポートや 卒論を書く際に利用するだけでなく、就職活動でも活用していただきたいものです。  ある企業がブラック企業かどうか、という情報を得たい場合には、皆さんは検索画面で「〇 〇 (企業名)  ブラック」といったキーワードを入力して情報を集めるかもしれません。それに よってある程度、情報は集まりますが、その多くは匿名の掲示板や匿名のブログであり、どこ までその内容が本当か、判断がつかないものが多いでしょう。より信頼性の高い情報を得る ためには、新聞記事や、公刊されている雑誌の記事などをデータベースで調べてみる ことをお勧めします。  大学図書館のホームページには、所蔵している図書を検索するための画面の他に、新聞記事、 雑誌記事、学術論文、企業情報などのデータベースを検索するための画面があります。 ■新聞記事データベースの使い方  ここで新聞記事データベースと呼んでいるのは、キーワードなどで検索し、過去の新聞記事 を調べてその内容を読むことができるものです。 「日経テレコン 21(日本経済新聞や日経産業 新聞の記事などを収録)、 」「聞蔵Ⅱ (朝日新聞や週刊アエラなどの記事を収録)、 」「毎索(毎日新 聞やエコノミストの記事などを収録)「ヨミダス歴史館(読売新聞の記事などを収録) 、 」などが 代表的なものです。  新聞記事データベースでは「〇〇 (企業名)  ブラック」とキーワードを入れても記事は出て きません。まずは企業名だけを入れてみてください。たくさんの記事の見出しの一覧が並 びます。その中から気になる記事の見出しを選ぶと、記事の内容を閲覧することができます。 売上の不振や利益の減少、早期退職の募集など、企業としての先行きが心配な記事が出てくる かもしれません。経理の不正や製品の欠陥などを知るきっかけになるかもしれません。そのよ うな情報の中で、サービス残業(残業代不払い)を労働基準監督署が摘発したという記事や、 過労死・過労自殺が労災(労働災害)として認定されたという記事なども出てくるかもしれま せん。   「〇〇 (企業名) 」だけだと、大企業の場合は記事の一覧がたくさん出すぎてしまう場合があり ます。 そういう場合は 「〇〇 (企業名)  判決」〇〇 「 (企業名)  労災」〇〇 「 (企業名)  残業」 など、関連しそうなキーワードを入れてみてください。  たとえば「電通 過労自殺」と入力すると、電通の若手社員が長時間労働の末に自殺したこ とについて、企業の責任を認めた最高裁判決が 2000 年3月 24 日に出たことが記事を通して わかります。これは過労自殺への企業の責任が最高裁で認定された初めての例として有名です が、電通で過労自殺が起きていたことを知らない人にとっては、新聞データベースの検索を通 41
  42. 42. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 じて初めて知ることができる事実でしょう。一連の記事を読むと、過労自殺に追い込まれた男 性(当時 24 歳)が、いかに異常な長時間労働の状態にあったかが具体的にわかります。  また、 新聞記事データベースでは「過労死」 「名ばかり管理職」 「裁量労働制」 「みなし労働」 「派 遣切り」など、働かせ方にかかわる様々なキーワードを入れて、そのキーワードにかかわる出 来事や解説を読むことも可能です。 3.6 雑誌記事データベースでより詳しい背景や経営者 の方針をチェック  雑誌記事データベースには、(1) 雑誌の記事の内容まで読むことができるものと、(2) 雑誌の 記事の見出しとその記事の掲載誌名・掲載年月日・掲載号などを調べることはできるが記事の 内容を読むことはできないもの、の2種類があります。  雑誌記事データベースは、 一般向けビジネス雑誌( 『週刊東洋経済』 、 『週刊エコノミスト』 、 『週 刊ダイヤモンド』 日経ビジネス』など)や、 、 『 人事担当者向け専門誌( 『労政時報』 企業と人材』 、 『 など) 、特定業界(建築業界、広告業界など)に向けた専門誌などが検索できるものです。代表 的なデータベースとして、 「MAGAZINEPLUS」があり、記事そのものを読むことはできませ んが、各種雑誌の記事を幅広く検索できます。 ■ビジネス雑誌や人事担当者向け専門誌の活用を   『週刊東洋経済』などのビジネス雑誌を手にとったことがない人もいるでしょうが、ビジネ ス雑誌では新聞記事よりも詳しく、個別の業界や個別の企業の分析記事を読むことが できます。また、経営者のインタビュー記事なども掲載されているので、経営者がどのよう な方針で事業展開や人材育成を行っているのかをうかがい知ることができます。  さらに人事担当者向け専門誌『労政時報』などでは、企業の人材育成、労働時間管理、女性 活用など、様々な人事労務管理の課題を事例と共に取り上げています。まともな企業はどのよ うに人材育成を行っているか、といった事例を知ることは、ブラック企業の特徴を理解する上 でも役立つでしょう。   『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』『週刊ダイヤモンド』などは、過去何十年分もの雑誌 、 、 の現物を図書館の書庫に製本して所蔵している場合がありますので、 「MAGAZINEPLUS」の 検索結果から記事名・掲載誌名・掲載年月日・掲載号をメモして図書館に行き、その記事を読 むことができます。図書館にその雑誌の所蔵がない場合にも、 図書館のレファレンスカウンター の職員に相談すれば、別の図書館からコピーを取り寄せるなどの方策がとれる場合があります。 また、 「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー」というデータベースでは、2.12 で紹介 したように『就職四季報』の情報を閲覧できるほか、 『週刊東洋経済』の記事を検索し、記事の 内容を読むことができます。3.5 で紹介した新聞記事データベースのうち「毎索」では、 『週刊 エコノミスト』の記事を検索し、記事の内容を読むことができます。 42
