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    Infosta(20110121) Infosta(20110121) Document Transcript

    • 特集:ソーシャルサービス活用指南 UDC 02:000.000:000.000 総論:ソーシャルサービス活用:これまでとこれから 岡本 真* 本特集の総論として,主に日本における図書館・情報センター,博物館・美術館,文書館等におけるソーシャルサービス活用の歴史の回顧と展望を行う。同時にこれからのソーシャルサービス活用において超えるべき課題について,1.ソーシャルサービス,ひいてはウェブのサービスを活用する意義の理解不足,2.希薄な費用対効果の意識,3.職員のスキル不足と組織の理解不足の 3 点を指摘し,最後に今後のさらなる活用が望まれるソーシャルサービスを 10 点紹介している。キーワード:ソーシャルメディア,Web 2.0,Government 2.0,オープンガバメント,Gov 2.0,Yahoo!知恵袋,Twitter,The Commons, Flickr げている。これらの特性を持つようにウェブが変化を遂げ1.はじめに つつあり,この事象を指して「Web 2.0」という言葉が用 そもそもソーシャルサービスとは何であろうか。その意 いられた。味するところは,実は多種多様であり,その解釈や定義は 以降の変化は目覚ましい。たとえば,本特集でも渡辺智人それぞれであるし,多様性に富んだものでいい。その意 暁が論じる Wikipedia を見てみよう。2004 年頃,果たし味では,ソーシャルサービスは,必ずしもインターネット て何人が Wikipedia の今日の隆盛を予見しただろうか。し上のサービスに限られない。たとえば,本特集で渡辺ゆき かし,2011 年のいま,Wikipedia はライブラリアンら,職のが紹介する「kumori」のような「しおり」という仕組み 業的な情報専門家の建前とは別に,私たちの生活におけるは,その代表格の一つだろう。 知的インフラの一つになっている。同様に本特集で折田明 この点に十分に注意を払った上で,ここでは便宜的にイ 子が論じる SNS や藤代裕之が挙げるブログも,相当程度ンターネット上のソーシャルサービスに限定して,図書館 に,少なくとも 2004 年当時には予想もしなかったほどにや情報センター,博物館・美術館,そして文書館における は,一般化してきている。ソーシャルサービス活用のこれまでとこれからを概観して このような「Web 2.0」的なサービスの普及とともに,いく。その上で,最終的には,上記のような諸機関におけ 「Web 2.0」という言葉が,実は使われなくなってきているるソーシャルサービス活用のこれからを見据えた際の課題 ことは,少なからぬ人々が実感するところだろう。このよと対策を論じ,いまこれからソーシャルサービスの活用に うな意識と態度の変化は, ウェブの次期バージョンであり,乗り出そうという方々に何らかの知見を提供したい。 目指す方向であると考えられた「Web 2.0」が,少なくと も,もはや実現しつつある現在であると感得されるように2.ソーシャルサービス活用のこれまで なったことによって生み出された。そして,かつて「Web2.1 「Web 2.0」から「ソーシャルサービス」へ 2.0」と呼ばれたものは,いまや本特集のテーマである「ソー 2011 年のいま振り返ってみれば,2004 年を一つの画期 シャルサービス」 ,あるいは「ソーシャルメディア」というにインターネット,特にその一部分であり,同時に大部分 言葉で表現されるようになってきた。つまり, 「ソーシャルでもあるワールド・ワイド・ウェブ(以下,ウェブ)は大 サービス」というものは,決して難しいものでも新しいもきな変化を始めた。その変化は,2005 年にティム・オライ のでもなく,かつて私たちが「Web 2.0」という言葉で呼リーが広めた「Web 2.0」という言葉に象徴される1)。オラ び表わしていたものの現在形なのである。 イリーは,当時目撃されたウェブの変化の兆しをとらえ, だが,ウェブの進化と共に,幾分の変化もある。たとえ「1.サービス提供者である」 データソースをコントロー 「2. ば,2009 年から 2010 年にかけて一気に普及した Twitterルできる」 「3.ユーザーの無意識な参加を促す」「4.集合 や動画中継サービスである USTREAM はその変化を見事知を利用する」 「5.ロングテールを理解する」 「6.プラッ に表している。これは「Web 2.0」以前から存在するコミュトホームを選ばない」 「7.リッチで軽い」という特徴を挙 ニティーサービスやコミュニケーションサービスと,現在 のソーシャルサービスの決定的な差異でもあるのだが,上 に挙げた二つのサービスには,「1.リアルタイム性」「2. *おかもと まこと アカデミック・リソース・ガイド(株) 〒231-0011 神奈川県横浜市中区相生町 3-61 泰生ビル 双方向性」「3.波及性」が極めて高いという特徴がある。 201 むろん,従来のサービスにもこれらの 3 要素がなかったわ (原稿受領 2010.12.3) けではない。だが,いま「極めて」と述べたように,これ ― 52 ― 情報の科学と技術 61 巻 2 号,52~57(2011)
