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装蹄療法
Northern Farm
津田朊紀
クラブフット・弱踵蹄・挙踵・裂蹄
重篤化した症例を短期間で治す魔法の装削蹄はない。
それゆえ、 “異常の早期発見・重篤化予防“が重要。

原因と発症メカニズム
早期発見と重篤化予防の方法
治療のコンセプト
重篤化した馬の特殊装蹄とツール紹介
弱踵蹄
Weak Heel
(Long-toe)Underrun Heel
理想的な蹄形

アンダーランヒール

o蹄踵角細管の角度低下を伴う蹄踵位置の前方変位
o肢軸 後方破折
o蹄角度の低下 健常馬でも装蹄4週間後、蹄壁角度は4°低
下。
o蹄尖伸長⇒蹄踵過重による蹄踵軟部組織圧迫
理想的な蹄形

アンダーランヒー
ル

o蹄の重心に対して負重面が狭小化し、前方変位。
o蹄踵壁が巻き込み、蹄踵の位置が前方変位して蹄踵部を圧
迫。
o蹄踵壁の崩壊により蹄機が機能しない。
レントゲン上の変化
正常像

アンダーランヒール

特徴的な所見
蹄骨下面角度(PA)がマイナスの馬が多い
垂線から蹄先までの距離>蹄踵までの距離
蹄関節から下ろした垂線は蹄の重心を通
る。
このラインが、蹄の最大横径部に一致す
る。
弱蹄踵の悪化はパフォーマンスに影響す
る!
 競走馬の52%がアンダーランヒール(URHS)
 蹄踵痛で受診する馬の77%がURHS
 後肢ロングトウアンダーラン馬の75%が腰痛持
ち
 その反回位置を短縮すると83%の腰痛が治癒。
 蹄角度が1°下がると、深屈腱のストレスは4%上
前肢の蹄踵痛→頚の緊張→背中の痛み
昇。

後肢の蹄踵痛
→腰部・ハムストリングスの緊張・
痛み
Long Toes in the Hind Feet and Pain in the Gluteal Region:
An Observational Study of 77 Horses
Richard A. Mansmann, VMD, PhD, hon. DACVIM-LA et al
弱踵蹄・URHS ・ LT-UHのメカニズム
アンダーランヒール
(URHS)

蹄踵蹄壁が前方へ
引き込まれる
(蹄踵壁の巻き込み)

弱踵蹄(Weaked Heel)
蹄壁・蹄支が脆弱

蹄踵蹄壁の崩壊
背側蹄壁の伸びが早まる
蹄骨下面角度低下(PA
Negative)
ロングトウ
(Long Toe)
反回距離(DB)延
長
競馬場は、URHSが悪化しやすい背景
~厳しい環境~
• 多湿
• 強負荷運動

・・・多湿・敷料による蹄の軟化
・・・ギャロップワーク、長期装蹄
トレセンレベルの調教下で改善

は困難
• 加齢性変化

・・・古馬はURHSになりやすい

• 勝負鉄
ら

・・・絶対に過削・落鉄が許されない状況か

過長蹄・短い鉄尾になりがち。
• 調教師の要望 ・・・「蹄を大きくしてくれ」
盤の大きな蹄の概念は伸びたつ
治療削蹄
休養・・・調教を続ける限りは改善は困難。ベストは跣蹄
(はだし)。
蹄尖多削による反回良化 ・・・蹄踵の負荷軽減。
蹄踵の巻き込み切除
・・・角細管を立てることで健全な蹄踵を作
る。

削蹄前

蹄踵の位置を下げる
下げる。

蹄支角の削開
削蹄後
・・・蹄踵を長く残さず、蹄叉の基部にまで
反回位置の短縮と蹄踵位置の改善
削蹄前

削蹄後
装蹄:蹄踵位置の改善と負面拡大
蹄鉄のサイズ・鉄尾で十分な蹄踵サポート
負重の拡散
充填剤・スタビライザー・幅広蹄鉄などの
利用。

スタビライザーシューズ
ACSを用いた Temporary Sole Support
充填剤を外して調教を行い、馬房内における蹄
踵負重を軽減するためにテープで装着する脱着
式充填剤。
充填剤について
Equi-Pak|CS(Vettec社)
適度に柔らかい充填剤。負重面を増やすことが
でき、蹄機促進と蹄底保護ができる。
硫酸銅が混ぜてあるので蒸れからの感染に強い。