  43. 43. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」  2013 年3月9日の『週刊東洋経済』の特別リポート「ユニクロ 疲弊する職場」は、急成長 を遂げたユニクロが、入社後半年で新入社員を店長にするという目標を強力に追及した結果、 長時間の「自己学習」や試験合格のプレッシャーの中で精神的に追い込まれた若手社員の離職 が相次ぎ、新卒入社社員の3年以内離職率が一時期には 50%を超えたことなどが詳しく報じ られ、注目を集めました。風間直樹記者らによるこの記事は「貧困ジャーナリズム大賞 2013」を受賞しています。 いろいろな媒体を活用して、情報を 取捨選択していきましょう。 3.7 大学の就職部・キャリアセンターは企業や先輩の 情報を持っている  就職活動中の学生の皆さん、大学の就職部・キャリアセンター(以下、キャリアセンターと 表記)は「就職が決まらなかったときに、最後に頼りにする場所」と思っていませんか? そう 思っているとしたら、ちょっと(かなり?)もったいないです。 ■キャリアセンターは独自の企業情報・先輩情報を持っている  大学のキャリアセンターは様々な企業との接点をもっています。大学で行われる企業説明会 や、その大学あてに出される求人などを通じて、キャリアセンターの職員は、その大学とつな がりが深い企業の実際の姿を学生よりもよく知っています。  また、内定や入社、退職をめぐって学生が企業とトラブルになってキャリアセンターに相談 に来ることもあり、 キャリアセンターの職員は問題事例を蓄積し、 内部的に共有することも行っ ています。問題事例について、大学間で関係者が情報を共有することもあります。  さらに、大学によっては、先輩の就職先の情報を蓄積しているだけでなく、丁寧に追跡調査 をして、ある企業に就職した先輩がその企業で働き続けているのか、辞めたのかもデータとし て把握していることもあります。  そのような様々な活動を通じて、キャリアセンター職員は、学生があまり目を向けない 隠れた優良企業を把握していると同時に、あまりお勧めでない企業も把握しています。 ですが、隠れた優良企業は学内企業説明会などで積極的にPRされることはあっても、あまり お勧めできない企業について積極的に告知されることはありません。 43
  44. 44. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 ■なぜキャリアセンターはブラック企業を教えてくれないのか   「危ない企業についても積極的に知らせてくれるといいのに」――学生の皆さんはそう思うで しょう。けれど、ちょっと考えてみてください。大学のキャリアセンターが、 「ブラック企業リ スト」を作成して学生に配布する、といったことは可能でしょうか?   「なぜうちの企業はブラック企業リストに入れられているんだ !?」と企業側からクレームが ついたらどう対処したら良いでしょう? 訴訟に持ち込まれるかもしれません。ある学生が入社 後にひどいトラブルに遭遇した事例があったとしても、その学生の訴えに耳を傾けるだけでは、 問題の全体像は把握できません。その中で、ある企業を「ブラック企業」だと決めつけること には、大学として大きなリスクが伴うことが理解いただけるでしょうか? ■個別相談の活用を  そのため、ブラック企業に問題意識をもっているキャリアセンター職員も、なかなか学生に 注意喚起がしにくい、というのが現状です。よく聞くのは「個別相談に来てほしい」という 声です。個別の相談の場では、 「そこに就職した先輩からはこんな声も聞いているよ ・」といっ ・ た情報提供を行うことが可能です。  他方で、個別相談の場であっても、 「〇〇社から内定が出ました!」と満面の笑顔で報告に来 た学生に対しては、懸念があってもそれを伝えにくいのも事実でしょう。それに対し、学生か ら「この企業で就職を決めてよいかどうか、迷っているんですが・・」と相談があれば、 「こう いうところがちょっと気になるね。まだ就職活動を続けてみようか」と話を展開していくこと が可能です。  なお、キャリアセンターの職員もあらゆる企業について熟知しているわけではありません。 世間的に有名な企業や大企業を、 根拠なく 「いい企業だよ」 と勧める場合もあるかもしれません。 キャリアセンター職員の言うことだから信用するとか、キャリアセンター職員の言うことなど 信用できないとかではなく、 「どういう点でいい企業だと思うのですか?」と具体的に話し合っ てみてください。 キャリアセンターの 個別相談を積極的に 活用しよう! 44
  45. 45. ブラック企業対策プロジェクト 「ブラック企業の見分け方」 3.8 新卒応援ハローワークの活用を ■ハローワークも独自の企業情報を持っている  キャリアセンターと同様に、個別企業との接点があり、個別企業の内情をよく把握している のはハローワークです。ハローワークも、求人を出す企業が、すぐに人が辞めるためにしょっ ちゅう求人を出しているような企業であるのか、丁寧に人を育てている安定した企業であるの かなど、様々な情報をもっています。しかし、3.7 のキャリアセンターの場合と同様に、その ような情報は内部的に共有されており、一般公開された情報ではありません。  そのため、ハローワークの職員からも、 「個別相談に来てほしい」という声を聞きます。キャ リアセンターの場合と同様、問週

×