    • ら 3 要素の度合いが従来とは比較にならないほど高いのが 用いたものだ 3)。ここには,各機関が所蔵するデジタル化現在のソーシャルサービスである。この背景には,常時接 した写真資料が集約されている。ウェブ上のサービスであ続によるインターネット利用の一般化やインターネット利 り,当然,誰でも自由に公開されている写真を閲覧できる用率の大幅な向上という事情があることも事実だが,単に のだが,それだけではない。公開されている写真一枚一枚これらの条件が整っただけではなく,いま隆盛を極める に,図書館的な文脈に沿えば件名付与にあたるタグをつけ,ソーシャルサービスは,いずれもこれらの 3 要素を極限ま コメントを投稿できるようになっている。この結果,たとで高める設計が施されていることも見逃せない。 えば,最初に“The Commons”に参画したアメリカ議会 たとえば,Twitter であればリツイート(Retweet)とい 図書館の場合,約 2 年間で公開した写真が 2,300 万回以上う他のユーザーの投稿を極めて簡単に引用・転載する機能 も閲覧され,さらに公開した写真について,約 28,000 人であり,USTREAM であれば,Twitter と連携することで, の利用者からコンタクトを得たという。この結果は何を意流れている映像に関する視聴者の反応を Twitter 上で流布 味するのだろうか。この点については,日本の事例を見渡する機能である。これらの機能によって,Twittter でも した後に考えてみよう。USTREAM でも最初はごく数人にしか知られていなかった発言や映像が瞬く間に数十人から数百人,ときには数千 2.3 国内におけるソーシャルサービス活用人から数万人にまで波及していくようになった。ある情報 翻って,日本国内における図書館や美術館・博物館,文がリアルタイムに伝播し,瞬時に多数の関心を喚起し,と 書館のソーシャルサービス活用はどのような状況にあるだきには支持を得るようになるという事例が目の当たりにさ ろうか。実は思うほどには低調ではない。少なくともこのれるようになった,そのため,ソーシャルサービスは企業 1,2 年の間に,以前に比べれば格段の進展を迎えている。や個人だけでなく,図書館や情報センター,美術館や博物 たとえば,Twitter を活用している図書館は試行的なもの館,文書館,あるいは役所や議会といった一般的にはやや も含めれば,把握しているだけで 20 館近い4)。さらには,お堅い印象のある機関からも,有力なコミュニケーション ソーシャルブックマークを活用したパスファインダーを提手段として認知されつつある。 供する茨城県のゆうき図書館や本棚の共有サービスである 「ブクログ」を利用する嘉悦大学情報メディアセンターのよ2.2 海外におけるソーシャルサービス活用 うな事例も出てきている。また,一見地味であるため注目 特に海外においては,市民サービス等の行政に関わる分 されることが乏しいが,他人,特にこの文脈では利用者と野でのソーシャルサービスの活用がすでに一般化しつつあ 予定を共有できる Google カレンダーを使って開館予定やる。この動向に勢いを与えたのが,2008 年に行われたアメ 行事予定を公開する嘉悦大学情報メディアセンターやエリカ大統領選挙におけるバラク・オバマ候補(現大統領) ル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)のような事例もによるウェブを活用した選挙戦術だ。後に実は自分自身で 見られるようになってきた。同じ Google カレンダーの活投稿していたわけではないことを公表したのだが,Twitter 用で言えば,神戸芸術工科大学によるアート&デザイン情でオバマ候補が自ら有権者に語りかけるという手法をはじ 報図書館は,アートとデザインに関するイベント情報を集め,各種ソーシャルサービスを駆使したことが一因となり, 約・共有するサービスを展開している。先に挙げた Flickrオバマは何番手目かの候補から一躍有力候補へ躍り出,そ “The Commons”には参加していないものの についても,してついには大統領に就任した。オバマ陣営によるソー 山中湖情報創造館による活用事例がある。シャルサービス活用は選挙戦術に留まるものではない。