Equi-Pak|Soft (Vettec社)
エクイパックよりさらに柔らかいので蹄底が痛い
馬の蹄底保護や当歳に便利。

Advance Cushion Support™(ACS)
2種類の粘土状の樹脂を手で混ぜると
固くなる。使いやすい。
一時的な蹄機促進と蹄底保護に便利。
蒸れと圧迫に注意。
Nanric INC.
http://www.nanricstore.com/servlet/Catalog
弱踵蹄のまとめ
• 反回距離延長(ロングトー)と蹄踵の前方変位(アンダー
ランヒール)は互いの症状を悪化させる。
• アンダーランの放置は、潜在的な蹄踵痛に繋がり、パ
フォーマンスに悪影響を及ぼす。
• ロングトウに対する蹄尖多削だけでなく、蹄踵角細管を
『立てる』ために、蹄踵位置を十分に下げる。
• 重篤化した症例は休養しない限り改善はできない。改装頻
度、適切な蹄踵位置を意識した装削蹄による重篤化予防が
重要。
クラブフット
Club Foot
クラブフット

≠

蹄壁に凹湾・成長の歪みの有無

“高蹄(High heel )”
深屈腱の異常拘縮があるか否か

クラブフッ
ト
•
•

深屈腱拘縮
蹄関節の屈曲異常

•背側蹄壁凹湾
•蹄踵の伸びが蹄尖より早
い

高蹄(Hiigh
heel)
•
•
•
•

起繋から肢軸が一致
蹄壁のゆがみがない
蹄の成長が均一
健全な蹄踵
遺伝・急成長・放牧地(硬さ・
青草)

痛み
成長痛・・骨端炎・DOD
蹄痛・・・集牧・削蹄後の肢動脈亢進

クラブフット
蹄尖負重による
蹄尖蹄底圧迫

背側蹄壁成長遅延
蹄踵の成長加速

深屈筋腱の短縮
蹄関節の屈曲

患肢免重
早期発見・早期治療が肝心
G1で発見しケアを行うための管理者教育
G1:対側蹄角度+3-5°
肢軸変化はまだ無い
球節沈下の悪化・歩様短縮
蹄冠の膨隆・スクエア化
深屈筋や支持靭帯のハリ
繋角度が立ってくる
G2:対側蹄角度+5-8°
前方破折
蹄踵側の蹄輪幅が広がる
蹄踵削蹄時に接地しない
G3: 完全な前方破折
蹄踵の蹄輪幅が背側の
2倍に広がる
背側蹄壁の凹湾
G4:蹄角度80°~
蹄冠が地面に平行にな
る。
治療
治療はペインコントロールと深屈筋の緊張弛緩
栄養管理(成長痛・骨端炎・体重負荷)

痛み

放牧制限(蹄尖痛・青草制限・筋緊張)

蹄尖蹄底圧迫

NSAIDS(バナミン・フェニルブタゾン)

クラブフッ
ト
蹄踵多削

接着装蹄・トーキャップによる蹄尖保護
トーエクステンション

深屈筋腱短縮
筋弛緩薬(OTC2g, ロバキシ
ン)
Shock wave therapy
(20mm E4 筋腹~支持靭帯)

患肢免重
ヒールアップ
離乳前 G1-3
蹄踵多削と蹄先保護
蹄踵多削・蹄支角削開

・・・蹄踵の位置を下げる。深屈腱のスト
レッチと蹄機改善で蹄を丈夫にする。

蹄尖蹄底の保護
・・・toe cap(エクイロックス+/cobrasox)
※抜けかけの胎生角質(baby hoof)は残すべきか?
・・・反回改善のために、背側から鑢削する。
※
toe extensionは有効か?
・・・G1-2で離乳以前であれば良くなる馬もいる。装着後の蹄輪幅や歩様の反応に
注意
背側葉状層の反回ストレス増大が新たな痛みの原因になりうるので慎重に。
1歳までのG3-4
削蹄に反応しない→ヒールアップ→外科的
処置
ヒールアップに期待することは?
蹄尖保護(駐立時の深屈腱緊張緩和)と
球節沈下(動作中の屈筋群ストレッチング)