大 さて,このようにソーシャルサービスの活用事例は増え統領就任の翌日にオバマが発した指令により,いまアメリ てはきている。だが,まだ数え切れる程度の事例に留まっカでは「ガバメント 2.0」 (Government 2.0/Gov 2.0)や「オープンガバメント」(Open Government)と呼ばれるウェブを活用した政治の実現が国家レベルでの政策課題になっている2)。 とはいえ,海外の,特に図書館や情報センター,美術館や博物館,文書館等によるソーシャルサービス活用は,オバマ以前から着々と進められてきた。ブログや SNS,Twitter の活用は事例に事欠かないほどだ。事例の枚挙にいとまがないほどのソーシャルサービス活用だが,この後,日本の状況を考える上で極めて示唆的な事例を一つだけ紹介しておこう。アメリカの議会図書館や国立公文書館をはじめ,世界各地の図書館,博物館,美術館,文書館等,約50 の機関が参加する“The Commons” (ザ・コモンズ)と 図 1 アート&デザイン情報図書館 http://infolib.kobe-du.ac.jp/いう取り組みがある。 これはアメリカの Yahoo! Inc.が提供 右側に表示されたカレンダーから任意のイベントを自分のする Flickr という世界最大級の写真の投稿・共有サイトを Google カレンダーに取り込める。 ― 53 ― 情報の科学と技術 61 巻 2 号(2011)
    • ているとも言えるだろう。Twitter のようなソーシャル はブックポストといったサービスポイントの地図をサービス活用に乗り出す機関が絶対数に比べればまだ少な Gooogle マップや Yahoo!地図の上につくることが考えられいだけではない。すでに挙げている USTREAM や,2010 る。往々に図書館等のサイトには自製の地図が掲載されて年から日本でも普及し始めたオープン型 SNS である いる。これはこれでいいのだが,併存する形で複数のスポッFacebook,世界最大規模の Q&A サイトである Yahoo!知恵 ト情報を集約し,かつ利用者が自身の地図に取り込むこと袋,他人(利用者)とスポット情報の共有が可能な Google ができるような地図をつくってもよいのではないだろうマップのマイマップ機能や Yahoo!地図のワイワイマップ か。参考までに,筆者が作成した Google マップの活用事機能を用いた事例は,まだ見当たらないのも厳然たる事実 例を挙げておこう。である。ましてや,Wikipedia での記事作成に関与しようという図書館や博物館・美術館, 文書館は登場してこない。 確かに,ソーシャルサービスの活用は,一定の普及は見つつある。しかし,一握りの機関がトップランナーとして数歩先に進む一方で,大部分の機関ではソーシャルサービス活用は一般化には至っていない。これが,日本の図書館,博物館や美術館,文書館の実情だ。では,なぜ,この先の一歩へと進まないのだろうか。ソーシャルサービス活用の「これから」を考えつつ,この点を考えていこう。3.ソーシャルサービス活用のこれから3.1 眼前に広がるソーシャルサービス活用のフロンティ 図 2 箱根町社会教育センター図書室移動図書館の巡回地点 ア http://goo.gl/maps/phzW まず,事例が見当たらないと述べた幾つかのソーシャル 地図上の任意のスポット情報を自分のマイマップに取り込める。サービスについて,その活用方法を考えてみよう。たとえば,Q&A サービスの Yahoo!知恵袋がある。このサービス 以上,二つのソーシャルサービスについて,想定できるは,筆者が Yahoo! JAPAN に在職していた際に企画・設計 活用事例を挙げてみた。だが,これらの事例は,決して思し,公開したものだが,当初から図書館におけるレファレ いつくのが難しいものではないはずだ。むしろ,利用者のンスサービスを超えるサービスにするというイメージを抱 多様なニーズの最前線にいる図書館,博物館や美術館,文いていた。実際には様々な試行錯誤があったことは事実だ 書館の関係者であれば,もっと実用に即した活用事例を挙が,在任中一貫して考えていたのは,図書館においてはや げられることだろう。それにもかかわらず,多種多様な事や忌避される傾向にある専門性を必要としない簡易な質 例が出てこない理由はどこにあるのだろうか。制度的な理問・相談,いわゆるクイックレファレンスを許容すること 由を別とすれば,図書館等の機関においてソーシャルサーだ5)。この結果,Yahoo!知恵袋は 2004 年 4 月の公開から 7 ビス活用が進まない理由を筆者は以下の 3 点-1. ソーシャ年ほどで質問・回答の総数が 2 億件ほどになっている。 ルサービスを,ひいてはウェブのサービス活用する意義の この Yahoo!知恵袋に対して,図書館関係者からよく聞く 理解不足,2.