・・・長期のヒールアップは深屈腱短縮をもたらす可能
性
・・・蹄機と蹄叉の作用を損なわないために、過剰に伸
びた蹄踵を残さないように削蹄してから装蹄すること。
深屈腱支持靭帯の切断術
• 1歳までの施術が有効 JRA登録時に申告義務あり。
• 競走能力への影響?NFでは施術馬は売却しない方針。
・・・支持靭帯切断による、深屈腱のストレッチ⇒後に良い長さで再癒合
する。
そのため、手術後は理想的な蹄角度に削蹄されていなければならない。
深屈腱支持靭帯の切断術:1歳までに判断
①レントゲンでPAを確認 削蹄+ボンド/蹄鉄を用いたデローテーション。
鎮静下で PA 0~2°のデローテーション(≠トーエクステンション)
②術後のために、ACSを用いて元の蹄角度になるようにヒールアップを行
う。
③全身麻酔/立位・high 4point
④エコーによる支持靭帯の確認・2cmの皮膚切開
⑤テーブルナイフを用いて支持靭帯を露出
⑥切断。他の組織への侵襲を最小限にすることで術痕を残さない。
⑦12時間おきに、ACSを漸減し、48時間を目安に徐々に深屈腱をストレッ
チ。急ぎすぎると痛みが生じて負重を嫌う。術肢に負重しないと、さ
らなる腱拘縮を招くため、ペインコントロールが重要
手術例:1歳馬

術前(15ヶ月齢)
蹄関節の前方破折
蹄壁凹湾
蹄骨下面角(PA20°)
歩様短縮
蹄尖蹄底の膨隆

術後2週間
PAの確認のレントゲ
ン
PAと肢軸の改善
蹄骨尖H L-zoneの変化
舎飼い Bute1g
b.i.d

術後2ヶ月
放牧
調教中、蹄骨骨折で引退
手術時期が遅かった可能性
手術例:繁殖牝馬(深屈腱切断術)

術前(6歳)
慢性跛行の悪化
衝撃と負重で蹄骨尖融解

術後4週間
蹄角度改善
急激な角度変化による
蹄関節亜脱臼

術後6ヶ月
種付け、その後分娩。
軽度跛行が遺残。
成馬の削蹄 伸びた蹄踵を多削
蹄踵が高いままだと・・・
蹄踵狭窄による蹄機作用喪失→蹄内血流の悪化→蹄壁の脆弱化
→裂蹄や蹄踵痛などの二次的障害

どれだけ蹄踵を切れるか、少しずつ鑢削しながら観察
蹄1つ分後ろに踏ませて蹄踵が浮くか?
2cmほどの蹄先を上げて蹄踵が接地するか?
成馬の装蹄
高いままの蹄踵

≠ 蹄踵を切ってからの厚尾蹄鉄

蹄踵多削すると深屈腱のストレスが増大し蹄骨尖が蹄底圧
迫
→そこで、反回ポイントを下げて深屈腱の反回ストレスを
緩和
必要であれば厚尾蹄鉄と充填剤で、深屈腱のストレス緩和
しつつ負重面を確保する。蹄尖保護も重要!
狭窄蹄の装蹄療法;ヒンジシューズ
作るのは大変!
無理な押し広げにより痛みが
発生すると、クラブフットが
悪化する恐れがあるので注
意。

Polyflex Shoesにバネを装着する方法が安全かつ簡単。
おすすめ 市販特殊蹄鉄
ポリフレックスシューズ
手で曲げられるほど柔らかいが摩耗はしにくい。
ボンド装蹄でも蹄踵の蹄機作用を妨げないので狭窄蹄などに
便利
評判良く人気商品だが製造規模が小さく遅配気味なので注意
• http://polyflexhorseshoes.com
• Diane@PolyflexHorseshoes.com
Morrison Roller Motion Shoes
厚尾・幅広・下狭・鉄唇がない
反回ポイントはかなり下げられる。ナチュラルバランスの形状
で肢勢も安定しやすい。
ヒンジシューズ用のバネも購入可能。
Rood &Riddle Equine Hospital Susan Nash
snash@roodandriddle.com
クラブフットのまとめ
• 先天性FLD、もしくは急成長や蹄底の痛みに反応
した後天性の深屈腱拘縮が原因。
• 重篤化すると、蹄の慢性疼痛やパフォーマンス低
下に繋がる。
• 離乳まではペインコントロールを行いながら深屈
腱をストレッチする装削蹄・外科手術を行う。
• 成馬では蹄尖蹄底保護と健全な蹄機の維持を目指
す。
挙踵
Sheared Heel
挙踵(突き上げ)発症のメカニ
ズム
肢勢により、蹄の負重バランスが崩れ
る。
一方の蹄踵に過剰な負重がかかる。