希薄な費用対効果の意識,3.職員のスキル評価の典型がある。いわく,「回答の品質が信頼できない」 不足と組織の理解不足-に渡って考えている。以下では,である。このような評価の背後には,図書館のレファレン これらの要素を検討していこう。スは品質が高いという暗黙の了解があることは想像に難くない。その是非はここでは論じないが,仮に図書館のレ 3.2 ソーシャルサービスを活用する意義ファレンスが Yahoo!知恵袋における質問・回答に対して まず,そもそもソーシャルサービスに限らず,ウェブの品質の点で優位性があるのなら,図書館が,つまりはレ サービスを活用する意義はどこにあるのだろうか。もちろファレンスにあたるライブラリアンが Yahoo!知恵袋に公 ん,Twitter や USTREAM が世間で流行しているから,活式に参加し,回答すればよい。せっかくの知識と経験をカ 用しようというわけではないだろう。トレンドに乗る意義ウンターでのレファレンスやウェブレファレンスといった を全否定はしないが,ソーシャルサービスを活用し,成果図書館の枠組みの中だけに閉ざしておく理由はない。公共 を引き出すにはやはり,その活用に関する意義を十分に考図書館であれば,その自治体に関する質問に図書館からの える必要がある。回答であることを明示した上で,質問に回答すればその図 いまやどこの図書館・情報センター,博物館・美術館,書館の認知度は高まり,図書館の有用性への理解も深まる 文書館でも開設が当然になっているウェブサイトから考えはずだ。 てみよう。半ば開設することが当然になってはいるが, ウェ あるいは,スポット情報の共有が可能な地図サービスは ブサイトを開設する最大の理由は,ウェブサイトを開設しどのように活用できるだろうか。まず手始めとしては,公 なければ,あたかもその組織が存在しないかのような印象共図書館であれ,大学図書館であれ,本館や分館,あるい を人々に与えてしまうからだ。その是非は別として,いま ― 54 ― 情報の科学と技術 61 巻 2 号(2011)
    • や人々の調べ物の起点は検索エンジンになっている。わか 3.3 希薄な費用対効果の意識らないことや知りたいことがあれば,まず検索エンジンで ここまでの議論でソーシャルサービスを活用する意義,検索し,様々なウェブサイトを訪れる。ウェブ上にサイト あるいは活用しない理由がないことは明らかになったが,が存在しなければ,そもそもこの世の中に存在しないとい 現実にはそれでも活用事例が増えてこない。それはなぜだう印象を与えることを避けるために,図書館等の機関に限 ろうか。往々に耳にするのは,民間の事業者が提供するらず,様々な企業や団体が自らのウェブサイトを公開して ソーシャルサービスを利用することへの抵抗感に根差しいる。この流れの中で,検索エンジンを経由して意識的に, た反対意見である。代表的な反対意見はおおむね, 「公的なあるいは偶発的にサイトを訪れてもらい,そこで認知度を 機関が特定の民間事業者のサービスを利用するのは好まし高め,ウェブサイト上で提供するサービスを利用してもら くない」といったものだ。い,ときには来館してもらうという構図がもう何年も前に だが,これらの反対意見は根拠に乏しい。公的な機関でできあがっている。 あれ,内部にウェブ開発を専業で行える体制が整っていな 以上を前提にさらに議論を進めよう。では,どこにソー い限り,実施は調達という方法で民間事業者にサービスのシャルサービスを活用する意義があるのだろうか。まずは 開発や提供を発注している。こういった事情を考えれば,利用者の利便性の向上がある。先に挙げた Google カレン 民間事業者云々という理由はそもそも筋が通らない。そしダーや Google マップの活用事例は,利用者にどのような て,多数の事業者の中から特定 1 社のサービスを使用する利便性を与えているのかを考えてみよう。開館カレンダー ことの是非が問題であるならば,上で述べたソーシャルにしても,サービスポイントの地図にしても,図書館等の サービスを利用する意義を思い起こしてほしい。自らの機機関が自作の情報を自らのウェブサイトで公開することは 関のサイトよりはるかに大規模な利用者コミュニティーに決して問題ではない。しかし,冷静に考えてみれば,その 参画することで,その一部を誘導してくることに意義があ機関のサイトでしか使うことができない情報は果たして利 ると考えるのであれば,事業者間で最大規模のサービスを用者の利便性にかなっているだろうか。おそらく図書館や 採 用 すれ ばよ い だけ の話 であ る 。実 際, 前 述の “ The博物館等のサイトの中でも日本で最大のアクセス数がある Commons”では,Flickr を利用しているが,参画してい国立国会図書館ですら,Google カレンダーや Google マッ る機関の多くは,写真の投稿・共有サイトとしては Flickrプに利用者数では及ぶべくもない。であれば,利用者がよ に次ぐ規模である Picasa(運営者:Google)は採用していり使いやすく慣れ親しんだ機能でカレンダーや地図を提供 ない。要は費用対効果をどう考えるか,という問題だ。複したほうが利用者の便宜にかなっているはずだ。 数の事業者のサービスを採用するだけの余地があり,それ そして,この先にもう一つ見逃せない点がある。Google ぞれに費用にみあった効果が期待できるのであれば,複数カレンダーや Google マップに限らず,前述の様々なソー のサービスを採用すればよく,そこまでの費用対効果が望シャルサービスには,およそ個々の機関では集めようもな めないのであれば,ソーシャルサービス活用の意義に立ちいほど大量の人々が集っている。であれば,それらのソー 返り,最大規模のサービスを採用すればよいというそれだシャルサービス上でサービスを展開し,注目を集め,関心 けのことである。を持ってくれた人々の何割,何パーセントかを自らのウェ いま述べたことは, 極めて論理的な話だが, それでもソーブサイトに誘導してくるほうが,いたずらに自らのサイト シャルサービス活用はなかなか進まない。なぜだろうか。のアクセス向上に四苦八苦するよりはるかに効果的だ。こ 組織における説明責任の所在が入れ違ってしまっているかれは極めて単純な話である。たとえば,1,000 万人の利用 らだ。ソーシャルサービスの活用は,往々により若く下位者がいるソーシャルサービス上でその 1%に過ぎない 10 の職にある者から,よりベテランの上位の職にある者へと万人の関心を集め(認知度を高める) ,さらにその 1%の 起案される。その際,これもよく耳にするのが, 「なぜ,従1,000 人を自らのウェブサイトに引き込む(利用率を高め 来の調達による発注方式ではなく,無償のソーシャルサーる)と考えてみよう。しかも,この 1,000 人は進んで図書 ビスを使うのか,その理由の説明を求められる」という話館や博物館のサイトにアクセスしてくるタイプではないと だ。組織にはありふれた光景ではあるが,実はおかしな光いう意味で,掘り起こされた真新しい利用者を多く含んで 景だ。少なくとも公的な機関,つまりはその運営の原資がいるはずだ。逆に新規に 1,000 人の利用者を自機関のウェ 税金である機関においては,費用対効果を意識した組織運ブサイト上だけで集めるには,多大な労力と費用を要する 営が求められる。同程度の機能が提供されるのであれば,ことは言うまでもない。 数十万円から数百万円,ときには数千万円の資金を要する つまり,より大きなコミュニティーに分け入ることに 調達による発注方式によるウェブ開発と,無償,あるいはよって,最終的には,自らの機関の存在を知らしめ,認知 限りなく安価なコストで利用できるソーシャルサービスの度を高められるのだ。ウェブ上のサービスであれ,来館し 採用が提案されたとき,果たしてどちらの側に説明責任がてもらって初めて提供できるサービスであれ,その利用率 より多く伴うべきだろうか。答えは明らかだ。費用対効果を高めていくことが,ソーシャルサービスを,ひいては の高い方式を採用するのが公的機関の役割である以上,なウェブサービスを活用する意義なのである。 ぜ従来の方式を採用し続けるのか,その妥当性を説明する 責任はソーシャルサービスの採用を提案した側にではな ― 55 ― 情報の科学と技術 61 巻 2 号(2011)
    • く,提案された側にある。 る活用についても,組織としての見解を示すことが望まし 言い換えよう。残念ながら,日本の図書館,博物館・美 い。すでに企業ではこの種のポリシーやガイドラインを策術館,文書館の間では,まだまだ,民間の無償サービスの 定する動きが顕著だが,たとえば,インテル社のガイドラ活用を非とする論理が幅を利かせ,逆に民間の無償サービ イン8)は図書館等の機関にも参考になるはずだ。スの活用を是とする論理が通用していない。しかし,本来 ソーシャルサービスの活用には,特定のソーシャルサー的には「無償サービスの活用を是とする」論理がまず先に ビスに精通しているだけではなく,究極的には人と人とのあり,非とする側にこそ説明責任が伴うものだ。この説明 コミュニケーションであるソーシャルサービスの本質を体責任の所在を入れ替えていくためには,各機関のマネジメ 感的に理解している人材が必要である。その意味で,組織ント層が組織経営の原点に立ち返って,費用対効果の観点 的に取り組む以前の段階で,自発的にソーシャルサービスから説明責任の所在を整理すること,同時にソーシャル に馴染んでいる職員がいることは組織としては重宝すべきサービスの採用を提案する側も提案された側に説明責任が ことであり,同時にそのような職員の身を守るための対応あることを粘り強く伝えていく必要があるだろう。 