過剰な負重のかかる蹄踵が上方へ突き
上げられる。

蹄壁が歪み、健全な蹄機能が損なわれる。

慢性的蹄踵痛・裂蹄・蹄支裂・蹄叉腐乱
挙踵は、蹄軟骨付近の
蹄踵壁の上方変位
•蹄の掌側1/3(C,D)に蹄骨はなく、蹠枕
(DC)と蹄軟骨(LC)が存在する。
•一般に、挙踵した側の蹄踵は対側よりも
低くなっていることが多い。蹄球の位置
に惑わされず、肢軸のラインに忠実に内
外バランスを判断して削蹄を行う。
挙踵になりやすい肢勢は諸説ある
①広踏
②外へのローテーション
③腕節の外反+腕節以下の内へのローテーション
④歩行時に、球節が内外偏って沈下する肢、
つまり最大荷重時に一方の蹄踵を圧迫する歩様の
馬。
治療削蹄
蹄のバランスを理想に近づける
• 方針;突き上げている蹄踵の負担を如何に減らすか。
例)内蹄踵の挙踵
レントゲンをとると突き上げている内側の蹄骨が低くなっていることが多
い。この場合外の多削。
→挙肢検査時に、蹄球のラインに惑わされない。

突き上げられた蹄球の毛が逆立ってい
る。
反対側の蹄踵が高いので多削。

突き上げた蹄球の対角線状の蹄先
蹄側をRoll Upするように鑢削
治療装蹄
変位した蹄踵壁を元の位置に下ろす
例)突き上げている内蹄踵をすかして、上方変位した蹄踵
の沈下を促す。通常装蹄後直ぐに変化が現れる。

二重削蹄法( Stephen E. O’Grady )

蹄踵をすかし、保水させるバンテージを行って、24時間硬い平面上で跣蹄に保
つ。蹄踵組織がある程度下降してから装蹄。
挙踵のまとめ
• 肢勢からくる蹄踵のアンバランスな負重が、
蹄踵組織の片側性上方変位を起こす。
• 悪化させると慢性的蹄踵痛や裂蹄の原因とな
る。大抵、突き上げた蹄球の反対側が高く
なっているので、蹄球の位置に惑わされず、
肢軸・蹄の重心と内外バランスを注意して削
蹄を行う。

• その上で、蹄踵壁の上方変位を解消するため
に突き上げていた蹄踵の荷重を減らし、沈下
を促す装蹄を行う。
裂蹄
蹄側裂
Quarter Crack
蹄側裂(quarter crack)
肢勢からの蹄壁の歪み
挙踵・弱踵蹄
クラブフット
凹湾・フレア

蹄質

運動負荷

乾燥
蹄壁
薄い

スピード調教・周回運動
地面の不整
硬すぎる馬場

滑走しない馬場
発症のメカニズム
 健康な蹄は、踏着による衝撃
の90%を吸収する。
 この衝撃緩和機能を果たす蹠
枕と蹄軟骨の押上げによっ
て、不重時に蹄の最大横径部
~蹄踵の蹄冠が膨隆する。
不重時の蹄内部
赤:蹠枕
青:蹄軟骨

 前述の蹄型・蹄質・衝撃の強
さのバランスが取れない時に
最大横径~蹄踵の蹄冠付近に
亀裂が入る。
蹄側部裂蹄の削蹄
 最も重要なのは、挙踵同様、蹄の重心・内外バランスを改善する
こと。これができないと裂蹄を繰り返す。

 休養が重要
削蹄が適切であれば蹄冠部から正常な蹄壁が成長する。
裂蹄部が下りて治癒するまで4-12ヶ月を要する。

裂蹄発症時と、治療後のレントゲン像。重心の内外バラン
ス・前後バランスの改善に留意。レントゲン撮影は正しい
削蹄に有効
蹄側部裂蹄の装蹄
裂蹄側の蹄踵部の負重を軽減することで、蹄冠の動きを制限す
るため、

蹄鉄と蹄負面に間隙を作るよう空かし
た状態で装蹄。連尾蹄鉄で負重の拡散
と、蹄鉄の歪みを抑制する。
患部保護のためには、 3/4蹄鉄よりも
連尾蹄鉄の使用が好ましい。

薄尾蹄鉄と同じ概念。
硬度の異なる2種類のパッドを用いて、
患部蹄踵の負重軽減と、間隙に異物が
挟まるのを防ぐ装蹄例。
早急な運動復帰が必要な場合
一時しのぎの処置としてワイヤー固定
①裂蹄部のデブリートメント
粉状になった組織は全て除去・消毒

②蹄壁が薄い時はエクイロックスでワイヤーを通す土手を
作る。
③ワイヤーは締めすぎない。寄せるのが目的で無く開いた
状態での固定が目的。締めすぎると痛みや、ワイヤー挿入
部位の二次的裂蹄につながる。
④ボンド固定後も裂蹄部分の通気性と消毒のためフワフワ
の針金で保護してからボンドで覆う→固定後針金を抜去
⑤装蹄は、挙踵の装蹄に準ずる。蹄の負重バランスの改善
と、裂蹄側の蹄踵負重の軽減。
おすすめ製品
Hoof Crack Suture Kit
裂蹄の縫合セットになっていて便利。