も求められるのだ。 4.まとめに代えて-最低限の 10 サービス3.4 関係者のスキル不足と組織の理解不足 最後に,関係者のスキル不足と組織の理解不足について 以上,図書館・情報センター,博物館・美術館,文書館述べておこう。関係者のスキル不足は残念ながら否めない。 におけるソーシャルサービスのこれまでを振り返り,これが,事態にそれほど悲観する必要はないだろう。ここ数年, からを見据えつつ,この先に至る上での課題を述べてきた。特にやはりブログよりさらに利用の敷居が低い Twitter が より詳細な議論が本特集の各論文で展開されるが,それら普及するにつれ,Twitter を個人的に活用する図書館等の の論文への橋渡しとしてお読みいただければ幸いである。関係者は大幅に増えている。ソーシャルサービスといって 最後に,本文中ではふれきれなかったこれからのソーシャも,少なくとも最初から大がかりな技量を要するものでは ルサービス活用において最低限活用を検討すべきと考えるなく,まずは個人として使ってみるという雰囲気が生まれ サービスを 10 点紹介して本稿を終えよう。これらのソーていることは,この先につながっていくだろう。また,筆 シャルサービスを活用した目を見張るような事例が,日本者も関わっている Code4Lib JAPAN のように図書館関係 の図書館や情報センター,博物館や美術館,文書館から世者らの IT スキルの飛躍的な向上を掲げる団体の活動も始 に出てくることを楽しみに待ちたい。まっており 6),スキル問題は早晩解決するものと考えてい 1. Twitter http://www.twitter.com/る。 活用法は様々だが,図書館におけるレファレンスサー ただし,組織の中の個人のスキル向上によって,一連の ビスに応用できるのではないか。ソーシャルサービスの利用に関する組織としての運用規定 2. Flickr http://www.flickr.com/が不足しており,これに起因する問題も散見されるように 本文で述べた通りだが,ぜひ The Commons に参加すなってきた。ソーシャルサービスを活用し,その成果を高 る日本の図書館や博物館が登場してほしい。めていこうとする場合,あくまで一個人としての活動と組 3. USTREAM http://www.ustream.tv/織の中の職員としての活動を明確に切り分けることが難し 館内で開催するイベントの配信や地域で開催される催い。たとえば,公務員である公共図書館のライブラリアン しの中継・記録に役立てられるだろう。が勤務時間中に個人のアカウントから,レファレンスに関 4. Google ドキュメント https://docs.google.com/する疑問を Twitter 上に投げかけることをどう考えるべき 文章やデータの共同での編集作業に向いており,このだろうか。公務員としての職務専念義務に違反すると声高 機能を活かした資料作成の取り組みが待たれる。に指弾すべきだろうか。筆者自身は,Twitter 上でのつぶ 5. Yahoo!知恵袋 http://chiebukuro.yahoo.co.jp/やきを通して,そのライブラリアンが中長期的により高い 本文で述べた通り。特に図書館の場合,ここで回答し,専門性を身につけていくのであれば,自発的な学習意欲に 図書館のプレゼンスを発揮してほしい。富む職員として大いに歓迎したいが,この評価は市民一人 6. Googleカレンダー http://www.google.com/calendar/ひとりの感覚によって様々だろう。では,どうすれば,不 事例を紹介したが,さらに地域のイベント情報を収集毛な信仰論争を避けられるだろうか。 する図書館や特定テーマのイベント情報を収集する美 一つの答えが,ソーシャルサービスを利用するに際して 術館があってもいい。のポリシーやガイドラインを組織として策定することだ。 7. Delicious http://www.delicious.com/すでに千葉市が「千葉市職員のソーシャルメディアの利用 日本でははてなブックマークが有力だが,使い勝手でに関するガイドライン」を策定しているが 7),この図書館 は上回るこのサービスを用いたパスファインダーが版,博物館・美術館版,文書館版をそれぞれの組織が極力 あってもいい。職員の活動を制約しない方向で策定していく必要がある。 8. Google マップ http://maps.google.co.jp/策定にあたっては,業務としてのソーシャルサービス利用 本文で述べた通りだが,たとえば,地域の文化財情報に関するポリシー策定に留めるのではなく,業務外におけ 等をまとめると,より有用だろう。 ― 56 ― 情報の科学と技術 61 巻 2 号(2011)
    • 9. SlideShare http://www.slideshare.net/ 6,20090424,00.htm [accessed 2010-12-02]. 2) Lathrop, Daniel.; Ruma, Laurel. Open Government. 各施設で作成される膨大な資料やチラシ類の公開に最 Oreilly & Associates Inc. 2010. 適。 3) Flickr: The Commons10.Wikipedia http://ja.wikipedia.org/ http://www.flickr.com/commons [accessed 2010-12-02]. 4) Twitter / @arg/libraries 本文で述べた通り。その図書館や博物館が得意とする http://twitter.com/#!/arg/libraries/members 分野について記述に参画することに加えて,各項目の [accessed 2010-12-02]. 参照先として有用な情報を発信してほしい。 5) 藤田英樹.生稲史彦.Yahoo!知恵袋ケース・スタディ-Web サービスの開発におけるユーザの組織化.赤門マネジメント 参 考 文 献 レビュー.2008,vol.7,no.6,p.303-338. 6) Code4Lib JAPAN-ライブラリー×ウェブの力を飛躍させる1) O’Reilly, Tim. What Is Web 2.0. O’REILLY RADAR, 2005 http://www.code4lib.jp/ [accessed 2010-12-02]. http://oreilly.com/web2/archive/what-is-web-20.html 7) 千葉市職員のソーシャルメディアの利用に関するガイドライ [accessed 2010-12-02]. ン オライリー・ティム.Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザイ http://www.city.chiba.jp/somu/joho/joho/socilmediaguidelin ンパターンとビジネスモデル(前編) .CNET Japan.2005. e.html [accessed 2010-12-02]. http://japan.cnet.com/column/web20/story/0,2000055933,2 8) インテル・ソーシャルメディア・ガイドライン 0090039,00.htm [accessed 2010-12-02]. http://www.intel.com/sites/sitewide/ja_JP/social-media.htm オライリー・ティム.Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザイ [accessed 2010-12-20]. ンパターンとビジネスモデル(前編) .CNET Japan.2005. http://japan.cnet.com/sp/column_web20/story/0,380010556 Special feature: How and what to use social service. Utilization of Social Services in JAPAN-its past and future. Makoto OKAMOTO (Academic Resource Guide, Inc., Taisei Bldg. 201, 3-61 Aioicho, Naka-ku, Yokohama, Kanagawa Pref. 231-0011 JAPAN) Abstract: This article deals with utilization of social services among Japanese museums, libraries and archives. Also, some issues for the future such as lack of understanding about significance of social services are discussed. And this article includes ten recommendations of social services for Japanese museums, libraries and archives. Keywords: social media / Web 2.0 / government 2.0 / open government / Gov 2.0 / Yahoo! Chiebukuro / Twitter / The Commons / Flickr ― 57 ― 情報の科学と技術 61 巻 2 号(2011)