Cobrasox™
クラブフットの蹄尖保護(Toe Cap)
切り刻んで繊維状にして混ぜることでエクイロックス補
強。
釘の打てない慢性蹄葉炎などに便利。
放牧しても落ちない・ずれない。
エクイロックスに硫酸銅を混ぜることで蒸れによる感染予防が
必要
サウンドホース(Kirk,対応が丁寧です。)
http://www.soundhorse.com/
horseshoes@soundhorse.com
蹄側部裂蹄のまとめ
• 馬場・運動強度・蹄質・肢勢の複合的要因によ
る、蹄踵ストレスにより発症。
• 適切な内外・前後バランスを考慮した装蹄と休
養によってのみ治癒する。裂蹄部固定は一時的
対処。

• 装蹄理論は挙踵の対処に準ずる。蹄バランスを
整えた上で、裂蹄した蹄踵の負重を軽減する。
裂蹄
蹄尖裂
Toe Crack
原因となりうる疾患
裂蹄固定よりも基礎疾患の対処が重要!
裂蹄が蹄冠付近から始まる。
蹄葉炎
葉状層脆弱化
蟻洞・白線病
蹄壁脆弱化

クラブフット

深屈腱牽引力の増大

裂蹄が蹄負面側から始まる。
蹄尖過長
反回ストレスの増大。
発症のメカニズム
• 深屈腱牽引の蹄骨Rotation作用による背側
蹄壁の歪み

蹄冠蹄尖裂は、慢性蹄葉炎・クラブ
フットがコントロールできていないサ
イン
蹄尖裂を伴う慢性蹄葉炎で跛行した症例

1年後

1年前の蹄表裂が悪化
し、真皮層・蹄冠部へと
拡大したが大きな跛行は
なかった。
裂蹄部の感染により重
度跛行、その後流産。
反回ストレスを軽減する改装
•反回ポイントを背側蹄冠
の真下付近まで下げる。
•深屈腱の緊張を軽減する
厚尾状パッド。
•蹄底アーチサポートによ
る負重拡散のための充填
剤。
深屈腱緊張緩和による背側
および蹄底血流との改善。
→反回ストレス緩和と蹄機
改善によって、蹄質改善。
これが裂蹄の予防および根
本治療となる。
適切なメカニカルサポートにより、
固定しなくても裂蹄は下がり始めた

2ヶ月

慢性蹄葉炎は治癒しない。いかにコントロールを続けるかが
裂蹄部の安定化
①ファイバーグラス(cobrasox)とエクイロックスによる固定
②メタルプレートとネジによる固定

反回ストレスを減らした装削蹄が行われていないと固定しても治癒し
ない。
非負重時に裂蹄は開く。軟部組織を圧迫しない様に開いた状態で固
定。
蹄尖裂のまとめ

• 原因は、蹄先過長・蹄葉炎・クラブフット・
蟻洞などによる背側蹄壁のストレス。

• 裂蹄部固定よりも、上記の疾患の治療と反回
ストレスを最低限にする装削蹄が重要。
No Farrier No Horse
装蹄療法は、“継続的に正しい装削蹄”を行うことが大前
提。
予防・早期対処は装蹄師との連携なしでは不可能。

• 全ての馬が異なる蹄・異なる原因を持っているの
で、治療装蹄の方針も症例によって異なる。
• 行った治療装蹄に対する馬の反応を数日後に観察し
て、
ベストの治療をOPENMINDで模索する。
• 蹄の内部構造を常に意識して治療・装削蹄に臨む。
時には1頭の装蹄を最初から最期まで見せてもらいましょう。
Refference
① The veterinary Clinics of North America Therapeutic Farriery
p.351-p.406
Stephen E. O’Grady, DVM, MRCVS, APF
② Natural Balance Hoof Care p31-p34 Gene Ovnicek , RMF
DVD・本・NBシューズ販売。装削蹄の基礎がわかり易く解
説されている。http://www.hopeforsoundness.com/cms/
③ Equine Podiatry p.1-p252 Andrea E. Floyd
図解・写真多く臨床獣医向け教科書。
④ Scott Morrison DVM (R&R Podiatry Centre) “Heel Pain” 2012
2014 年末 来日・東京にて講演予定

Northern Farm Team Crew
• 装蹄師 中館・種間・川上・Nathy Kelly, Keith Dunning 他
• 獣医師 秋田・菅谷・中島 他 13名

13名

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